第5話 薬草採取
「ダイスケ様、今日の依頼はどれにしましょうか?」と声をかけられました。
僕は今、冒険者ギルドの掲示板を見ています。
「ダイスケ様、このウルフ退治の依頼はどうでしょう?」と、別の人が提案してきました。
僕は今この二人とパーティーを組んでいます。
いや、もちろん僕の希望ではありません。
ギルドに入った後、僕はすぐにマストルさんに、「どんな所でもいいんで後払いできる住処はありませんか?」と尋ねてみました。
マストルさんは喜んでギルドの知り合いの食堂兼宿屋を紹介してくれました。
伯爵には独立する旨を伝え、その宿場にすぐに引っ越しました。
やった、これで逃げられる、そう、その時は思っていました。
次の日、ギルドに仕事を探しに行くと、そこにはロミナさんとアステルさんがいました。
「ダイスケ様、今、私も冒険者登録が終わりました(笑)」と、ロミナさんが言いました。
「そうなんだ、おめでとう(笑)」と、僕が応えます。
「じゃあ、お互い頑張ろうね(笑)」と、アステルさんも加わりました。
「ええ、頑張りましょうね。今、パーティーの申請を出しますから(笑)」と、ロミナさんが続けました。
え?誰とパーティーを組むんだ?
いや、わかってるけどさ(笑)。
「ダイスケ様、パーティーの名前なんですけど、『ダイスケ&ロミナ』でよろしいですか?」と、提案がありました。
なんだよその、バカップルの羞恥プレイみたいな名前は。
アステルさんも何か言いたそうです。
「ダイスケ様、私も名前を考えました。『ダイスケフォーエバー』とかはどうでしょうか?」と、アステルさんが提案しました。
いや、とりあえず僕の名前は外してくれ。
「まず僕の名前をパーティーの名前から外してもらえませんか?」と、僕がお願いしました。
二人はお互いを見ながら、強い口調で「いえ、それはできません」と答えました。
なんのこだわりなんだよ?どうすれば、この二人を納得させられるんだろう?
そうだ、僕が名前を考えて、それをしっかりプッシュすれば、二人とも言うことを聞いてくれるかもしれない。
「じゃあ、この街の名前から取って『コンテントスリー』とかにしませんか?ほら、なんとなくいいでしょう?」と、僕が提案しました。
正直、自分でも微妙な名前だと思っていますが、なんかいいのが思いつかないし仕方ない。
「じゃあ、私はそれでいいですよ。アステルはどう?」と、ロミナさんが尋ねました。
「私も問題ありませんよ」と、アステルさんが応じました。
「え、こんなに微妙な名前でも?なぜ一発OKなんですか?」と、僕が驚きます。
「じゃあ、その名前で申請しますから、ここにダイスケ様の名前を書いてくださいね」と、ロミナさんが言いました。
やられた、そうか、名前なんかどうでもよかったんだ。
僕をパーティーの参加者として申請書にサインさせるために、こんな茶番をやらされてしまった。
「さあ、ここにダイスケ様の名前を(笑)」と、ロミナさんが言いかけました。
「はい、ここですか(笑)」と、僕は答えました。
そして今、掲示板を三人で見ているわけです。
「アステルさんはランクがCクラスなので、討伐依頼も受けられますが、僕とロミナさんはFクラスなんです」と、話題が変わります。
「この薬草採取の依頼を受けることにしましょうよ」と、誰かが提案しました。
「そうですね。アステルなら一人でウルフの討伐に行ってきてもいいのですよ?」と、別の人が言いました。
「いいえ、ロミナ様。私たちは3人でパーティーです。もちろん、私も一緒に薬草採取にいきますよ(笑)」と、応じます。
今、ちょっと言ったがギルドのメンバーはランクで序列がわけられています。
S、A、B、C、D、Fの5クラスで、入ったばかりの人はFクラスから始めます。そこから実績を積んでランクが上がっていくようです。
ただ僕はFクラスでも全然困りません。なぜならランクを上げなくても生活に困らないからです。
そんなわけで、僕らのパーティーはここ1週間ずっと薬草採取をしています。
「じゃあ、いつもの裏山に行きましょうか?」と、提案が出ました。
「ええ、ダイスケ様。今日も沢山取れるといいですね」と、もう一人が賛同します。
「でも、ダイスケ様、薬草採取だけではランクは上がりませんよ」と指摘があります。
「マストル殿も早くダイスケ様のランクを上げたがっていますし、もう少し別の依頼も受けませんか?」と、誰かが提案します。
だから、薬草採取ばっかりしてるんですよ(笑)。
「そうですね、善処しときます」と、スルーするのが一番かもしれません(笑)。
そう、今日もいつもと変わらない、ただの薬草採取のはずだった。
慣れ親しんだ裏山。
しかし、今日はここにはいないはずの奴が突然僕たちの目の前に現れました。
そう、この世界最強のモンスター、「え、ドラゴンですか?」。
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