第16話 魔王様の覚醒



「ロミナ様もうすぐザナック領です」


私をお姫様抱っこして空を駆けるアステルが話しかけてきた


「そう このままザナック公爵の屋敷に向かって頂戴」


アステルは頷き飛行を続けた


ああ なぜ愛し合う私たちが殺し合わなければならないのか


私は昨日の夜の事を思い出していた


「こんばんは ロミナ君 アステル君」


それが あのお方に初めてかけて貰ったお言葉だった


あのお方の偉大さはすぐに理解できたが


世界の為にダイスケさまを殺さないといけない それだけは納得がいかず


アステルと二人で随分ゴネてしまったが


ダイスケさまが問題なのではなく ダイスケさまの子や孫、曾孫


ダイスケさまの知識を受け継いだ者たちの子や孫、曾孫たちが問題なのだといわれ


やはり大いなる お方は 私たちとは違うスケールで物を見ているのだと納得しなければならなかった


あのお方は 優しかった、私たちにダイスケさまを殺すことの強要はけしてしなかった


あのお力ならいくらでも自由に出来たろうに


でも断っても構わないと、仰ってくれた


私とアステルは決断した どうせ誰かがこの役目を引き受けるなら


私たちがやろう、他の者に無残に殺させるくらいなら 私たちが楽に殺して差し上げましょう


ダイスケさまを殺した時の褒美の約束も取り付けられた


後はダイスケさまをどう殺すかだ 私とアステルの初めてを捧げてダイスケさまの初めてをいただく


殺すのはそれからにしたい ダイスケさまを殺したら 私とアステルもすぐに後を追う


ダイスケさま今生では1回しか契り逢えませんが、来世で幸せになりましょう


いいえ 未来永劫に(笑)




そんな事を考えているうちにザナック公爵の屋敷についたようね


アステルが屋敷のベランダに降り立つ


「ロミナ様 どうしましょうか 私が皆殺しにしましょうか?」


私は少し考え


「そうね でも ライルとザナック公爵だけは 殺さないでね 必ず生きて私の所に連れてきてね」


アステルは微笑み


「わかっています とくにライルにはダイスケさまへの無礼を後悔させてやらないといけませんね」


「ええ 公爵にはお父様の恨みを思い知らせてやりませんとね」


アステルは一礼して庭に降り立ち行動を開始した 


「じゃあ私の方も始めましょうか」


ああ 可哀そうなザナック領の人たち あなた達にはなんの恨みのないし罪もないのに


こんな理不尽な理由、暴力で一生を終えるなんて


「サンダーブレイク」ダイスケさまに放った物とはちがう


手加減抜き 目標を絞らない 私の雷が街を襲う だが


「あら さすがに10万人以上の人が住む街ですね これだけじゃあ足りませんね」


私は自分の使える最大魔法の一つを使う事にした


開け地獄の門


「ゲートオブアビス」


この魔法は召喚魔法だ 地獄より餓鬼を呼び寄せ使役する


その数 百万位かしら? 多すぎて私もわかりませんわ(笑)


さあ餓鬼ども この街の住人をすべて食らいつくしなさい


ああ なんて可哀そうな人たちなんだろう なんて理不尽な死なんだろう


ああ なんて楽しいんだろう ああ 遠くから人々の断末魔の悲鳴が聞こえてくる


可哀そうな人たち  ああ 歓喜の笑いが消せないわ 「あはははははははは」


「ロミナさま お楽しみの所すいません 公爵とライルを連れてきました」


さすがアステルね仕事が早いわ


まあ 二人ともそんなに 脅え切って


「ロミナその角はなんだ? なんのつもりなんだ? 早く俺たちを離せ」


「そうだ早く離しなさい あとで貴様や父親がどうなるか 分かっているのか」


まあ 腰も抜かしかねないほど 脅えてるのに虚勢を張れるなんて 


嬉しいこれなら楽しめそう(笑)


「ザナック公爵様、ライル様 まあそんなに慌てないで ここからご覧になりなさい」


私は街の地獄絵図を指さし二人に見せてやる


わざと餓鬼に住人の死体を持ってこさせ 二人によく見えるように食べさせる


「ひいいいい」 「うあぁああ」


ああ 楽しい二人とも さっきまでの威勢はどうしたのかしら?


「助けてくれロミナ いや ロミナ様 何でもします金ならいくらでも出します」


「そうだ金ならいくらでも出す どうか命だけは」


「まあ そうですの? でもお金はいりませんね 


ほかに欲しい物がありますからそれをくださいね(笑)」


私は飛び切りの笑顔を二人に向ける二人は安心したのか


私に愛想笑いを向けてくる ああ気持ち悪い


「じゃあザナック公爵様 わたし悲鳴がききたいんです お願いできますか?」


「え」 ポカンんとした公爵を


「アステルあそこに放り込んで差し上げなさい」


「はい ロミナ様」


アステルはザナック公爵の襟首を掴み持ち上げる


「やめて やめてくださいお願いします やめてーーー」


餓鬼の群れに投げ込まれる公爵 


「ああ お前たち滅多に食べられない珍味なのですから 


いきなり殺してはいけないわよ手足の先からゆっくり食べて


少しでも長く悲鳴を聞かせて頂戴(笑)」


「ぎゃあああーーーー」 ああ 心地よいサウンドね


次はこいつね


「ライル様 さあ 貴方はどうしましょうか?」


「ひぃいいーー」


あらもう言葉も話せないくらい 脅えてますの 面白くありません


「アステル面白くありません 正気を取り戻させて」


「はい ロミナ様」 アステルは頷くとライルの右人差し指を曲げる 「ボキー」


「ひィーーー やめてくださいお願いします」


「そうそれで いいんですよ 私が満足するまで正気でいてもらわないと 


勝手に狂うなんて許しませんからね」


ライルは涙と鼻水を大量に流しながら 私に恐怖の視線を向けてくる


「ああ 今の瞬間を永遠にとどめて置きたいのに残念よねアステル?」


「そうですね こいつの 権力を笠に着た傲慢な態度と


ダイスケさまへの無礼こんな物では許されませんね」


「私も同感なんだけど あの方に言われたでしょう 四天王の一人にこいつはどうかしら?」


アステルは私の意図を理解してくれるだろう


そうあの方はおっしゃた 四天王の一人に必ずダイスケさまの


引き立て役になる弱いのを入れろと


なぜそんな注文を付けられたのか 理解はできないが 


あのお方の意志は私たちごときには分からないのだろう


「なるほどロミナ様 たしかに こいつなら その役目にうってつけかも しれませんね」


「ええ そうでしょう」


「さあ ライル貴方に選ばせてあげるわ 


あそこで親子一緒に食われるか 私のしもべとなるか?」


ライルは脅えた目をしながら


「本当に殺さないんでもらえるんですか?」


「ええ 貴方しだいよ」


「はい ロミナ様 忠誠を誓わせて貰います なにとぞ命だけは命だけは」


脅えながら私の足元に跪き 私の足の甲をなめようとする


カッときた私はライルの右手を踏み砕く 「ぎゃああーー」


「この無礼ものが 誰が私の体に触っていいと言ったのかしら?」


ライルは右手を抱えこみながら 丸まり 「お許しください お許しください」


この体に触っていいのはダイスケさまだけなのに ああ 殺してやりたい


でも我慢よロミナーーーーーーー


はあ落ち着いてきたわ


「ライル私の体に触れることは許しません 次はありませんよ」


私の言葉に反応して顔を上げるライル まあ 鼻水でとんでもなく汚い顔ですね


「はい 慈悲深く寛大なロミナ様 感謝いたします」


ほんと口だけはうまい男ね まあいいわ こいつと付き合うのも どうせ少しでしょうしね


「ライル今から 私の力の一部をお前に与えます 


お前は人を超えた物になるでしょう


 いい私のこの魔王ロミナの役にたつのよ」


「はい 魔王ロミナ様に永遠の忠誠を誓います 魔王様万歳 魔王様万歳」


それでいいわ 


ライルの頭を左手で持ちあげ 右手の人差し指に力を込める


「ロミナ様なにを?」


「お前に力を分けてあげるのよ すこし痛いけど 我慢してね(笑)」


右手人差し指をライルの耳の穴に突き刺す


「ぐわぁあああーー」


ライルの絶叫が響き渡る


1分後ぐったりとしてライルは動かなくなった


「さあ 立ちなさいライル いや何か四天王らしい 新しい名前ないかしら?」


ライルが立ちあがり そして跪く


「魔王様のお好きなように お呼びください」


どうしようかしら? そうね右目が魔人 左目が人間だし


「よし これからはお前は 魔王の眼ライルと名乗りなさい」


「はい よき名をありがとうございます魔王様」


ライルに頷き


さあ あとは後始末ね まず地獄門を閉じ餓鬼どもを帰し


そのあとは 街の住人たちをアンデットとして使ってあげることにしましょうか




あれ でも 私ってこんな性格だったかしら? アステルも?


元からこんな性格だった気もするし もう思い出せないわね


でもいいわ 私の性格が変わったのなら たぶんあの方が


私が苦しまなくていいように してくれたのでしょう だって今はとても楽しいし


ああ あの方は 本当にお優しい


早くあの方の言うとおりに、ダイスケさまと戦うに相応しい舞台を作らないと


ああ いまからその時が 楽しみですダイスケさまロミナは頑張りますから


待っていてくださいね

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