第3話 ここが異世界の街なんだ

始めて見る異世界の街だけど、やっぱり人の住む町。


店があり家があり人が暮らしている。


それほど違いはなさそうに見える。


「ダイスケ様、つきました。ここが我が家ですわ。」


街を見ているうちに、どうやらロミナさんの家に着いたみたいだ。


「はい」と返事をして馬から降りることにした。


「ダイスケ様、こちらにどうぞ。父に紹介しますから。」


「はい、わかりました。」


いや、お父さんに紹介されてもね。


屋敷に案内され、一つの扉の前に。


「コンコン」「お父様、ロミナです。入りますね。」


「ああ、入りなさい。」


部屋に入るとそこには二人の人がいた。


この男性がお父さんなんだろうな。


「ダイスケ様、父のボッシュ伯爵です。」やっぱり親子なんだな。ロミナさんと同じ金髪、碧眼、身長はだいたい170位かな。


「始めまして、如月大介です。」


握手の習慣があるか分からないから、言葉だけの挨拶にしておいた。


「ボッシュ伯爵です。ようこそ我が家に。歓迎しますよ。」


「ダイスケ様、母のアイラです。」この人も金髪、碧眼、身長は160くらいか。こちらもロミナさんによく似ている。


「初めまして、如月大介です。」


同じように挨拶し、軽く会釈する。


「ところでロミナ、こちらの方はいったいなぜ我が家に?」


ロミナさんは頷き、先ほどのことを説明している。


「それは、娘の危ない所を、ありがとうございます。ほんとに感謝してもしきれませんな。」


「ほんとうに、ありがとうございます。」


二人とも僕にすごい感謝してくれてるようだし。


僕としては微妙な気分なんだけど、助けてのは事実だし、ここは素直にしておこうかな。


「いえ、たまたまですよ。そんなにお気を使わないでください。」


「そう、おしゃらずに。今日はどうぞ我が家に、お礼をさせてください。」


それは、僕としても助かるし。お言葉に甘えちゃおうかな。


「じゃあ、一晩だけお世話になりますね。」


「そう、おしゃらずに。好きなだけいてもらっても(笑)。」


「そうですよ、ダイスケ様。自分の家だと思ってもらっても、かまいませんから。」


ロミナさんが僕に気を使ってくれているようだ。


「はい、ありがとうございます。」


いや、いいご家族だな。この家族にもてなしを受け、僕は用意された部屋のベットで就寝につこうとしてた。


ああ、今日はほんとうに、目まぐるしい一日だった。


突然死んだことを知らされたと思ったら、いきなり異世界に蹴り飛ばされるし。


まあ、こうやってベットで寝れるだけでも、感謝しないとな。


「コンコン」「ロミナです、ダイスケ様。少しよろしいですか?」


ロミナさん、こんな時間になんだろう?


「あ、はい、どうぞ。」


ドアをあけて、ロミナさんを部屋に招き入れる。


ロミナさんはそのまま、ベットの端に座る。


「ダイスケ様も、こちらにどうぞ。」


ロミナさんが自分が座っている横を手で軽くたたいている。


え、でも、若い男女がこんな時間にベットに並ぶなんて。


ロミナさんが微笑みながら、手招きしている。


「じゃあ、お邪魔します(笑)。」


「ダイスケ様、危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」


いや、もう何度も言われたし、そこまで何回も言われると、こっちが恐縮しちゃうな。


「いや、ロミナさんの気持ちはもう十分伝わっていますから、大丈夫ですよ。」


「そうですか? じゃあ、次は態度で感謝の気持ちを。」


そう言って、ロミナさんはローブを脱ぎ始めた。


「え、いきなりどうしたんですか?」


「はい、ダイスケ様に助けてもらわなかったら、あの男たちに奪われていた、私の初めてを差し上げようと思いまして。」


えええええ、いきなりなに言い始めるんだ、この人は。いや、すごい嬉しいけど。


でも、そんな気持ちで初めてを、よくないよね。


「いや、ロミナさん、もうほんとうに十分気持ちは伝わりました。ロミナさんの初めては大事な人のために取っておいてください。」


ロミナさんは笑顔のまま。


「なら、問題はありません、は、ダイスケ様はもう、ロミナの大事な人ですもの(笑)。」


え、僕たちまだ1日たった数時間だよね?


「いや、たしかに、ロミナさんの危ないところを助けましたけど、それだけじゃないですか?」


「いえ、ロミナは運命を感じたんです。そう、まるで雷にうたれたようでしたわ。」


「ああ、このかたこそ、ロミナが一生付いて行くべき、お方だと。」


理解できないよ? 雷に打たれたようなって、なんだよ。そして、一生って、重すぎるよ。


「あの、ロミナさんって、今何歳なんですか?」


「はい、今年で14歳になりました。」


いや、一生の相手を選ぶのは早すぎるだろう。


「ロミナさん、お気持ちは嬉しいんですけど、たぶん、ロミナさんはまだ襲われたときの混乱が収まってないんですよ。」


「だから、その後、僕に助けられて何となく、そんな気分になっただけですよ。」


「14歳なんて、人生の相手選ぶには早すぎますよね。もうちょっと考えましょう?」


「たぶん、ゆっくり寝て、明日の朝になれば、落ち着きますって。」


ロミナさんは、ムッとしたような顔で。


「いえ、そんなことありません。ダイスケ様の国ではどうかしれませんけど、14でもう子供も産んでる人だって珍しくありませんし。」


「なにより、このダイスケ様への愛が揺らぐことなぞ、ありえません。ええ、たとえこの身が滅び、何度生まれ変わっても、たとえ男に、いや、人間以外に生まれ変わってもです。」


いや、なにその思い込みは、ほんとうに重すぎる。そして、怖いんだけど。


どうしよう、どう言えば引き下がってくれるんだろう。そうだ。


「わかりました、ロミナさん。そこまで言うなら、今日はもう帰ってください。」


「ほんとうにその気持ちが変わらないか、試させてください。」


ロミナさんは、少し考えてから。


「わかりました、今日は帰りますわ。」


「ロミナのダイスケ様への気持ちが揺るがないことを、証明してみせます。」


そう言って、ロミナさんはようやく戻ってくれた。


ああ、正直なところ、下心もでたし、惜しいことしたと思ってるけど。


僕は、その女性と付き合ったこともないし、なんだ、その、理解できないよね。


それはいいんだ、ヤバすぎるなんだ、僕が何すればあんなに好感度がマックス状態になるんだ?


ぜんぜん理解できないよ、怖すぎるよ。


どうする、このまま逃げちゃおうか?


いや、逃げても、これからのあてが、まったくないしね。


うーーーよし、何とかロミナさんをかわして、この世界でなんとか生活できるようにして、それから逃げよう。


ああ、なんてことだ、終わったと思ったのに、まだ怒涛の1日が続いていたなんて。


もう、何もないよね? ほんとうに?

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