第23話 魔王軍の一日



猫は気持ちよさそうに、鳴き声を上げる


「ミャーーー」


その声に満足を覚え、さらに黒猫を撫でる


「ねえ?ダイスケさまは、どの辺まで近づいているのかしら?」


「はい、魔王様、あと一週間もお待ちいただければ」


「そう、もうすこしね」


猫の返事を聞き安心する、どうやら私の魔法は間に合いそうね


「そういえば、外の様子はどう?」


「はい、魔王様、爪が暴れているようです」


「そう、あの子が出たなら、すぐに終わりそうね」


猫は疑問があるのか


「そうでしょうか? どうせすぐに飽きるか


好みの男か女を捕まえて部屋にもどりますよ」


たしかに、そうかもしれないわね


「困った子ね、四天王にしたのは、失敗だったかしら?」


猫は私の方を見て


「そんなことは無いでしょう、確かに色狂いの


気分屋ですが魔王様への忠誠と能力に問題はありませんよ」


猫はさらに続ける


「それに、人間相手の、お遊びに、爪の力は必要ありません」


それには、私も同感だ今、外で起きてるお遊びに、あの子の力は必要ないだろう


「そういえば、さっきの話ですけど、ダイスケさまと


一緒にいる者たちで


キャスリーンって売女がダイスケさまに媚を売ってるって、言ってましたけど」


「え?いや仲良くしてるとは、言いましたけど?」


猫を見つめながら


「まあ、あなたは、私の耳がおかしいと?」


猫は慌てたように


「いいえ、確かにそのように、言った気がしてきました(笑)」


私は大きく頷き


「ええ、そう聞きましたよ(笑)」


「なるほど、その売女はどのようにしましょうか?」


「私は、そんな売女に興味はありませんわ」そう言い、猫から視線を外す


猫は納得したように頷き


「たしかに、そのような売女を、魔王様が気になさる、必要はありません


そうですね、爪の遊び相手に、いかもしれませんね」


私は猫の言葉に満足して撫でるのを再開する事にした


「ニャーー」


今日の仕事を終え、猫も満足したようね(笑)






小生は今日のお役目終え、魔王様の御前を退かせてもらう


さて、魔王様の意志を忘れないうちに、爪に伝えておくか


小生が爪の部屋の前に来ると


中から数人の男と女の嬌声が聞こえてくる


「いつもの事ながら、小生には、理解ができないな」


まったく、子供を作る以外の交尾になんの意味があるのか?


さて、どうするか? 待ってもいいのだけど


いや、待つ必要もないか、爪も魔王様の意志を聞くのに、文句はいうまい


部屋の中に入ると一人の男と二人の女が爪に奉仕をしているようだ


「すまないが、少し、時間をもらっても?」


爪は気分を害したのか、小生の方を見もせずに、声を荒げ


「何してるの、誰が止めていいと言ったの?」


「はい」 「ひぃ」


男と女たちが再び動き始めると、爪もようやく、小生の方を向き


「駄猫、わたくしの楽しみを邪魔するなんて、後でひどいわよ」


「いやいや、すぐに済むよ、先ほど魔王様とちょとした話をしていたんだが


その中で帝国の聖女キャスリーンっていう、女の事が話題になってね」


どうやら爪も、魔王様の名前が出て、聞く気になったみたいだな


「へえ、ロミナ様がその女を気になさったの?」


小生は首を振り


「いや、魔王様が気に掛ける、ハズがないだろう、そんなどうでもいい女に?」


爪は、小生の言葉が理解できないようだ


「その女は、あと1週間程でこの城に来るんだが、


魔王様が相手をするほどの女じゃない」


そこまで言えば爪もピンときたのか


「わかりましたわ、わたくしがその女と、遊んで差し上げればよろしいのね?」


「そういうことだ、じゃあ頼んだよ」


用事も終わったことだし、小生は部屋を出ることにしたが


「カツカツ」 微かだが足音が聞こえてくる


この足音は翼様だな


「爪、お楽しみは後にして、服を着るんだ」


「この駄猫、だれに指図してますの?」


小生は溜息をつきながら


「翼様の足音が聞こえるどうやら、ここに来るようだ」


爪も理解出来たようだ


「どきなさい、お前たち、すぐに私の体を拭いて着替えの準備を


駄猫、準備ができるまで、外でアステルさまを止めといて頂戴」


「ああ、あんまり、待たせないようにね」


少し待つと翼様が「今晩は牙、エリザは中ですか?」


「今晩は翼様、ええ爪は中に居ますが、今は取り込み中でして


準備をさせていますので、少々お待ちを」


翼様も察したのだろう


「そうですか、少し待たせてもらいましょうか」


ドアを勢いよく開け、爪が


「アステルさま、お待たせしました、どうぞ中に」


翼様は首を横に振り


「エリザ、もうすぐダイスケさまがお着きになる、その前に調整をしておきたいんだ


少し、私の相手をしてくれないか」


なるほど、そういうことか、爪も頷き、一緒に移動を始める


「エリザお前は本気で構わない、遠慮しないできなさい」


「わかりましたわ、アステルさま」


爪はそう言うと、自慢の爪を伸ばす


左右に10本の爪を伸ばした爪と、一本の剣を右手に持ち構える翼様


先に動いたのは爪の方だ、右手を振り上げ5本の爪を翼様の左肩目指して振り下ろす


翼様は後ろに移動して躱すが爪も想定してたんだろう、左手を横なぎに翼様に肉薄する


今度は翼様も躱せなかったのか、その攻撃を自らの翼で受ける


翼様が爪の左手を翼で弾くと、爪のバランスが崩されると、


そのすきに、今度は翼様が肉薄する、


焦った爪が大きく後ろに飛び距離をとる


そのまま、2撃3撃4撃と攻防を重ねる


なかなかいい勝負だが、やはり爪では翼様にはかなわないな


翼様は爪の攻撃を受けているだけ


翼様が攻撃に回ればもう勝負は終わっているだろう


「エリザ、そこまででいい」


翼様も満足なされたのか、終わりにするようだ


爪をしまい


「はい、アステルさま、わたくしでお役にたてますなら、いつでもどうぞ」


「ありがとうエリザ、今晩はよく眠れそうよ」


「まあ、アステルさま、眠れないのでしたら


わたくしが疲れるまで毎晩付き合いましょうか?」


爪が妖艶に笑う


翼様は焦ったように


「いや、大丈夫だ私は毎晩よく眠れている」


「まあ、遠慮しないでくださっても、いいんですよ


毎晩気持ちよく、眠れるようにしますのに(笑)」


爪の言葉に


翼様は引きつった笑いを浮かべている


 いや爪、君は毎晩何に付き合う気でいるんだね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る