第6話 ドラゴンの自然死?
僕たちいつものように街の裏山に入り
いつものように薬草採取をしていた
お昼頃たったろうか僕たちの上に黒い影が差し込んだ
そして次の瞬間、そいつは僕たちの目の前に
下りてきた
その姿を見た時、ロミナさんは恐怖の声をあげ
アステルさんは絶望の表情を
そして僕は一言
「え? ドラゴンですか?」
そいつは博物館で見た恐竜をちょっと大きくしたような想像どおりの姿をしていた
「ダイスケさま、ロミナさま、私が時間を稼ぎます、街まで逃げてください」
アステルさんの悲痛な叫びと覚悟を聞いた僕は
「アステルさん、ロミナさん、少し我慢してくださいね」
アステルさんを右に、ロミナさんを左に両脇に抱え、ドラゴンを背にダッシュで逃走を開始した
「え?」 「ダイスケさま?」 二人ともいきなりの僕の行動に反応できないみたいだし
あまりにも一瞬の出来事でドラゴンも意表をつかれたのか、僕の逃げ足があまりにも早かったせいか
街の入り口までアッという間に逃げることができた。さすが肉体能力マックス、すごい逃げ足だ(笑)
街の入り口で二人を下す
「ありがとうございます、ダイスケさま、だがこのままでは街がドラゴンに襲われますわ」
「とりあえず伯爵さまとギルドのマストル殿に、伝えましょう、緊急事態です」
「ええ、なんてことでしょう、街が…このままではドラゴンに」
二人はほぼパニック状態です。おかげで僕の方が落ち着いてきました
「じゃあ、二人は伯爵とマストルさんに知らせてきてください」
「僕はあのドラゴンを見張っていますね」
二人は僕の言葉を聞いて
「そんな、ダイスケさま、危ないですよ」「そうです、一人でいくなんて」
「いえ、大丈夫ですよ、いま僕の逃げ足見たでしょう? なにかあれば逃げますから」
二人は僕の言葉にいちよう納得したのか
「わかりました、危なくなればすぐに逃げてくださいね」
「はい、じゃあ行ってきます」
僕は先ほどドラゴンがいたあたりに戻るべく駆け出した
いなくなってるな、どこかに移動したんだろうか?
その時、僕の上にまたあの影が — 上だ
僕が大きく後ろに飛んだ次の瞬間、ドラゴンが上から落ちてきた
僕がその姿を呆然と見ていると、ドラゴンの口が開き
「うわーー」、ドラゴンのファイヤブレスが僕を直撃する
「シールド」、僕の前面に魔法の盾ができて、ドラゴンのブレスを防いでくれました
僕はこの世界の全ての魔法が使える。賢者スキルのおかげで使い方はすべて頭の中に入ってる
でも使う気はさらさらなかった。だって、そうだろ、この世界の人たちは何年もかけて魔法を習得する
いや、それだけ努力しても使えないことだってあるんだ
なのに僕は賢者スキルのおかげで一瞬で覚えることができた
こんなの許されるはずがない
たとえば何十年も修行した寿司職人と今日初めて握った、ど素人の寿司が同じで誰が納得できるっていうのだろう?
少なくとも僕は納得しない
だけど、ドラゴンをこのままにすれば、街に被害が出る
まだ1週間ちょいしか過ごしていないが、僕を暖かく迎えてくれた人たちの命が家がなくなるかもしれない
よし、やろう。僕はシールドで自分の身を守りながら、ドラゴンを一撃で倒せる魔法はないか思考を巡らせる
なるべくなら、ドラゴンが自然死したように見えるのが望ましい
すごい苦しい、いわけだが、見張ってたら、突然くるし、いきなり倒れた?
そんなシナリオが望ましい、そんな魔法は何かないか?
あった、よし、この魔法だ、ドラゴンを感電死させよう、ドラゴンが心臓発作で死んだことにするんだ
やることが決まった
さっそく僕は魔法の集中を始めたけれど
ドラゴンは僕にブレスを吐きながら近づいてきる
もうちょっと時間が必要だな、僕は魔法の準備をしながら、ドラゴンの周りを右に左に移動し
ドラゴンの攻撃をかわす
だいたい30秒ぐらいかな、もう準備できた、かなり早いと思う、これも賢者スキルのおかげなんだろうか?
だが、この賢者スキルには一つ大きな欠点がある。それは
「サンダーブレイクー」、なぜか魔法の発動時に魔法名を叫ばなければいけないんだ
なぜなんだよ? なぞ仕様すぎるよ
だが間違いなく、魔法は発動し、ドラゴンに雷が落ちる
そう雷が一本、2本、3本、いや、何十本も、あれ落ち過ぎじゃない?
そして、すさまじい雷鳴が一帯に響く
「ばあーーーーーん」「ばああーーーーーん」「ぎゃーーあんん」
うるさすぎる、何だこれは、あまりのうるささに僕は耳をふさぎ、うずくまる
ようやく静かになったようだ、そうだ、ドラゴンはどうなったんだ?
ドラゴンはさっき僕が見たままで絶命してるみたいだ、立往生ってやつだね
よく見ると、ところどころに、雷の落ちた火傷ぽいものがあるけど、よし、自然死だ(笑)
よし、街のみんなにドラゴンが突然くるしみだし、いきなり心臓発作で死んだって知らせて安心させてあげよう
街に走り出した
街の入り口にこの街の兵士と冒険者と思われる一団が、あ、ロミナさんにアステルさん、マストルさんもいるな
「みんな、喜んでください、ドラゴンが突然苦しみだし、たぶん心臓発作でしょう、いきなり死にました」
僕は大声で彼らに、この吉報を伝えてあげましたが
「いや、あのすさまじい爆音と雷はなんだ?」、マストルさんが真顔で僕に聞いてくる
「ええ、ダイスケさま、ダイスケさまとドラゴンがいる方向からすさまじい雷鳴とすごい数の雷が落ちるのが見えましたが?」
ロミナさんが僕に確認するように語りかけてくる
「ダイスケさま、ドラゴンを倒したのですね」
アステルさんが確信したように、僕を見てめてくる
そうか、僕は馬鹿か、あんな、派手ですごい音を立てて、自然死って、不自然にもほどがあるだろう
だが、まだ、あきらめないぞ
「いや、異常気象ってやっぱりですかね? 突然の雷で僕もビックリしました、ははははは」
僕が笑ってごまかしていると
ロミナさんとアステルさんが、分かってますよって慈愛の微笑みを浮かべ
「そうですね、異常気象ですか、よくありますよね」
「ええ、異常気象ですね、よくあります」
「ええ、そうですよ、ははは」
「いや、ねえよ」、マストルさんのツッコミが入り、この騒動は終わりました
そう、僕の中では、すべて終わりました、後のことなんか知るかーーー
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