第2話 Happy birthday クラベル!

クラベルこと雪塚 海斗のマンションの前...


 確か海斗は、12階立てのマンションで5階に住んでいたような気がする。曖昧だが私には、やる気になった雨井がいる!


「さぁ!行こう!海斗は、ニューライブって事務所の最初のVTuberでクラベルって言うの。そのキャラのガワを私が描いたの!」


 雨井が階段を登りながらVTuberについて語る語る。いつも階段登るのすら、いやがるのに。好きなもののパワーって凄いなぁ。


「とりあえず咲は自分の事を 星橋翠ほしばしみどりって読んでね!あと私のことは天津風 ゆうで」


 すみませーん。雨井ー理解が追いつかないよー助けてー。


「まぁ自分のことは星橋翠って思って、海斗はクラベル!そして付いたら歌う。いいね」


 致し方あるまい。自分でつけた火の後始末はキチンとやろう。


 ...雨井いや、ゆうってpautube(ぱうちゅーぶ)で凄い人なのか


 もしかしたら雨井の美少女描きたい欲に火をつけてしまったのか


 などなど歩きながら考えていると部屋に着いたようだ。


「お邪魔しますー!クラベルさーん、ママがやって来たよー」


 運命の時間がやって来たようだ。腹を括るしかなかいようだ。


 とりあえずさっき説明されたことをまとめると。


・海斗はVTuberをやっている

・名前はクラベル・赤川・サーラ

・雨井はイラストレーターをやっている

・名前は天津風 ゆう

・クラベルのガワを描いた

・VTuber界隈ではガワを作っている人をママと呼んでいる

・天津風ゆうはクラベルのママ


 なんとも...幼なじみが...と思ってしまう私である。


「えっ、待って天津風先生が来たよ。まさか家に来るとは思わなかった。」


 海斗...いやクラベルは先生呼びなのね。

こっそり待機させといたクラベルの配信を見ると、


『来たぞー天先がー』

『自分の息子を娘にする天才』

『こんあまゆうー』

『あのキャラが崩れるクラさん来たぜー』


「マイクオーン!皆様こんにちは天津風ゆう先生だぞ!」


 持参してきていたヘッドホンを付け、ヅカヅカとクラベルの部屋に進んで行った。


「おいおいゆう先生、ちょっと待ってくれ...」


 正直言って今のゆう先生のテンションに付いていけない。

 最近あのテンションの雨井を見ないと思ったら、ここで発散していたのか。


「という訳で、他にもゲストが来てますー。ボソッ(翠歌って)」


 とりあえず雨井に渡されたマイクでHappybirthdayを歌おう。私はこの慌てているクラベルを意識から外すことにした。


「ふぅー Happy birthday to you 〜」


  ━━━━━━━━━━━━━━━


『えっこの歌唱力バケモノの人誰だ?』

『天津風先生の待望の娘?』

『ニューライの新人来たのか?!』

『天津風先生の友達?』


 同接数に比例してどんどんコメントの早さが上がって行く。


「まさかよ。あいつが歌ってくれるなんて。」


『待ってクラさんの知り合い?』

『天津風先生ーkwsk』


 俺の幼なじみ竹下咲が雨井とともにやってくるなんて...俺は咲の歌声を聞いても、これが現実だとは思えなかった。


 俺はVTuber事務所兼アニメ制作会社のニューライブに所属するVTuber クラベル・赤川・サーラ。


 今日は俺の誕生日ということで誕生日凸待ち配信をやっていた。事前に天津風 ゆう こと

湯川雨井が来ると聞いていたがまさか...


「えっとね!この歌ってる子は新しい娘なのよ!」


『マジか!』

『まさかクラさんの枠で発表かよ』

『運営には許可取ったのか?』


 そうだ。確か新人がデビューする為には、社長の許可が欲しいと言っていたはずだが。


「もちろん♩社長には前々から許可取ってたよー!ちゃんと音声も取ってある」


 まじか...自分の好きなものの為なら、自分の目標の為なら底知れない努力を積んできた彼女なら、出来てしまうのかもしれない。


「〜どう?クラベル!久しぶりに聞いた翠の歌声は?」


 歌が終わってしまった。やっぱり咲の歌声は引きつける何かがある。


「あぁ、やっぱり翠の歌声良いな。ありがとう天津風、翠。」


 心配そうにしていた彼女は満面の笑みに。

隣のVTuber大好きイラストレーターも最高の笑顔を浮かべていた。


 あぁ俺はこの笑顔を待っていたんだなと、

この笑顔を傍で見ていたかったなと気づいた。


「というわけで、改めて新人ちゃん自己紹介お願いします!」


 いつの間にか配信画面に彼女のガワを貼り付けていた。


「はっはじめまして。ニューライブでデビューします!星橋翠ほしばしみどりです!」


「よろしく、翠。ニューライブへようこそ!」


『やばっクラさんがここまで優しい声出したの初めてじゃない』

『これはヤバイカップル生み出したんじゃぁ』

『天津風先生ありがとう。最高!』

『初配信は5日後を予定してます【ニューライブ公式】』


 ふとコメントを見ると公式からコメントがやってきていた。最高の誕生日プレゼントだ。


 そして天津風は、マイクを外しこちらへやって来た。


「一旦待機画面にしてちょーだい。」


「おう。すまないがちょっと天津風先生達に、お茶とか出すから少し待っててくれ。」


『律儀なクラさん』

『待ってますぞー』


 とりあえず新曲でも流して待機画面にしておこう。


「っということで、雨井どういうことか教えなさい」


 これ絶対咲が巻き込まれて、VTuberにさせられているパターンだろ。

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