第9話 決闘前

「ダイスケさま決まりましたわ」


いつものギルドの酒場でお昼を食べている時だった


ロミナさんとアステルさんが僕が座ってるテーブルにくる


アステルさんが繰り返すように


「ダイスケさま例の決闘の日時が決まりました」


はあ ず~と決まらなくてもよかったのに


じつは決闘の話が出てからかなりの時間がかかった


なにせ正式な書簡のやり取り、立会人の選定


立会人を交えての和解案はないかの話し合いがおこなわれた


そこでの双方の主張はもちろん平行線


お互いが相手に侮辱されたと言ってて和解は無理だと確認された


ようやく決闘が正式にきまり 場所、時間、形式、


そして負けた方のペナルティーが決まる


それがようやく決まったらしい


この1ヶ月 忘れたくて考えないようしてたのに


ロミナさんが僕の顔をみながら


「ダイスケさま聞いていますか?」


「はい 聞いてます」


二人は椅子に腰を下ろし


アステルさんが口を開く


「ダイスケさま決まりました場所はこの街のすぐ外、日時は1週間後の昼」


「決闘の形式は100対100です」


「そうですか この街の外なんですか」


「ええ お互いに都合がよかったんで」


「お互いにですか?」


「ええ こちらは移動する手間がはぶけますし 向こうはそのままこの街を接収する気なんでしょう」


「え 接収って? 負けたらこの街取られちゃうんですか?」


「いえ 正式には借金のかたにされるだけですね」


それは 同じなんじゃ?


「あの負けたら借金ができちゃうんですか?」


「ええ この決闘の敗者は正式な詫び状を相手にだし かつ賠償金3億ゴールドをだすことに決まりましたので」


ロミナさんがここで口を開く


「まあ3億ゴールドなんて大金ザナック公爵は何とかなるでしょうけど うちは現金ではそんなにすぐには出せません」


「なので しばらくは借金のかたに街を取られることになりますね」


3億すごい大金だ しばらく僕が呆然としてると


アステルさんが話を進め始める


「しかしザナック公爵はこちらの予想どうり100対100で来ましたね」


「なんで 100対100になると?」


「ええ それはですね 財力がある大貴族の常套手段なんですよ無理難題を吹っ掛けて相手が拒否すると決闘に持ち込む」


「決闘は話し合いで決まらなかった時の 最終手段ですし貴族である以上決闘は受けなければいけません」


「なので大貴族は金にあかせて100人の強者を集めるんですよ」


「ああ なるほど わかりました お金のない方は100人も強い人が集められないから負けちゃうんですね」


ロミナさんが頷きながら


「そうですダイスケさま それがありますからお父様もなに言われても黙って向こうの言い分を聞いていたんですわ」


なるほどね話をよく聞けば 伯爵がスッキリしたって言ってたのも理解できなくはないのかな


二人とも僕を希望に満ちた目で見てくる


「でも今はダイスケさまがいます もうこちらの勝利は間違いありません(笑)」


ロミナさんの宣言にアステルさんも強く頷いてる


「いや 勝負は時の運ですし やっぱり僕一人の力なんてたかが 知れてますし こっちも強い人集めたほうがよくありませんか?」


アステルさんが不思議そうな顔で


「いやダイスケさま たったの100人ですよ? ドラゴンに比べたら たいしたことありませんよ?」


「いやドラゴンは異常気象のせいで死んだだけですから」


二人は顔を見合わせ微笑みを浮かべながら


「そうですね そう言う話でしたね」


なんだその 我儘を言ってる 弟とかを なだめてるような態度は


アステルさんが強引に話を進め始める


「じゃあ 決闘の注意点をお話ししますね」


「と言っても ルールはかなり大雑把です 勝敗は動けなくなるか敗北を認めたらそれで終わりなんですが」


「100人以上ださないこと あとは 卑怯な戦いをしないこと これだけです」


「あの卑怯な戦いって具体的にはなにしちゃだめなんですか?」


「そうですね立会人がこれは卑怯だと思えば駄目なんですけど たとえば毒とかはまずだめですね」


そうか はあ ほんとに嫌だけど ここまで来たらやらない訳にはいかないよね


自分の力じゃないけど 勝つ自信はある 問題は勝ち方だ


勝つだけならもう開始と同時に サンダーブレイクとかいきなり打ち込めばそこで勝負が終わりそうだし


ただ今度の相手は人だ 僕は人を殺したことはないし 殺したいとも思わない


まあ決闘だし流れのなかで 死んでしまったとかは嫌だけど まだ自分を納得させられるかもしれない


けどサンダーブレイクで100人 皆殺しとか絶対にやりたくない


そうか動けなくなれば それでこっちの勝なんだよね それなら


「アステルさん 例えば魔法で敵を全員眠らせるとかは ありなんですかね?」


「そうですね魔法で眠らせるなら大丈夫だと思ういますよ ただ 相手もそれくらいは予想して魔法の対策はしてると思いますけど」


そうか魔法で眠らせるのは かまわないけど 対策されていたら効かないかも しれないのか


ほかにいい方法は なにかないかな? そうできれば向こうが勝手に自滅しました的な勝利が一番いいんだけど


それから僕はアステルさんにいろいろ質問をしてみたが うまい方法が思いつかない ああもう


もう面倒だしサンダーブレイクで終らせちゃおうかないやだめだ やるならインフェルノとかで死体も残さないほうがって


なに怖いこと考えてるんだ  うーーーーーん うーーーーーーん


うーーーーん うーーーん


そうだ戦う必要はないんだ すごい便利な魔法があるじゃないか いけるこいつならいける 


うまくいけば だれも傷付かないはずだ しかも 自滅したように見えるかもしれない


よしさっそく 準備を始めよう なにせこの魔法は僕が知ってる中でも最高峰の一つだ


あと1週間かギリギリかもしれないな 


僕は二人に


「ロミナさん アステルさん 僕はこれから決闘のための準備にはいります」


「宿に籠りますので 決闘の前になったら迎えにきてもらえますか?」


二人は頷きながら


「わかりました ダイスケさま 私たちも宿にいきます せめてお世話させてください」


「すいませんが 集中しないといけないので 僕一人にしてください」


本当はそこまでの集中はいらないと思うけど この二人が傍にいると まったく集中できなくなるかもしれないしな(笑)


二人も理解してくれたか 不満そうな顔しながらも


「わかりました ロミナの為に戦って下さってるのに 邪魔は出来ませんね」


うお いま一番思い出したくなかったことを やめてくれロミナさんやる気が そがれていく


駄目だ気持ちを切り替えるんだ これはやらないといけない事なんだ そうだ やらないといけないんだ


「ええ 決闘が終われば正式にロミナはダイスケさまのもの ほんのちょとの我慢ですものね」


やめてくれ 僕の精神にこれ以上の負担をかけないでくれ


「あのロミナ様 決闘の後に正式に決まるのはロミナ様とライルの婚約破棄だけですよ(笑)」


そうだ正式に決まるのはそれだけなんだ


「まあ そうでしたっけ?(笑)」


「ええ そうですよ(笑)」


「すいません じゃあ僕もう準備に入りますから」


そう言って宿に走り出した


後ろで何か言ってたようだが


お願いします もう僕を一人にしてください

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