第45話 おっさん、アンデッドアースドラゴンをボウッと燃やし、王子はバシされる

 おっさんは必死に目を凝らしてじ~~っと見る。



 アースドラゴンてのは茶色トカゲ。

 ミスリルドラゴンは銀色トカゲ。


 やっぱトカゲだ……


 またかよ……これ。

 地上に来た頃に燃やしたレッドドラゴンも赤トカゲだった。


 もしかして地上ではトカゲをドラゴンと呼ぶのか?


 いやいや、そんなわけないだろ。ミスリルなんてSS級の魔物なんだぞ。


 でもどうみても銀トカゲなんだが……



 ダメだ、おっさんちょっと頭痛くなってきた。



「バートス! ミスリルドラゴンが王子を!」

『や~~またドラゴンでたのじゃぁああ!』

「バートスさま~~アンデッドアースドラゴンもこっちくる~~」


「ぎぃいいい! なにあっさりと食べれてるんですの~~アホ王子ぃいいい!!」


 おっとヤバイ、現場がえらいことになってる。


 今はトカゲ問題を気にしている場合じゃない。


「おい、ミサディ。王子は婚約者なんだろ? アフロの心配しなくていいのか?」

「きぃいい! うるさいですわ~~ここまでお膳立てしてやったのにぃいい! クソ王子ぃい!」


 なんだ、ひどい言われようだな。

 王子はこの女に利用されていたのか?


「バートス! ミスリルドラゴンの動きが!」


「―――ギシィイイイッ!」


 なんだ? ドラゴンが苦しそうに喉もとをひっかきまわしている。


『ひぃいい~なんかモゴモゴしてるのじゃ~~』



 ―――ぺっつ!



 んん? ドラゴンの口からなんか出て来た。



 王子だ……


 生きているようだな……べっちょべちょではあるが。



 そしてミスリルドラゴンはというと……腹を抑えて、なんかグッタリしている。



「うわぁあ~~なんか食あたりぽいよ~~べちょってキモイ~~」

『ひぃいいドラゴンに消化されない王子、怖いのじゃああ~~』


 王子が不味すぎたのか、アフロがドラゴンの喉にひかかったのか理由はわからんが、王子はペッとドラゴンの口から吐き出された。


「グハァアア……死ぬかと思ったぜぇえええ!」


「あああ~~ザーイ殿下ぁああ! ご無事で良かったですわ~~ミサディとっても心配したんですのよ~~」


 さっきまでクソ王子とか言ってなかったか?



「クソがぁああ! なんで俺様がこんな目に合わないといけないんだ! ミサディ! おっさんどもを始末しろぉお!」

「はいですわ~~アンデッドアースドラゴン~~やりなさいですわ~~」



 ズンズンと不快な臭気をまき散らしながら、こちらへ向かってくるアンデッドドラゴン。



「バートス! きます!」

『やぁああ~~気持ち悪いのきたのじゃ~~』


 わめく聖杖を構えるリズ。



 腐っていようが、蘇ろうが茶トカゲだ。



「ギャハハハ~~おっさんなんて踏みつぶしてしまぇえ!!」

「そうですわ~~おっさんなんてプチですわ~~」



 そんな気持ち悪いのこっち来る前に―――


「―――【焼却】!」



 ――――――ボウっ!!



「燃やせばよし!」


 アンデッドアースドラゴンとやらは、俺たちの前に到達する間もなく灰となって消えていった。


 この手応え。


 やっぱりこれ茶トカゲだな。



「はあぁああああ! おいおいおいおい! どうなてっんだよ! アースドラゴンだぞ!?」


 王子がテンパってるようだから俺が教えてやる。


「いや、それ茶トカゲだぞ」


「み、ミサディ! どうなってんだよこれ!!」


「いや、だから茶トカゲだって」


「なんなんだよ、このおっさん! 意味わかんねぇええええ!!」


 人の話を聞けよ。


「ふわぁああああ!! ミサディなんとかしろぉお!」

「ええぇえ……ウソでしょ……アースドラゴン燃えちゃいましたわ……」


 だめだこいつら、全く俺の言う事を聞いていない。


 王子と聖女ミサディが取り乱していると、再び地鳴りが聞こえて来た。



「ギャァア! ザーイ殿下! ミスリルドラゴンもう一回きましたわぁあああ!」


 さっきまでグッタリしていたドラゴンが回復したのだろうか、猛然とこちらへ突っ込んできた。


「おいおいおい! こいつ俺様に向かってきてないか!?」


 たしかに、王子一直線に突っ込んでくるな。

 マズイもの食わせやがって的な怒りなのだろうか。



「クソがぁああ! こうなったらこのザーイ様の究極剣技をみせてやらぁああ!」


 王子がミスリルドラゴンを迎え撃とうと抜刀する。



「おい! 銀トカゲはまあまあ硬いぞ!」


「ああ? おっさんがごちゃごちゃ言ってんじゃ――――――ブハッツツツツ!!!」


 ブンっとしなった尻尾にバシッとはたかれる王子。


 強烈な打撃で体が九の字に曲がった王子は、そのまま湖まで吹っ飛ばされていった。


「ひぃいい~~ザーイ殿下~~でんかぁああ~~~」


 聖女ミサディは叫びながら、王子のあとを追っていく。


 そしてその後を、ミスリルドラゴンが猛烈な勢いで追いかけていく。



「ああ……討伐対象も行ってしまったじゃないか」



 王子と聖女ミサディはいなくなり。

 ついでにドラゴンも行ってしまった。



「リズ、どうする? ミスリルドラゴンは行ってしまったぞ」


「とにかく湖畔に向かいましょう。王国軍が陣を張っているはずです」


 そうか、第三王女がそんなことを言ってたな。王国軍も来ていると。


「王国軍はドラゴンの住処である湖に注意を向けているはずです。このままでは背後からの奇襲を受けてしまいます!」


 リズは素早くポーションなどのアイテムのみをサイドバックに詰める。


「たしかに王子はあんな人ですが。ザーイ軍の兵士たちは命令されて動いているだけです。救える命は出来る限り救いたいです」


「よし、わかったリズ。では俺たちも湖へ急ごう」





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