銀翼春光

 今日は奢るよ。七時にいつもの店で。

 そう言われて私が怪しまなかったわけがない。

 世間話の相手から廃屋の解体まで、街の住人から請け負う仕事は雑多の一言だ。幅が広過ぎるせいで収入は安定しないし、やっと手にした金銭もそのまま酒場に横流しするところまでがひとくさりときている。そんな生活を何年も続けている人間に、他人のぶんまで支払う余裕なんて皆無のはずだ。

 何かが起きたに違いない。しかも、すこぶる悪いことが。

 だから今日は残業を放り出して駅前の店に赴き、やたらと重い引き戸を開ける。待ち合わせの時刻まであと十分ある。今日は何時間待たされようが、洗いざらい事情を吐かせるつもりだった。

「え」

 驚きのあまり入り口で立ちすくむ。カウンターの中央に腰かけた、よれよれのプルオーバーをまとう背中がぱっと振り返る。大きなフードが揺れた。

「よお! 今日はおれのほうが早かったな」

 ミズサワはいつものようににかっと笑い、片手を上げた。

 出迎えた店員が隣の席を示し、私は高いスツールの足元に鞄を放り込む。

「まさか遅刻しないなんてな。明日は真夏日か?」

 今朝から降り続いていた雪は日没になってようやく落ち着いた。天気予報では、今年一番と名高い前線はもうしばらくイーハトーヴに居座るらしい。

「暑いと一層麦酒が美味くなるし、俺にとってはありがたいことだけどな。でも、今日はそれよりもっと面白い話があるんだ」

 黒曜石のように目を輝かせながら言うものだから、切り返す皮肉も浮かばない。代わりにメニューを開いて琥珀色の炭酸を選ぶ。

「お前が呼びつけたせいで今週は終電で帰れるかどうかも怪しくなったんだが、それがちゃらになるくらい面白いんだろうな?」

「おうおう、おいたわしや十六等官さま。すいませーん」

 大袈裟で下手な泣き真似も、断りもせず私の頼んだヴァイツェンをグラスからジョッキへ変えるところも腹立たしい。

「面白いことは保証する。それにうまくすればキタカミ、おまえも残業生活とはおさらばだぜ。まずは聴いてくれよ」

 馬鹿げたことを企んでは悪ふざけを繰り返し、ときには仲間まで巻き込んで、そしてどれだけ怒られても懲りずに笑う。子供の頃とちっとも変わっていない。

 返事の代わりに私はジョッキを掲げ、ミズサワもそれに応じた。かちん。

 

 イーハトーヴの一番の目印は何か。

 そう尋ねられたら、私を含め多くの人がガンシュウ山と応えるだろう。

 島国の北東を背骨のごとく長く貫く山脈、その途中に聳え立つガンシュウ山は名実ともにイーハトーヴの盟主だ。あらゆる峰と河を従え、長い裾野をすべての生き物たちの家として分け与える。王にふさわしい銀の冠を頂く山は、ひとたび口を開けば遠くミツオカの海岸にまで声を轟かせ、魚すら伏して耳を澄ましたと古い伝説にはある。

 そのガンシュウ山には、一羽の鷲が棲んでいる。

 棲んでいる、というのはもちろん喩えだ。春になると積もった雪が融け、山頂付近の複雑な地形と相まって翼を広げた鷲の姿が浮かび上がる。農民たちは昔、これを田植えの始まりの合図としていたそうだ。

「そう言われているよな。巷では」

 ピクルスの皿から真っ白な蕪を箸で摘まんで言う。揶揄うような口調だった。手つかずの人参は私に押し付けるつもりだろうから、摘まみ上げて噛み締める。軽い酸味と歯応えが心地好い。

「なんだよ巷ではって」

「いやいや、純粋な皆さんはご存じないってことさ」

「お前は多少不純過ぎると思うけどね」

 郷土史どころか子供向けの絵本にも書いてある民話を、今更取り上げる理由がわからなかった。

「あの鷲な、ただの模様なんかじゃないんだ。生きてるんだよ」

「はあ?」

 ジョッキを二杯干してもまるで平気そうな顔を寄せてくる。目だけはきらきらと光っていて、楽しそうなのは結構だが、にんにく臭い息だけは勘弁してほしい。いったい何を食べていたんだ。思わず眉間に皺が寄った。

 春夏秋冬、四つの季節は神の管轄だという。

 春の神、夏の神、秋の神、冬の神。季節とは四柱の神の為す奇跡らしい。

 神たちはかわるがわる地上に降りてきて、それに合わせて季節も移り変わる。神にはそれぞれしもべというか眷属というか、もっと身近な表現をすれば部下のような存在が従っていて、そのなかには露払いの役割を担うものもいるらしい。

 ガンシュウ山の鷲と、季節を司る神々。

「神の眷属なのか、あの鷲が」

「察しが良くて助かるね。そう、春の神の使いなんだとさ、あれが」

 フィッシュアンドチップスの衣はまだ油の弾ける音を立てている。ミズサワは大きなひと切れをこちらへ寄越し、自分の皿にレモンをたっぷり搾って続けた。

「ものすごく大きな雪の鷲だよ。翼は真っ白に輝いていて、両の眼は真冬の晴天みたいに透明な青色をしているんだ」

 箸の先で割った魚のフライは、さくりと新雪を踏むような音を立てた。

 ふと、私の脳裏に巨大な影が閃く。

 直視できないほどに眩しく、大きく、翼を広げ空を横切っていく翼。

 確かにそれは、この世のものとは思えないほど美しい鳥だろう。

「春の使いにしては寒そうな格好だな」

「当たり前だろ、露払いだからだよ。春に先駆けて来るんだから冬の気配くらいまとってるさ」

 毎年ガンシュウ山に姿を現し、春を――春の神の到来をくにじゅうに知らせて、雪融けとともに消えていく。それが鷲の役目なのだそうだ。

 では真冬のあいだ、鷲が何をしているのか。

「いよいよ春になると、鷲はどうなる?」

「どうなるって……雪が融けて、消えるだろ」

「その通り。鷲は役目が終わったら山から姿を消す。河の水になって今度は海へ向かう。だから、現れるのはってことだよ」

「まあ、神の使いならいくらでも現れる気はするけど」

「急に勘が鈍ったなキタカミ、もう酔ったのか? 神の使いであっても鷲は鳥の一種だ。なら、他の鳥と同じことをするに決まってるだろ」

 ばしばし背中を叩かれて考えがまとまらない。鬱陶しい手を払い除け、麦酒を啜る。毎年現れる違う鷲、鷲は鳥の一種、鳥に共通する行い。さて。

「卵?」

「そういうこと。雪の鷲の大事なお役目はふたつある。ひとつ、イーハトーヴに春を知らせること。ふたつ、自分の跡継ぎを産み育てることだ」

 話はさらに現実離れしていく。

 雪の鷲は真冬に卵を産む。ここは昔から厳冬の国だ。薄暗く凍てつく日々を、親鳥は卵を温めて過ごす。やがて雛が孵れば慈しんで育て、雪の鷲の親子は冬の終わりを迎える。

「雛もちょうどその頃に巣立つらしいんだ。だから最後に見る親の姿は、使命を果たして河へ融けていくところってことだ。源流もあのあたりにあったはずだよ。さびしいだろうが、まあ神々しい景色には違いない」

 そう言って、ミズサワはふと遠くを見る。

 冬のあいだひとときも離れずそばにいた親が、次第に姿を失い透明な水となり流れていく。きっと雛は最後まで目を逸らさず見送るのだろう。決して忘れないように。今度は自分の番なのだと決意を新たにするように。

 どこかから流れてきた煙草の煙が沁みたふりをして、目を擦る。

 今日は酔いが回るのが早いらしい。

「で、その雛ってのはどこで育てるんだよ」

 ロマンチストの横顔は束の間、問いかければたちまち盗賊めいた笑みが戻ってくる。げんなりするほどに悪い顔だった。

「それだよ。いよいよここからが本題だ」

 浸った感傷がたちどころに干上がって、優秀な酒のつまみとなって消費されたことなど露知らずミズサワは一層目を輝かせる。

「正確には雛ではなく、卵のほうだ。鷲はなんとガンシュウ山で卵を産むんだよ。あの厳しい雪山のてっぺんでな。何もそんなところでなくたって良いと思うが、激しい寒さが雛を鍛えるんだとさ」

「獅子は我が子を、どころの話じゃないな。親子揃ってか」

「なかなかストイックな生き物だろ。春が持つ明るさと暖かさの裏返しってことだよ」

 年中夏のように暑苦しく騒がしいミズサワが言うと、妙な説得力がある。

「で、その卵がどうしたんだ」

「魔法のお宝なんだよ。雪の鷲が産む、氷みたいに銀色の卵がな」

 神の眷属が産む卵は、途方もない魔力を秘めている。

「卵を手に入れたら、そいつは世界を手に入れたのと同じなんだとさ」

 取り上げたジョッキは既に空だった。こびりついた泡が乾きかけている。

 噓偽りないミズサワの視線が頬に突き刺さった。

「なあキタカミ。卵を手に入れてさ、二人で一生遊んで暮らそうぜ」

「そのへんにしとけ。飲み過ぎだ、子供騙しの話なんかしないだろお前は」

「こいつは至って真面目な話だよ。万年十四等官のくせにプライドだけは立派なクソ上司ともこれでお別れだ」

 応えに窮して私は黙り込む。壁際にずらりと並んだグラスがやたらと眩しい。きらきらと、美しい夢物語のようだ。

「馬鹿にも焼きが回ったな」

「幼稚園の頃からこんな有様なのは知ってるだろ、キタカミさんよ」

 結局出てくるのは陳腐な罵りの台詞ばかりだし、にやりと応える姿は言う通りガキのままで、何ひとつ嘘が感じられない。

「おれも便利屋なんて辞めるよ。ここだけの話、四丁目のミヤザワさんちの犬、苦手なんだよね。いっつも顔舐めてくるから」

 駄賃と引き換えに散歩を引き受けている犬――この辺りじゃ有名な、はっきり言えば馬鹿犬――を話に挙げてきて、こちらも力なく笑うしかない。

「あいつやたら引っ張るもんな。しかもミヤザワさん、ケチだし」

「だろ?」

 すかさず店員に手を上げ、目の前に金色の炭酸が現れる。

「まずは前祝いだ。おれたちの華やかな人生に!」

 高らかに打ち鳴らせば、それは試合開始のゴングにも聞こえた。

 ザックに靴、分厚い防寒着に手袋。似合わないと笑われたが半ばむきになって選んだサングラス。山のような買い物袋を車に放り込む。

「何回見ても不思議なんだけど、ほんとに車検通ったのか」

「もちろん。色々アレしたけどね」

「お前なあ」

「大丈夫だって、少なくともおまえを乗せて事故ったりはしないよ」

 ぼろぼろのミズサワの車は過重労働に抗議するようにエンジンを吹かしながら市街地へ引き返す。せっかくの休日を電話で叩き起こされ、少ない給料をはたく羽目になったのはもちろん面白くない。しかし、思った以上に本気のミズサワに心が動いたのも事実だった。私の迎えに来る前に書店に立ち寄ったらしく、山岳ガイドや地図を何冊も見せてきた。

「キタカミは普段から標本集めで山に入ってるだろ。おれも体力には自信があるけれど、まあ所詮は素人だからな」

 ガンシュウ山の登山ルートは昔から確立されている。下手なことをしなければ滑落することはない。

「でも下手なことをしに行くからね、おれたちは。しっかり準備しなけりゃ」

「雪山はともかく、卵泥棒は経験がないよ。どれだけ備えても憂いだらけだ」

「ま、最後は見る前に跳ぶだけさ。なんだってそうだろ」

 いつもの喫茶店で美味そうに煙草を吹かし、結局は楽天さで押し切る。

「ところでキタカミ、卵が手に入ったら何をしたい?」

 急に問われて、ピザトーストに齧りつこうとした手が止まる。

「寝心地の好いベッドが欲しいな。あと、でかい本棚を買いたい」

 少し考えるふりをして、そう応える。返ってきたのは憐れみじみた視線だった。

「ほんっとおまえは願い事が庶民的だねえ。本を仕舞うためだけに家を買うとか、それくらいでっかくやろうぜ」

 呆れた拍子にチーズがこぼれかけ、慌てて口へ運んだ。

「贅沢通り越して無駄だろそれは。いくら金があっても足りない」

「そこはほら、一生使っても使い切れない額を工面すれば良いんだよ。卵の力があればそれくらい楽勝だ」

 卵の力か。

 それがあれば、おそらくは家を買うどころではない私の願いも叶うだろうか。

「ミズサワはどうなんだよ。なんか願い事あるのか」

 話を逸らすつもりで問い返すと、待ってましたとばかりに身を乗り出してくる。

「今建設中のマンション、あるだろ。ばかでかいやつ」

「ああ、川沿いの」

「あの工事を止めさせたいんだ。建てた部分は全部壊して、更地にする」

「は?」

「公園でも作るよ。とにかく誰でも来られる場所にするんだ。ベンチと自販機と、あとはトイレも要るな。それから、樹とか花をたくさん植える。そうだ、休みの日は屋台なんか出せるようにしたら面白いよな? 一緒に昼飯を食べよう」

 長い付き合いだ。何ひとつ冗談を言っていないことくらい、顔を見ればわかる。

「な、良いアイデアだろ。夢持っていこうぜ。せっかくのチャンスだ」

 珈琲をぐっと飲み干して、あくまで晴れ晴れとミズサワは笑う。

 叶うと良いな、とは言わなかった。

 叶ってほしい、と思った。


 そして、迎えた夜。

 晴れ渡った夜空のした、円い月に照らされて冷え切ったガンシュウ山は大きなひとつの氷に似ている。かつて豪華客船を無残にも沈めた氷山のように、冷徹な輪郭が際立っていた。

「鷲が卵を産むのは決まって満月なんだ。まさに、今夜だよ」

 ミズサワの目は月光のもとでますます輝き、いまや燃え立つ石炭の欠片のようだった。

「準備は?」

「できる限りに」

「上等だ。さあ、行こう!」

 ザックを背負った私たちは頷き合って、登山道を歩き始めた。

 雪を踏む。ぎゅう、と足元が鳴く。喉が凍てつかないよう、空気をゆっくりと吸って吐く。耳元で風が騒いで止まない。

 道は濃い青と淡い青で塗り分けられ、月灯りと雪灯りが何度も反射して眩しい。等高線をのろのろと貫いていく。

 何度も立ち入った山といえども、雪が積もれば別世界だ。普段の何倍も消耗が激しい。

 だから最初は、前を行くミズサワの姿がぼんやりとしてきたのも疲れのせいだと思った。店の在庫で一番派手な色と指定して買った登山服の、目に痛いほどの橙色が揺らめいている。

「ミズサワ」

 思わず声を上げて、すぐに気がつく。酸素不足でも疲労でもなく、ミズサワの背中が本当に霞んでいた。

「わかってる」

 返ってきた声は確かだった。ぜい、と大きく吐いた息が白く乱れる。

「わかってるよ。おかしい」

 私たちは既に足を止めていた。二人並んで深夜の登山道に立ち尽くす。

 一面の雪と、空には満月。

「どう考えたっておかしいんだよ、これは」

 指さす先で、野太い声が上がった。

「みんなーっ、こんにちはーっ! 白詰しろつめユリアでーっす!」

 私たちのふた回りほどは年上らしい男性。目下、地上で一番嫌いな人間であるところの上司をなんとなく連想させる見た目で、少々気分が悪くなる。

「今日はね、みんなのリクエストに応えてー、今すーっごくバズってるパフェを食べに来ましたーっ!」

「だろ?」

「うん。おかしい」

 一人で声を張り上げる姿以上に不気味なのは、男性がそこらに散歩にでも来たような服装で、真夜中の雪山に立っていることだ。手には携帯端末を握っている。画面のなかでは男性と似ても似つかない可愛らしい少女のアバターが微笑む。

「ガンシュウ山にも避難小屋、あったよな」

「あるけどパフェは出さないだろ」

 あまりの衝撃に私たちは頭の悪い問答しかできなくなっていた。

 まるで驚くという感情が冬眠に入ってしまったように。

 冬山だけに?

「まずい」

 こんなつまらない、ギャグですらないことを思いつくなんて。状況は深刻だ。

「ああ、だいぶまずいな」

 こちらの気も知らず、ミズサワは呑気な口調で返事をしてくる。

 おそろしいことに、にやにやと笑いながら。

「雪山のど真ん中で、Tシャツ一枚で動画撮ってるおっさんとか絶対ただ者じゃないよ。すげえ奴がいたもんだ。やっぱ世界は広いな」

「そこに着目するお前もただ者じゃないって」

 すぐ思いつく可能性はこうだ。

 実は私たちは既に死にかけていて、最期の幻を一緒に見ているということ。

 視聴者にはボイスチェンジャーによって変換された可愛らしい声が届いているのだろうが、実際に男性が張り上げている声は酒と煙草に焼けて聞くに堪えない。Tシャツの胸には『チャンネル登録者数一千万人突破』と真っ赤なゴシック体が踊る。

 こんな走馬灯があってたまるか。

「もみもみ署長さん、ウルチャありがとー! 愛してる!」

「ウルチャってなんだ?」

「投げ銭みたいなやつ」

「動画で面白いこと言えば金稼げんの? えー、おれもやればよかったな」

「余計なこと言って炎上するだけだよ、そもそも動画観ないだろ」

 あまりにもいつも通りな振る舞いのせいで、死への恐怖という崇高な感情すら萎んでいくようだった。

「あ、ほらあっちも」

 何かに気づいたミズサワが、分厚い手袋に包まれた指を伸ばす。その指し示す方向を目で追っていくと、もうひとつ人影があった。

「距離を置こうなんて言ってごめん。やっぱりきみじゃないとだめなんだ」

「やっとわかってくれたんだね。さびしかった! ばか!」

「ぼくが悪かった。愛してるよ」

 手を差し伸べる男性と、涙目で彼の胸に飛び込む女性。前者はスーツで後者はワンピースを着ている。革靴とハイヒールで登山ができるはずはない。

「泣けるな」

「陳腐過ぎる。ありきたりですらない」

「冷たいねえキタカミは。本人にとってはそうじゃないってこともあるだろ」

 さらりとした口調と裏腹に、その内容は妙に私の耳に引っかかった。

「どういう意味だよ」

「他人の願い事なんて陳腐でありきたりだよ。おれもその通りだと思う。でもさ、キタカミ、ここがどこだかわかるか?」

「どこって、ガンシュウ山だろ」

「そりゃそうなんだけど。まあ、ってことだ」

 ミズサワは静かにそう言い、辺りをぐるりと見渡す。その視線に引っ張られるように私も周囲に目をやった。

 何かの間違いだと思った。あるいは、いよいよ頭がおかしくなったのかとも。

 ――ありがとう、本当に助かったよ

 ――感謝してます

 ――きみのおかげ

 笑顔を浮かべる人々から、繰り返し感謝の言葉を浴びる青年。

 ――悪かった、許してくれ

 ――ごめんなさい、間違ってました

 ――あなたが正しい

 謝罪する人々を縛り上げ蹴り飛ばしている少女。

 ――新作楽しみでした

 ――うちで出版しませんか

 ――今年の受賞者はあなたです

 称賛と紙幣の雨のなか、本を差し出す男。

 ――自分らしいよね

 ――自由に生きられていて良いなあ

 ――尊敬してます

 奇抜な服装に身を包み、自信に溢れた表情で立つ人物。

「ここはさ、夢のなかだよ。夢の叶った夢とでも言うのかな」

 誰もがみな、冬山にいるべき格好をしていなかった。とっくに凍死していてもおかしくない。それなのに心から嬉しそうに、幸せそうに笑っている。

「卵の代わりに終わらない夢を手に入れて、ずーっと見てるんだ。多分ね」

 ガンシュウ山の登山ルートは昔から確立されている。下手なことをしなければ滑落することはない。しかし、それはコンビニのような感覚で山頂へ辿り着けるという意味ではなかった。

 たとえ、世界を捻じ曲げてでも叶えたい願いがあったとしても。

 よく見れば、周囲の地面がところどころ不自然に隆起している。

 思い出したのは博物館で観た展示だった。噴火によって滅びた街。生き埋めになった住民たちの姿。横たわる石膏像を白く覆えば、きっとこんな景色になる。

 慣れない雪山だっただろう。それを承知で、彼らは卵を求めた。

 私たちと同じ、陳腐でありきたりな願いのために。

「足元気をつけろよ、キタカミ」

 ぽつりとミズサワは呟く。言われるまでもなかった。私たちには彼らを連れて帰るだけの力などない。このまま静かに、幸せな夢が繰り返されるのを妨げないように通り過ぎるだけだ。

 私たちは――私は、彼らのようになるわけにはいかない。

 一歩、また一歩と進むたびに、先を行くミズサワの足跡に深い影が宿っていく。あれだけ眩しかった雪道は次第に狭まっていくようだった。いつの間にか風まで吹き始め、新雪の細かい粒子が顔に当たる。足に絡みついたと思えば真正面から突き飛ばしてくる。無理やり進めば踏み込んだ途端膝まで沈む。

 引き返せ、こちらへ来るな。

 そんな声が聞こえるようだった。

「帰れるかってんだよな。今更」

 呟いたミズサワが叩きつけてきた風によろめく。咄嗟に腕を掴むとストックが手首から抜けて深く雪のなかへ落ち込んだ。拾おうと手を伸ばして、既に指先も見えないほど視界が悪くなっていることに気づく。

 ガンシュウ山がいよいよ牙を剥いた。

 殺意すら感じる嵐は私たちを取り囲んで迫り来る。真っ白な暴力に耐えかね、ついに私たちはその場に座り込んだ。

 主よみもとに近づかん。脳裏に過ぎった讃美歌の題名は、乱暴に肩を叩かれて消し飛ぶ。

「おいキタカミ、しっかりしろよ、目閉じるなよ」

「わかってる」

 がちがちに固まった指を強引に開く。もう足の感覚も消えそうだった。

「ミズサワ」

「なんだ」

「本当は」

 舌まで凍りつきそうな冷たい嵐のなか、私は必死に声を張り上げる。

「お前、本当は、なんで」

 固く握り合った手だけが、まだ温かい。

「なんで、卵が、欲しかったんだ」

 むしり取ったゴーグルのした、まっすぐな眼差しが白い闇のなかに灯っている。

「公園の、話、あれ、嘘じゃない、けど、本気でも、ないだろ」

「ばれたか」

 いつもの不敵な笑みが寒さに歪む。

「言えよ。もう、隠す理由、ないだろ」

「キタカミが、しんどそう、だった、から」

 剥き出しになった睫毛が凍っていくのが見える。

「おまえが、今の仕事を好きなのは、知ってる。だけど、働き過ぎだよ。そんな、そんなに、痩せちまって、辛かったよ、おれ」

 骨の目立つようになった手は、強く握られればそれだけ痛む。

「卵とか、世界とか、どうでも良かった。言う通り、だよ。どっかの、金持ちに、売りつけようって、思ってた、最初から」

 血の気を失っていく唇を震わせながら、まだ喋り続ける。

「キタカミ、が、一生遊んで、暮らせる、くらいの、金で」

 そんなことをのたまうから、がちがち鳴って止まない歯を無理やりに、割れんばかりに噛み締める。

「この、馬鹿」

 そんなちっぽけな、そんなどうでもいいことのために。

 そんなにがたがた震えて、そんなに死にそうな顔をしてまで。

「だったら」

 だったら、私の願いはどうなるんだよ?

「悪かった、キタカミ、やっぱり、一人で、来れば」

「うるさい、黙ってろ、生きろ、死ぬな」

 阿呆な口ごと引き寄せて抱きしめる。腕が凍りついて折れても構わない。

 こいつを守れるなら、腕ぐらいくれてやる。

「キタカミ」

「絶対、生きて、一緒に帰るよ。ミズサワ」

 ――そうしていただけると助かりますね

 ばさり。

 風も雪も、たったのひと払いだった。

 残ったのは耳が痛いほどの静けさ。

 ゆっくり吐き出す息も、速いままの脈も、ミズサワがゆっくり顔を上げる気配すらひどくうるさく感じられる。

 見上げると、目が眩んだ。

 あれだけ分厚かった雲が嘘のように、くまなく澄んだ夜空には煌々と月が照る。

 その光が一瞬、途絶えた。

 ばさり。

 輝くような翼が大きく羽ばたき、優雅に折り畳まれる。

 冷たく浮かび上がるのは傷ひとつない爪と嘴。

 強い眼差し、青い両眼。まっすぐに私たちを見据えている。

 ――ようこそわたしの山へ。卵泥棒さん

 声は悠然として、どこまでも深い。

 ガンシュウ山の頂に立つ、巨大な、真っ白な鷲。

 ――よく来た、と言っておきましょう。生きた人間に会うのは久しぶりです

「……久しぶり?」

 未だ顔は真っ青でも、ミズサワは気丈に言葉を返す。

「だったら、さっきの連中は、あんたの仕業じゃないのか」

 ――まさか。わたしの趣味ではありませんよ

 鷲は頭を振った。

 ――彼らの執着はあまりに強く、諦めるということを知らなかった……それが人間という生き物の強さでもあるのは確かですがね。身体はとっくに朽ちているのに、未だに魂だけがこの山から下りられず、ああして同じ夢を繰り返しているのです

 無情な言いざまに反して、一瞬憐れむような光が鷲の目に過ぎった気がした。

 しかしそれは本当に一瞬のことで、次に私たちを見たとき、そこには人の命を容易く奪う冷酷な青色が宿っていた。

 ――ですが、神域に踏み込んだ罰としては申し分ないかと

 吹雪に晒された身では逃げることも叶わない。武器があったところで戦えるかどうか。相手は神の使いだ。吹雪で凍え死ぬか、ばらばらに引き裂かれて死ぬか、どちらかだろう。

「待った」

 覚悟が決まりかけたときだった。

 どこにそんな力が残っていたのか、震える足でミズサワが立ち上がった。私を指差し臆することなく喋り始める。

「おれはどうなってもいい。その代わり、こいつだけは、帰してやってくれ」

「ミズサワ」

「おれが付き合わせたんだ。神は、被害者を罰したりしない、そうだろ?」

 ――おっしゃる通りです。ただし、あなたはここから出られませんが

「構わないよ。こんな綺麗な場所で死ねるなら、悪くないさ」

「ちょっと待てって、何を」

「よく聴けよ、キタカミ。さっきも言ったけどさ」

 そう言って向けてくる表情があまりに静かで、そんな顔は見たことがなくて、私は黙るほかなかった。

「おれには大した願い事なんてないよ。毎日それなりに面白けりゃそれで良い。でもキタカミ、おまえに関しては話が別だ。おまえが苦しまず生きられるようになるなら、全然命懸けられるなって思った。それだけだよ」

 だから、と笑ってみせる馬鹿野郎は、私の幼馴染みは、本当に嘘がつけない。

「まともなところに転職しろよ。街に戻ったら」

 頭より、口よりも先に、手が動いた。

 まともに力なんて入らない。こっちだって、立っているだけでやっとだ。

 しかし私は、意地でもこいつを捨て置くわけにいかない。それこそ、死んでも。

 乱暴に振り回した手は、正確にミズサワの頬を張った。

「この馬鹿」

 なんでこいつに気障な台詞を吐かれないとならないのか。

 なんでこいつは死ぬかもしれないのにろくでもないことばかり言うのか。

 なんで私ばかりがかばわれないといけないのか。

「黙って聞いてれば勝手なことばっかり抜かして、お前はもう少し頭の良いやつだと思ってたよ、こんなに馬鹿だなんて知らなかった、残念だ、本当に」

 震えている足は寒さのせいだけではないくせに。

 どうして、こいつは、私のことばかり想うのか。

「はいそうですかって私が帰るわけないだろ、何が転職だよ、この馬鹿」

 疲れ切った肺を振り絞って叫ぶうち、頭も顔も大袈裟なくらい熱くなっていく。

「かっこつけるなんて百年早いよ、お前はいつも通り馬鹿でいれば良い、お前が能天気過ぎてたまにいらいらするけど、でもそんなの大した話じゃなくて、大体働き過ぎなのは私にだって責任があって、それはお前のせいじゃなくて、だから、いいか、私は、私の願い事は、お前が死んだら意味がないんだ」

 ああ、言うつもりは、なかったんだけどな。

「この先、何があっても、私はお前と友達でいたいんだよ、この馬鹿!」

 この馬鹿、この馬鹿、この馬鹿――

 清々しい木霊が、晴れ渡る夜の雪山に長く長く響き渡って、ゆっくりと消えていく。

 気温は氷点下なのに、頭はのぼせそうに熱かった。

 はあ、と深いため息がやっと沈黙を割った。

「なあキタカミ」

「うん」

「馬鹿って言いすぎだよ。さすがに傷つく」

「ごめん」

 互いに黙り込んで、俯く。この世で一番格好悪い人間は私たちに違いない。

 ――終わりましたか?

 呆れを通り越したまったく平坦な声が降ってくる。ばさばさと乱暴に羽を振る鷲には疲れの色がはっきり浮かんでいて、情けなさが加速した。

 ――まったくお似合いですね、二人とも

 軽く地面を蹴って、真っ白な身体がふわりと浮かび上がる。空中を滑るように近づいてきてまっさらな雪を踏むまでのあいだ物音ひとつしなかった。

 間近で見る雪の鷲は、やはり現実離れして美しい。

 ――気が向いたのでお伝えしておきますが、既に卵は孵化しています。今夜は月が明るくて寝かしつけるのに苦労しましたよ

「……はあ?」

 私たちは同時に声を上げた。

「いやでも、鷲が卵を産むのは決まって満月だって」

「なんで肝心なところだけ間違ってんだよ」

 ――間違ってはいません。ひと月遅かった、という点以外は

「はああ?」

 うっすらと細めた目は、たしかに私たちを見て笑っているようだった。

「あんた」

 再びへたり込んだミズサワが恨めしげに呻いた。

「良い性格してるな」

 ――これぐらいでなければ、神の眷属なんて務まりませんよ

 さて、と鷲は居住まいを正し、今度は厳かに告げた。

 ――あなたがたの罪は本来、命をもって償うべきもの。しかし春の御神は慈悲深くも、その篤い友誼に報いることをお許しになった。生ある限り、この恩義を忘れぬように

 私たちは顔を見合わせ、それから揃って、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます」

 ――よろしい。それでは

 翼が開いた。

 真っ白な、目に染みるほどに眩しく、真っ白な翼。

 ――麓まで送ります。お疲れでしょうから

 おずおずと腰を下ろした鷲の背中は柔らかく、細い羽毛に包まれるとうっかり眠ってしまいそうだ。

 ――しっかり掴まってください、寝たら落としますよ

 鷲は二度、三度と大きく羽ばたき、頑丈な爪で力強く雪を踏む。重力の抵抗はごく小さかった。

 顔に当たる風に耐えながら振り返れば、足跡だらけの山頂が遠くなっていく。

 時折点滅する信号と、まばらに行き交う車のライトが街の寝息を表す。

 寝静まるイーハトーヴは一面の青だった。

 私たちの大騒ぎを知ることなく、みんな青色のなかで眠っている。

 満月の夜、真冬の底、私たちの故郷の街。

 こんな贅沢な遊覧飛行があるだろうか。

 ――綺麗でしょう。このくに

 風を掴み、ほとんど羽ばたかずに大きな弧を描きながら鷲は飛ぶ。

 ――この街を眺めることも、誰かと語らうことも、気持ちを分け合うことも、生きているからできるのですよ

 いつかは春の訪れとともに消える。それを当然の定めとして受け入れ、地上に舞い降りた真っ白な鷲は私たちに、生きている人間に、そう語った。

 ――生きていること。それこそが、一番の宝です

 ふと視線を感じる。ミズサワが、こちらをじっと見ていた。

 何も言わない目のときこそ、私の親友は本当に饒舌になる。

 だから私も、何も言わずにただ頷く。



 おれ、生きて帰れたら人参を食べられるようになるよ。約束する。

 その言葉通り、私たちは平日の真昼に待ち合わせた。

 案内された店は川沿いの小さなビルの二階にあった。ガンシュウ山に棲む雪の鷲の話をミズサワが知ったという、ある意味始まりの場所だ。

「いらっしゃいませ」

「予約してたミズサワです」

「お待ちしておりました。どうぞ」

 厨房から出てきた店員に窓際の席に案内された。今日も良く晴れている。川と住宅の向こう、ガンシュウ山が今日もはっきりと見えた。春を知らせる鷲の姿は、既にない。

「本当にあそこに行ったんだな、おれたち」

 たったひと晩のことと思っていたのは私たちだけで、街では登山客が一週間も行方不明になっていると大騒ぎになっていた。山中をくまなく探しても痕跡すら見つからず、いよいよ絶望的と思われたところに二人揃って元気に現れたから、今度はおかしな噂が立ってしまった。

「そうだ、これ。なかなか面白いよ」

 ミズサワが差し出したのは数日前に地元の新聞だ。真冬の雪山、誘拐、神隠し、などなど見出しに飛び交う身勝手な単語に頭が痛くなる。

「こんなことで名前を知られたくなかった」

「そうか? どっかに取材してもらおうぜ、エッセイとか書いて印税生活だ」

「ほんと前向きだよなお前は」

 もちろん警察から事情聴取はされたが、ガンシュウ山の雪の鷲が、などと言うわけにはいかない。必死に誤魔化しながら曖昧な話を繰り返すうちに遭難による錯乱状態として片付けられた。二人とも消耗していたが健康そのもの、事件性を示すような証拠もついぞ見つからない。要は、これ以上調べても時間の無駄だと判断したのだろう。

 ただし私のほうはお咎めなしとはいかなかった。職場からは休暇を取るように命じられ、家族には散々咎められた。特にひどかったのが母だ。嫁入り前の娘がとか、女が雪山なんて登るんじゃないとか、随分理不尽なことを言われた。

 友達と馬鹿なことをするのに、性別がどう関係するのかさっぱりわからない。

「相変わらず面白いよな、おばさんは」

 ミズサワはさっそく麦酒をあおりながらけらけら笑う。小さい頃から私の母と折り合いが悪く、あるとき堪忍袋の緒が切れて尻を蹴飛ばしたことがある。実に痛快な前科を踏まえれば、笑い飛ばしてもらうだけで充分だ。

「お待たせしました」

 料理が届く。ふっくら炊けた飯のうえには崩れるほどに柔らかく煮込んだ牛肉、上品な焦げ目をまとった野菜、ワインの香るたっぷりのソース。

 ミズサワは鮮やかなオレンジ色の人参をフォークで刺し、目の高さに掲げた。

「今日は代わりに食べないからな」

「わかってるって」

 しげしげと見つめてから、決心したように口に運ぶ。ゆっくりと顎が動くのをしばらく眺めていると、やがてごくりと飲み込んだ。

「……美味い」

「本当に?」

「うん。美味いよ。なんか、思ったより甘い。あとほくほくしてる」

「そりゃよかった」

 長きにわたる偏食をひとつ乗り越えた笑みは悪くない明るさを帯びていた。

「気に入っていただけて良かったです」

 店員が水を注いでくれる。グラスを持つ手はすらりと指が長く、色白だった。

「今日は、お休みですか?」

 そう問いかける声まで涼しい。スプーンを使いながら応えた。

「ちょっと冒険をしてきたので、その休暇です」

「冒険? おまえがそんな言葉使うとはな」

「でも、それ以外言いようがないだろ」

 言い合う私たちを穏やかに眺めながら、店員は続ける。

「楽しかったんですね」

 シンプルな言葉が気に入って、私はミズサワを見た。

 きっと二人とも同じ表情を浮かべていたと思う。

「はい」

 店員はにこりと笑って、開け放った窓に近づいた。

「なら、母も喜んでいると思います」

 瞬きした目に青い光が走った。

 小さな羽ばたきが遠ざかる。

 窓辺にはふんだんに陽射しが降る。

 その光のなかを、小さな影がひとつ飛んでいくのが見えた。

 たんたんたん、と誰かが足早に階段を上がってくる。

「すみません、お待たせして!」

 扉を開けて入ってきたのは、日に焼けた快活そうな男性だった。私たちの机を見て驚いたように声を上げた。

「これを回収しないといけなくて……ってあれ?」

 古びた真鍮のランプ――ガラスの火屋の中身は蝋燭や灯芯ではなく、丸っこい三日月だ――を抱えた男性がきょとんとする。おそらく、彼が店主だろう。

「お先にいただいてました。美味しいです」

「ありがとうございます……いやいやそうじゃなくて、さっき誰かいました?」

「さあ? ま、不思議なことも起こりますよ。春ですし」

 おどけるミズサワにつられて、私も噴き出してしまう。

 不思議そうな顔の店主をよそに、私たちは穏やかな春の終わりを笑っていたのだった。

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