魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?
第46話 おっさん言い放つ、聖女ならここにいるだろう
第46話 おっさん言い放つ、聖女ならここにいるだろう
俺たちが湖のほとりにむかうと、王子軍の野営地が見えて来た。
湖畔一面にテントが無数に広がっているので、かなりの規模の軍であることがわかる。
そのテントからは叫び声や怒号が飛び交う。
「うわぁああ! なんで後方からドラゴンがぁああ!」
多くの兵は、不意を突かれて混乱しているようだ。
が、一部個別に応戦している兵もいる。
「ダメだ! 弓矢が弾かれる~~」
「魔法も効果が薄いぞ~~くわぁああ!!」
状況としては苦戦しているようだ。
たしかに銀は他のトカゲとは違い、まあまあ硬いんだよな。
「指揮官に会わないと。本陣はどこかわかりますかファレーヌさま」
「ええ、リズ。あそこが本陣です」
第三王女はひときわ大きめのテントを指さした。
「だいぶ混乱しているようだな」
「そうですねバートス。まずは指揮系統を立て直してもらわないと。私達が協力するにせよこれでは思うように戦えません」
リズの言う通りで、俺の【焼却】はこんな状況では発動できない。
無理矢理使用すれば、兵士も巻き込んで燃やしてしまうからな。
「ねえリズ~~あたしたちが行って会ってくれるのかな。シキカンって人」
「はい。なのでファレーヌさまにも危険を承知でここまで来て頂いているのですよ、カルラ」
なるほど、たしかに姫がいれば俺たちも本陣に入れるだろう。
状況確認や交渉もできるかもしれない。
ここに来るまで素早い行動だったが、ちゃんと考えて動いている。さすがリズだ。
俺たちが大きなテントに入ろうとすると警備の兵士が槍を突き付けてきたが、第三王女の姿を見るや、槍を引っ込め速攻で内部に案内された。
「こ、これはファレーヌさま。ご無事でしたか!」
「ええ。心配を掛けましたが大丈夫です」
指揮官らしき人物が、第三王女の元にかけより跪く。
他の者たちもそれにならおうとするが、第三王女が待ったをかける。
「事態は一刻を争います。固い儀礼はなしにしましょう。状況はどうなっていますか?」
「はい、わが軍はミスリルドラゴンの奇襲を受けて混乱中。各隊に伝令を飛ばしていますが、立て直せない状況に……」
たしかに現状では意思疎通ができず、組織的な反撃は難しいだろう。
「しかもあのドラゴン、とんでもなく怒ってるようです。いったいなぜあそこまで興奮しているのかわかりませんが」
それは王子のせいだな。たぶん。
アフロが不味すぎたんだ。
「現状の最高指揮官はラット副官。あなたですか?」
「はい、ザーイ王子殿下がおられないのです……どこに行かれたのか」
「ああ、アフロなら湖の方へ吹っ飛んでいったぞ」
「ええぇ! ふっとんだ!?」
あ、ちょっと言い方がマズかったか。
だが、事実だからな。
「この者の言う事は本当です。兄はこの場にはいません」
「そ、そうですか……ザーイ王子殿下がいない。これはどうしたものか」
いや、なんか頼りないなこの副官。
大将がいないのは非常事態ではあるが、緊急時にはそれを代行するのが副官の役目なんじゃないのか。
「しっかりして下さい。ラット副官! 今はあなたがみなをまとめないといけないのですよ!」
第三王女の激が飛ぶ。
「あなたは優れた采配をふるうと、アルバート魔法師団長がおっしゃってましたよ」
「その……自分はいつも後方から軍を指揮していたので……前に出るとザーイ殿下が俺様より目立つんじゃねぇと。なので誰かに前に立って頂ければ、存分に力を発揮できるのですが」
なるほど、上司が目立ちたいがために部下がいびつな感じで育ってしまったのか。
まあザーイ王子はある意味注目を浴びる存在ではあるが。
「そうだ! 聖女ミサディさまはいずこへ?」
「ミサディですか……彼女もいません」
「そうですか……聖女様であればみなの注目を集めて、この混乱をおさめることができるかもしれないと思ったのですが」
「おい、あの女は偽物だぞ。聖女なんかじゃない」
「はぁあ! 貴様! 聖女ミサディ様に対してなんという無礼を!」
ラット副官をはじめ、まわりの諸将たちに殺気が走る。
たしかにそんな感じにはなってしまうか。だが、偽物を頼りにしてもらっても困るからな。
「いえ、バートスの言う事は本当です。残念ながら彼女は偽物です」
第三王女の言葉に、ガックリと膝をつく副官。
「そ、そんな……バカな……。では我々はなにを頼りに……」
周囲の諸将も衝撃を隠せない様子でザワつきはじめる。
そうか……そもそもこの軍は魔物討伐のために集められた軍だ。
そして、この王国では過去よりある人物が、軍の中心になって魔物討伐にあたったと。
だとすれば……
いるじゃないかここに。
俺は少女の肩に手をかけて、ラット副官に告げる。
「おい、本物の聖女ならここにいるぞ」
そう、最高の聖女リズロッテが。
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