第7話 初めてのお買い物

「この剣はどうですか? アステルさん」


アステルさんに僕は一本の剣を見せるが、僕には並んでる剣の違いが全くわからない。


僕は今まで武器も防具も持っていなかったが、必要を感じなかったし、


高いので買おうとも思ってなかった。


だって、薬草採取で一生暮らせたらいいなと思ってるのに、武器なんていらないよね。


だけどこの前のドラゴン騒動、あれのせいで武器や防具を買わないといけなくなってしまった。


あの後のことを簡単に説明すると、僕とロミナさんはCランクに上がった。


マストルさんはBランクいやAランクに上げたかったようなんだけど、


それは僕が硬く断った。なぜなら僕は異常気象でドラゴンが死ぬのを見ていただけだからだ。


そう、僕は見ていただけだと言い張った。あの場所には僕とドラゴンしかいなかったんだ。


ドラゴンはもう喋らないし、僕の言うことが嘘だと言い切れる証拠もない。


結局、僕たちのPTの確実な手柄はドラゴンの脅威をいち早くギルドに知らせた、それだけだ。


それだけでCランクまで上がるのも納得いかないけど、まあその辺は妥協しないとね。


次の問題はドラゴンの討伐の報奨金や素材の報酬をどうするかって話になった。


もちろん、見ていただけの僕が報酬を貰うのは変な話なんで、


ドラゴンの来襲を知らせた褒美だけ貰うことになったみたいだ。


で、ロミナさんが昨日こんなことを言い始めた。


「Cランクになりこれからは討伐依頼も受けられるようになりましたし、今まで必要ありませんでしたが、

明日はダイスケ様の装備をお買い物に行きましょうか」


「今までの薬草採取とドラゴン発見の報酬が入りましたので順調にお金もたまってきてますし、お金の心配しないで好きなものを買ってくださいね」


ちなみに僕は報酬がいくらか知らない。なぜなら今までの報酬は全部ギルド→ロミナさん→僕の


順番でもらっており、いくら貰っているのかは知らされていなかった。


それとなく教えて欲しいとセイラさんに聞いたことがあるんだけど、ギルドの規則でPTリーダー以外には教えられないと


言われた。


いや、絶対に嘘だよね? ロミナさんにそう言えって言われているんだよね?


僕に入るお金をコントロールして、生かさず殺さず状態にして、絶対に逃げられないようにしてるんだよね?


そう、疑ってた。いや、確信していた(笑)


「あの、ロミナさんちなみに、どれくらい貯まったんですか? 参考までに」


「まあ、ダイスケ様はそんな些細なこと気にしなくていいんですよ。私がすべてちゃんと管理してますから(笑)」


「そうですよダイスケ様、PTで暮らせる家を買えるようになるまでもう少しなんですから、心配しなくても大丈夫ですよ(笑)」


「そうですか、ありがとうございます。はははは」


駄目だ、僕はもう逃げれないのかもしれない。ははははは


「アステルさん、僕にはどれがいい剣なのかいまいちわからないんで、選んでもらってもいいですか?」


そんな僕の言葉を聞いたアステルさんはプリプリした感じで


「もうダイスケ様、あまり謙虚すぎるのも嫌味というものですよ」


その言葉を聞いたロミナさんも


「そうですよダイスケ様、遠慮せずにこの店で一番いい物を選んでくれればいいんですよ?」


いや、本当にわからないんですけど


「この剣はどうですか? アステルさん」


適当に目についた剣をアステルさんに見せてみる


「さすがダイスケ様ですね。私にはわかりませんが、この店で一番いい剣なのでしょう」


いや、分からないって言ってるじゃないですか


アステルさんは店主を呼ぶと


「店主、この剣はいくらですか?」


「はい、この剣でしたら1000Gでいかがでしょうか?」


「ずいぶん安いんだな、この店で一番いい剣なんだろう?」


いや、たぶん既製品だと思うんですけど


「そうですね、もちろんいい剣ですよ(笑)」


「やはりそうか、一番いい剣なんですよ。さすがダイスケ様の目利きですね」


いや一番って言ってないじゃないですか。いや、もうどうでもいいや(笑)


「じゃあその一番いい剣でいいです。それにしましょう(笑)」


武器屋の次は防具屋に行ったんだけど、


同じパターンで、アステルさんとロミナさんが、僕が適当に選んだ物を、


一番いい物だと強引に店主に認めさせる、よくわからない買い物が終わった。


こんな変な買い物初めてで、すごい疲れたよ。


それ以上に、武器屋と防具屋の店主さん、変な客でどうもすみませんでした。

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