第39話 聖女リズ視点、リズとアルバート
「リズ、そのじいさんとはどういう関係なんだ?」
「アルバートは私に魔法を教えてくれた先生です」
そう、何も出来なかった私に魔法を教えてくれた人。
聖女と認定された私は、王城で教育を受けることになりました。
教育といっても貴族令嬢であった私は、ある程度の知識やマナーなどはすでに学んでいたので、ここでいう教育とは聖女のための教育です。
魔法師団長のアルバートが先生という破格の待遇も、私が聖女認定されたから。
聖女認定された当初の私は、周りの期待を一身に背負っていました。
第三王女のファレーヌさまとお知り合いになったのもその時です。
ファレーヌさまは元々アルバートの指導を受けていましたから。
だが月日が流れるにつれて、私が聖女としての力を何も持っていないということが明るみになり、
1人また1人と私の周りから人が減っていきました。
そんな中でも最後まで私への指導を続けてくれたのがアルバートです。
聖女のみが使えるという聖属性の魔法はアルバートも使えません。
ですが、他の魔法も幅広く使えるのが聖女。治癒魔法はもちろんのこと攻撃魔法や補助魔法など。
アルバートは攻撃魔法の先生として、根気強く私を指導をしてくれました。
とうの昔に治癒魔法や補助魔法の先生は、私の前からいなくなっていたのに。
「リズ殿は氷魔法に適性があるようだな」
そう言ってアルバートは自身の時間の許す限り、私の指導を続けました。
そもそも聖女かどうかすら疑わしいのに。
ある日から、ファレーヌさまが姿を見せなくなりました。
私は完全に出来損ない認定を受けた落ちこぼれ。
そんな人間と第三王女という地位の高い王族を近づけたくなどない。
ファレーヌさまの意思ではなく、周りが私との関係を断たせようとしていたのです。
でもその時の私は完全に自信を失い、全てに拒絶されていたから心に余裕がありませんでした。
だから、親しいと思っていたファレーヌさますら去ってしまったと、絶望していました。
でもそんな時でも傍にいてくれたのは―――
私の目の前に立つ王国最強の魔法使い。
アルバート。
そしてほどなくして王子から婚約破棄が言い渡されて。王城から追い出されて。
アルバートとはそれっきりでした。
「私、先生のおかげで魔法が使えるようになったんですよ」
「わしが教えたのは初級魔法。あんなものは魔法使いならば誰でも教えられる」
「でも、先生が教えてくれた魔法が私の大事な人を守る魔法になったんですよ」
そう、バートスの暴走を抑えることができるのは氷魔法の基礎があったから。
「それはリズ殿が努力を重ねたからだ。わしがやったのは片手間の暇つぶしだ」
「違います! あなたは周りとは違った! 聖属性魔法が使えないとわかってからも、出来損ないと言われるようになってからも、ちゃんと私を人間として扱ってくれたじゃないですか!」
そう、彼は最後まで私の可能性を信じてくれていた人。
まわりがどんなに出来損ないと言おうが、関係なく私と接してくれた人。
なのに……なんでですか。
「もう嫌です、あなたとは戦いたくありません!」
私の叫びにアルバートが少しだけ笑ったように見えた。
嘲笑ではなく、懐かしむような。それでいて悲しみが含まれているような。
だがすぐさまその笑みは消える。
「―――さて、長話をしすぎたな。終わらせようか」
アルバートは再び杖を構えて詠唱を開始する。
「今度は跳ね返させん!―――
「「「「「――――――
五重詠唱ですって!?
しかもアルバートの上級火炎魔法5連弾!!
――――――大きすぎます!!
『ひゃ~~~ん、リズ~~あれはバチコンできんのじゃ~~』
強烈な熱を発しながらこちらへ飛んでくる極大の火球たち。エレナが悲鳴を上げて震えています。
やっぱり先生は凄い人ですね。
こんな火球を5発同時に発動させるなんて。
『むりむり~~死んじゃう死んじゃうよぉおお~~~』
「エレナ……大丈夫ですよ」
『ふぇええ……?』
だって私には彼がいるから。
ゆらりと私の前に現れた人影。
巨大な火球は私には届かず、全てその人影に激突して獄炎を噴き上げる。
全ての炎が消えた後、その人影はポリポリと頭をかいた。
「なんと……わしの五連
「ああ……ただのおっさんだよ」
―――そう、私の信頼する従者。
ずっと一緒にいてくれる人。
先生よりも最強の炎を放つ人。
「リズ、ここからは加勢させてもらうぞ」
私の従者、バートス。
―――――――――――――――――――
いつも読んで頂きありがとうございます。
少しでも面白い! 少しでも続きが読みたい! と思って頂けましたら、
作品の「フォロー」と「☆評価」、各話「♡」で応援していただけると作者の大きな励みとなります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます