第24話 決戦前夜



「ダイスケ君、眠れないんですか?」


「ええ、なかなか眠くならなくて、キャスさんもですか?」


キャスさんは頷き


「ええ、明日の事、考えるとね(笑)」


そう明日、帝国軍がヘクト城に総攻撃を開始する


僕達も、その攻撃に参加する事になった


「こんな、大きな戦いは、僕は初めてなんで


どうしていいのか、分からず緊張してしまいますね(笑)」


キャスさんも頷きながら


「そうね、気持ちは分かるわ」


「いやいや、こんな茶番に参加するなんて、おやめなさい」


この声は、あの時の猫か、僕はキャスさんを庇うように、動き周りを警戒する


「こんばんは、ダイスケさま、それに聖女のお嬢さん」


影から出てくる猫。間違いない、あの時の四天王だ


「こんばんは、確か魔王の牙でしたっけ?」


「おお、小生の名前を憶えていて、もらえましたか、感激ですな(笑)」


キャスさんが僕の肩を叩き


「ダイスケ君、こいつの名前は確かクソ猫よ」


「いやいや、聖女のお嬢さんには、すっかり嫌われてしまいましたね」


猫は苦笑したのか


「まあ、いいでしょうダイスケさま、あんなアンデットと


人間の潰しあいになど、関わるのはおやめなさい」


「僕も関わりたくないんだけど、アンデットをどうにかしないと


魔王の元に行けそうにないしね」


「いやいや、ダイスケさまなら、アンデットどもは道を開きますよ


ダイスケさまの、お相手は魔王様と四天王の筆頭、魔王の翼様


それ以外の者なぞ、気になさる必要はありませんよ」


キャスさんが猫に話しかける


「ねえ、クソ猫、私たちも、ダイスケ君と一緒にいけば


魔王の前までいけるのかしら?」


「いやいや、魔王様の御前まで行けるのは、ダイスケさまだけですよ」


「あらサービス悪いわね、ちょっと人数が増えるくらい何とかならないの?」


「何ともなりません(笑)、ただしもし、お嬢さん達も御出でになるのなら


その時は、小生と四天王の二、魔王の爪がお相手させてもらいますよ」


キャスさんは不敵に微笑み


「本当は魔王がいいんだけど、しょうがないわね、我慢するわ」


「不本意でしょうが、どうぞ我慢を(笑)」


猫はそこで思い出したのか


「ああ、お嬢さん、小生はお嬢さんにお詫びしなければ」


「お詫び? 私を騙したこと?」


「いやいや、それは小生の仕事ですので(笑)、じつはですね


お嬢さんの事を、魔王様に報告してしまい


それを聞いた魔王様が気分を害してしまいましてね」


キャスさんは不思議な顔しながら


「なんで魔王が気分を害するのよ?」


猫は僕の方を見ながら、納得したように


「ああ、ダイスケさま説明してなかったのですね?」


猫の言葉にキャスさんも僕を見ながら


「ダイスケ君? そういえばさっきから、おかしいと


思ってたんですけどなんで、このクソ猫に、ダイスケさまって言われてるんですか?」


どうしようかな、なんて説明すれば、もう言うしかないか


「キャスさんあのですね、僕と魔王は夫婦なんです、正確には婚約者なんですけど」


キャスさんは僕の告白に呆然として


「え」 「なんで?」


「補足で説明させてもらえれば、魔王の翼様はダイスケさまの第二夫人だよ」


キャスさんは僕を見つめるだけで、何も言えなくなって、しまったようだ


「あのですね、キャスさんこれには、いろいろ訳がありまして」


「ああ、ダイスケさま、そちらの話は後でしてもらって


よろしいですか?まだ小生の話が、終わっていませんので」


そういえばお詫びしたいって言ってたな


「では、改めて、お嬢さん、魔王の爪がお嬢さんの遊び相手を


するのですが、爪は気分屋ですが強く残酷な女です


お嬢さん、城には来ないことをお薦めしますよ」


キャスさんも正気に戻り


「へえ、それって来いって言ってるように聞こえるんだけど?」


猫は真剣な顔をして(真剣な顔なんだよね?)


「いやいや、小生は真剣に来ないほうがいいと、忠告してるんですよ


もし爪が、お嬢さんの前にきたら、どんな残酷な殺され方をされるのかと


小生にも多少の責任があるので、心が痛むんですよ」


あれ、本心で言ってるのかな?


なんかキャスさんも、どう判断していいか迷ってるみたいだ


「さて、随分話し込んでしまいましたな、ではそろそろ


帰らせてもらいますね、ダイスケさま、お嬢さん、ごきげんよう」


そう言って猫は陰に消えてしまった


どうしよう? 


「ダイスケ君、いったいどんな訳があるんですか?」


キャスさんが当たり前の疑問を聞いてくる、なんて説明しようかな


全部話すとなると、キャスさんの神託の事も、話さないといけないよね


うーーーん やめておこう、今まで信じていた女神さまの


お遊びの為の駒だなんて、知っても全然嬉しくないだろうし


「さっき聞いた事がすべてですよ、僕と魔王、側近の魔王の翼は夫婦です


ただし、これから殺しあう、運命にある夫婦です、それだけですよ」


僕とキャスさんは しばらく見つめ合っていたが


「もう、しょうがありませんね、ダイスケ君を信じますよ(笑)」


「ありがとうございます、キャスさん」


そうださっき猫が言ってた


「あのキャスさん、明日の攻撃には、参加しないほうが、いいんじゃないですか?」


「私の事、心配してくれるんだね、でも大丈夫よ


私の事は心配しないで、ダイスケ君は魔王を必ず倒してね」


「大丈夫ですよ、僕が、どうなるかは分かりませんけど


魔王は必ず明日死にます、それだけは間違いありません」




そうだそれだけは、間違いがない


僕が殺すか


僕が死んだ後、自殺するか、どっちにしても


魔王は明日死ぬだろう

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