第17話 ダイスケの記念日



「ダイスケちょといいか?」


ギルドの酒場でいつもの昼食を取っていた時の事


「何ですか、マストルさん?」


「ここじゃなんだ後で、俺の部屋に来てくれ」


「わかりました、今食べ終わりますから、少し待ってくださいね」


マストルさんは頷き奥に消えていく


なんだろうな? またこの前の事聞かれるのかな?


とにかく聞いてみないと、分からないか


僕は食事を済ませ、マストルさんの部屋に急ぐことにした


「コンコン」「マストルさんダイスケです」


「ああ」「入ってくれ」


ギルド長の部屋に入る まあ普通の部屋なんだけどね


「ダイスケそこにでも座ってくれ」


僕はマストルさんに勧められソファに腰を掛ける


「ダイスケ、お前に来てもらったのは、お前にぜひとも引き受けて欲しい、仕事ができたからだ」


「はあ」 「どんな仕事なんでしょうか?」


マストルさんは僕を見つめ


「ラルテントの街に、行って貰いたいんだ」


「ラルテント?何処にあるんですか?」


「ああ」「ラルテントを知らないのか、そうだなお前にはザナック公爵の街って、言った方が分かりやすいか」


ザナック公爵ってライルさんの所だっけ?


「ライルさんの所でしたっけ?」


マストルさんは頷き


「そうだ」「そのラルテントなんだが、何かがおきたらしい」


「何かですか?」


「ああ」「2週間前からラルテントと、一切の連絡が取れないようになった」


2週間前から? あの日位なのかな?


「ダイスケ実はな、調査にもう何組もの、冒険者チームを派遣したんだが、誰も戻って来ない」


僕は驚きの表情を


「それは穏やかじゃないですね」


「ああ」 「それでだなエースのお前に行って、貰いたいんだ」


エースってのは抵抗があるけど 確かに2週間前、ライルさんのいる街か


「わかりました、引き受けますよ」


マストルさん安心したような表情になり


「そうか」「ありがとう、もうお前しか当てが無くて、困っていたんだ」


「いえ」「僕も気になりますし」


マストルさんは頷き


「ダイスケあくまで調査なんだ、危険だと感じたら、すぐに逃げてくれ」


「わかりました、すぐに準備して、明日の朝には街を出ますね」


マストルさんは頷き


「ああ」「地図とか必要な物は、セイラに言ってくれ、用意してくれるはずだ」


僕はマストルさんに頷き部屋を後にした


ラルテントかたぶん関係あるんだろうな、いきなり決戦になるって事はないよね?


準備は問題なく終わり、僕は次の日の朝、コンテントの街を後にした


さて急ぐし、走るとするか、僕は疲れない程度の速度を出し、1週間の距離を2日に、ちじめる事ができた


「あれがラルテントの街なのかな?」


ひどいな、ここからでも街が破壊された跡が分かる


もうちょっと近くに行かないと、何があったのかは分かりそうにないな


僕は用心しながら街に入ることにした


「なんだろう?所々破壊されているんだけど、人の死体が一切ない?」


なぜなんだろう?本当に何がおきたんだ、僕はここから見える一番大きな屋敷


たぶんあれがザナック公爵の屋敷なんだろう、そこを目指すことにした


ザナック公爵の屋敷が近くに見えてきた時、僕の視界にある物が目に入った


それが何か理解した時、吐き気を抑えきれず、僕は胃の中にある物を全部、


吐き出してしまった


全部吐いて少しは落ち着けたのか、磔のようにされてる死体を確認するために


近ずくことにした


「ひどい」思わず口に出てしまう


手足と下半身だけ何かに食べられた、頭と上半身は所々食いちぎられた跡があるが


もう腐り始めててよく分からない


見た事ないけど、この人は多分ザナック公爵なんだろう、わざと痕跡をここに残して置いた?


僕に見せるために?


これはたぶん 地獄門を使った跡だ


まさかロミナさんこの街で、ゲートオブアビスを使ったんですか?


まさかこの街10万の住民全部を、餓鬼に食べさせたんですか?


信じられない、あのロミナさんが


僕は自分の甘さに後悔をした、なんであの時、ロミナさんを殺してでも、止めなかったんだ


この街が滅んだのは僕のせいだ


「すいませんみなさん、皆さんの魂に誓います


ロミナさんいや魔王ロミナは必ず僕が殺します」


「いや」「それは無理だな」


いつからいたのか?僕の後ろから声が


僕は後ろに振り返り「ライルさん生きていたんですね?」


ライルさんは不敵に笑い


「いやライルは死んだよ、今ここに居るのは魔王様の忠実なしもべ


四天王の一人、魔王の眼ライルだ」


そうかライルさんも死んだのか、魔王の眼? そうかあの右目が、そうなんだろうな


僕がライルさんの右目に注目してるのが分かると


「そうだ俺は生まれ変わった、魔王様のお力をいただき


人を超越した魔人にな、その証がこの右目だ(笑)」


ライルさんは笑いながら


「はははダイスケ、魔王様の命令だここで死んでもらうぞ」


「ライルさんもしかして、僕を待っていたんですか?」


「ああ」「魔王様はここにいれば、いずれはお前が来るだろうとな、


お前が来るまで随分暇だったぞ、調査にきた冒険者をなぶっていたんだが


すぐ死んでしまうしな(笑)」


そうか前に調査に来た冒険者チームも全滅か


僕は本当に甘かったみたいだ


「ライルさんもういいです、もう始めましょう」


ライルさんはニヤリとしながら


「ダイスケこの時を待っていたぞ、貴様から受けた屈辱をここで晴らしてやる」


「ライルさん僕はそんなに、あなたの事嫌いじゃなかったのに、残念です」


ライルさんは僕の言葉にイラっときたのか、いきなり剣を抜いて向かってくる


「だまれーーーー」 「ガキーーーン」


僕の迎え打った剣とライルさんの剣が甲高い音をだす


アステルさんに比べれば、それほどのパワーを感じない


それどころかなんかスキがあるように思える


これは、誘っているのかな? いやそんな駆け引きは僕には分からない


ええい、ままよ 僕は一歩踏み込み、左の裏拳でライルさんの顔面を狙う


「バキーー」 え 当たった?


しかも首が半分回転して折れたみたいなんだけど?


もしかして終わり?


いや そんなことないか、ライルさんは平気で立ち上がり自分で首を元の位置に戻した


「なかなかやるなダイスケだが、そんな攻撃では俺は倒せんぞ」


そう言って僕に再び向かってくる 「ガキーーーン」


またさっきと同じ体制だ、さすがに顔面にスキはないけど今度は足元にスキがありそうだ


そう思った僕は思いっきりライルさんの股間を蹴り上げた 「パーーン」


やばい、何かが破裂する音がした、さすがにライルさんでも、もう立ち上がれないんじゃ?


ライルさんは口から泡をだし痙攣していたが、すごいな5秒もしたら回復したぞ


「はははどうだダイスケ、魔王様より頂いたこの不死身の体は」


たしかにすごいけど、攻撃力や防御力が全くないんだけど?すごいバランスが悪いな


それとも、なにか隠していて、僕を油断させようとしているのかな?


どっちにしても、半端な攻撃はライルさんを苦しめるだけだ


一撃だ、一撃でライルさんを解放してあげないと


そう覚悟した僕はライルさんの心臓に向かって剣を構え、そして加速する


何も隠していなかったのか、ライルさんは僕のスピードに反応できず棒立ちだ


「ザスーーー」 僕の剣は間違いなくライルさんの心臓を貫いている


だが、ライルさんはそれにも構わず、右手に持った剣を僕に向かって下ろしてきた


とっさの事で僕は剣を離し、後ろに飛びのいた


「どうだダイスケ、ゴフー この不死身の肉体は ゴフー 


貴様の攻撃 ゴフー なぞ一切 ゴフーきかないぞ」


いや滅茶苦茶、血を吐きながら言われても


これは剣が刺さったままだから、回復しきれないのかな?


やはりそうなんだろう、ライルさんはなんとか剣を抜こうとしているが


かなり深く刺さっているせいで、なかなか抜けないようだ


うわー すごい苦しそうだな、こんなんじゃ駄目だもっと強力な攻撃をしないと


そう、肉片の一つも残さないような、すごいやつだ


なにが、いいかな? そうだあれなら肉片の1個も残さないはずだ


ライルさん今、楽にしてあげますからね


振りしきれ酸の雨


「アシッドレイン」 僕の叫び声と共にライルさの周りに酸の雨が降り注ぐ


「ぐぎゃぁああああ」 ライルさんの悲鳴が僕の耳に入ってくる


うお グロすぎる、しかも思ってたより、長いぞいつ終わるのこれ?


ライルさんが死ぬより、僕のメンタルの方が先に壊れそうなんだけど


ライルさんは酸の雨から逃げようとして、悲鳴を上げながら右に左に動き回るが


僕はその動きに合わせてるので逃げることはできない


すいませんライルさん僕のチョイスが間違ってました


もう動かないでください、時間が長引くだけです


そう心の中で謝りながら、その時間は過ぎていく


「約10分位なのかな?」 


「すみませんでしたライルさんもう何も残ってないんで


お墓も作れませんが、成仏してください」


最後までライルさんの体が合ったところに、僕は合掌しておく


その時 僕の近くの地面に大きな影が映った、僕は慌ててその影を確かめる


「アステルさんいたんですか?」


アステルさんは笑顔を向けて


「ええ お見事でしたダイスケさま」


「アステルさん何で、ライルさんと一緒に戦わなかったですか?


二人一緒なら僕を倒せたかも、しれないのに?」


「いえ」「今回はダイスケさまと戦うのはライルだけ

私の役目はライルが負けた後、ダイスケさまにメッセージを伝えることですから」


「メッセージですか?」


アステルさんは微笑み


「はい」 「じゃあいきますね、ダイスケさまよく聞いててくださいね」


「はあ」 「どうぞ」


「うほん」 「さすがはダイスケさま見事な戦いでした


だが奴は四天王の中でも最弱


他の四天王の足元にも及ばない、これからが本当の闘いだ覚悟することね」


え あのそれって、ライルさんなんて報われない人なんだ


すべてを奪われて、最後は、かませ犬にされるなんて


まりにも哀れすぎる


「あの、アステルさん少し聞いてもいいですか?」


「ええどうぞダイスケさま、答えられることでしたら?」


「はい」 「あの今のメッセージはロミナさんからの?」


アステルさんは首を振り


「いえ」「あのお方から、きっとダイスケさまも喜ぶはずだと言われまして」


やっぱりそうか、なにが祭りだ、なにが楽しませてもらうだ


あとは僕の覚悟の為にも、確認しとかないとな


「すいません後、アステルさんこの街の住人はどうしたんですか


死体も無いみたいですけど?」


「はい」「ダイスケさまこの街の住人ならロミナ様が餓鬼どもに食わせて皆殺しです


死体はアンデットにして使いますのでロミナ様が収納魔法で取り込んでいました」


そうか死体が無いのはそのせいか、でもこれで確信できた


やっぱりいい人そうに見えても、悪魔なんだな


よくもロミナさんやアステルさんの心を変えてくれたな


僕は生まれて初めだろう、こんなに憎悪というものを抱いたのは


あの超越的な存在には、何も出来ない、でも決して許せない


僕のそんな様子を見たアステルさんが不安になったのか


「あのダイスケさま、お怒りですか?」


アステルさんは僕に怒られるのが怖いのか、脅えたような顔をしている


僕も慌てて


「いえ」「たしかに怒ってますけどロミナさんやアステルさんに対してじゃないですよ


あのお方にですよ、よくも二人を、こんなに憎いと思ったのは生まれて初めてです」


アステルさんはホッとしたのか


「そうですかダイスケさま、私たちの為に怒って下されるんですね、嬉しいですけど


あのお方をに憎しみを向けてはいけませんよ」


僕も頷き


「わかってますよ、あの人たちにはどうせ、何もできませんしね」


アステルさんに僕の決意を伝えておくことにした


「アステルさんロミナんさんに伝えてもらってもいいですか?」


アステルさんは頷き


「じゃあ、魔王ロミナと四天王魔王の翼は、僕が必ず殺します、そう伝えてください」


「わかりましたダイスケさま、ですがもう少しお待ちくださいね


もうすぐ私達に相応しい、戦いの場が準備できますから」


アステルさんはそう言うと翼を広げ


「ダイスケさま2週間ぶりにお話ができて、とても楽しかったです


次は殺し合いになるかもしれませんが


それも、楽しみですね」


その言葉を最後にアステルさんは東の空に消えていった


「僕は全然楽しみじゃありませんよ」だけど今日、僕は確実に変わった


今日という日を僕は一生忘れることができないだろう

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