参考記録① (作成時期不明)
《とある学級通信》
皆さんは人が死んだら、どこへ行くと思いますか?
天国ですか? それとも地獄ですか? あるいは死んでしまったら何も残らず、完全な無になると思いますか?
答えは当然のことながら、私にもわかりません。しかし、想像することはできます。死後の世界はいったいどんな場所なのか。一度は皆さんも考えたことがあるのではないでしょうか。
仏教などでは魂は輪廻転生すると言われ、死んだら別の生命に生まれ変わるという考えがメジャーですね。対して、日本固有の宗教である神道は包括性、寛容性に富んでいるため、日本というたった一つの国の中に驚くほど多くの死生観、宗教観が混在しています。
例えば、海の向こうを『死者の国』とする説。
逆に海の向こうには、『神の住まう場所』があるとする説。
ニライカナイや、常世の国なんかがそうですね。
他には寄(より)神(がみ)信仰と呼ばれているものなんかも。
皆さんにも身近な神様だと、西宮神社の恵比寿さまなんかが海の向こうやら移ろってきた神様に該当します。
海の向こうには死者の国があるという説と、海の向こうには神様がいるという説。一見するとそれらはまったく相反する考えにも思えますが、その始まりは深いところで密接に繋がっている。そんな部分が神道の面白さの一つだと思います。
さて、話が少しずれましたが、最初の問いに対して私はこう想像します。
肉体を失った魂は、この世界とは別の世界へ向かう、と。
俗に言う、パラレルワールドのようなものです。パラレルワールドとは、この世界から分岐して存在する、無数の別世界のこと。
少し難しい言い回しになってしまいました。分かりやすく説明しますと、人生において、選択をしなければならない場面は無数に迫ってきますよね。
例えばあなたが受験のとき、A高校を選んで合格した世界があるとしましょう。これに対して、一つ上の学力だったB高校を選んでより努力した結果、B高校に受かった世界があるとします。
その世界こそがパラレルワールドです。
つまり、我々は死ぬたびに似ているようで違う世界へ何度も生まれ変わり、『あのときこうなっていたら』という可能性を繰り返しているのです。
さて、今これを読んでいる諸君は「だから何なんだ」「俺たちに何の関係がある」と鼻で笑ったことでしょう。
それで構いません。
ただ、こう考えてみるのはどうでしょう。
私たちが生きるこの世界が、別世界の人々にとっての、死者の国だとしたら。
なんだか体が宙に浮くような、不思議な感覚になりませんか?
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