2.5節 幕間
第17話 謎の人?
場所は変わって,北の果ての酒場.外は,雪がしんしんと降っていた.
酒場は凍り付いていた.
「俺は勇者なの?分かる?その俺が,相手をしてあげると言ってるわけ.感謝して頭を下げろよ.聞いてるのか?」
レプリカのそれを本物だと信じているその次の勇者は,フールは酒場で酔いながら,一人の美しい生物に絡んでいた.
スタイルが良く,美しい金色のロングヘアーで赤色の目のその人物は,雪が降るその場所とは似つかわしくない薄着の修道服に身を包んでその場の空気を全く読み取れていないのか,ゆっくりとお酒を飲んでから,グラスを置くと
「……勇者?私は,君を知らない.今は勇者は一人なはず」
そう小首を傾げた.
「何を言ってるんだ?女.勇者はこの国に今は二人いる.あっちは,まあ弱っちいから,確かに勇者って言われたら俺一人かも知れないが.」
寄っているフールはそう言って笑ってた.
美しい人物は,数秒考えこんで,
「???大丈夫?何を言ってるの?」
そう,首を逆に傾げた.
「俺は勇者だぞ.」
「お酒美味しい.……みんな飲めば良いのにお酒.」
美しい人物は,フールの言葉を無視をしてお酒を飲み始めた.
その光景で酒場の温度は更に下がった.
静かな空気な中で,店主が気を使い,小さな声でその美しい人物に声をかけた.
「お客さん.その人は,勇者なので,その,そんな扱いをすれば.お客さんが危ない.大丈夫,俺も上手く逃げれるように協力するから.」
「?勇者じゃないわよ.何を言ってるの?勇者は,ここにいないもの.」
美しい人物は不思議そうに首を傾げて一定のトーンでそれなりの声のサイズで言葉にした.普段の酒場なら周りの声にかき消さるが,今は事情が違った.静かになっていた酒場では彼女の声はよく響いた.
その言葉に
「……」
酒場が静けさに包まれて数秒後,酒場の人々は覚悟を決めた.
彼ら,彼女らはフールの横柄な態度を我慢して過ごしていた.勇者だからと思って我慢していたが,今,それに向かって平然と意見を言う女性を見て,惨めな気持ちになり,勇気を持ってフールにヤジを飛ばすことにした.
「そうだ,勇者なら前線で戦え,何でここでくつろいでる」
「ふざけるな.出ていけ.」
「にせもの」
そんな声が酒場中に響き渡った.
「お前らが勇者の俺に,偉そうに」
勇者はそう叫ぶと剣を抜き,この元凶と状況を作り出した,美しい女性に向かって攻撃をしようとした.
周囲はその光景に焦っていたが,攻撃されそうになっている美しい女性は落ち着いていた.
「噓つきはダメ.」
美しい女性は,指を振り小さくそう呟いて,お酒を一口飲んだ.
次の瞬間,フールは後方に吹き飛び,壁に激突すると気を失った.
「……」
酒場は違う意味で静けさに包まれた.
勇者が何故か何も出来ずに倒れた様子に酒場にいる人たちに見えた.
「そろそろ,行かなきゃ.お金は?」
「代金は結構です.」
店主はそう言うと,小さく頭を下げた.
「ありがとう,君に幸」
美しい女性はそう言うと指を振るった.
「……その,お客さん.どうしてこんな寒い土地で薄着で?」
「うん?首都から東に行こうとして間違えた.」
美しい女性は首を振りそう笑った.女性は方向音痴であった.
「……地図を持っていきますか?」
「ありがとう」
美しい女性はそう言うと地図を受け取った.受け取った地図を逆さに見ていたので彼女が目的地にたどり着くには時間がかかりそうだった.
美しい女性は外に出ると雪が肌に触れると,小さく震えた.
「寒い,でも雪は綺麗.」
美しい女性はそう言うと小さくノビをして
「早く行かないとアリエス困ってるはず.でも,久しぶりだから迷うのは仕方ない.」
そう呟いて歩き始めた.
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