第11話 ただの日常
朝起きて、庭のプチトマトを収穫する。
赤くて艷やかでかわいい。
リーフも小さいトマトならいけるといって収穫を楽しそうに手伝ってくれてる。
あ、そうだ、せっかく納豆と豆乳を買ってきたし、アレを作ろう。
私はそこそこの数のプチトマトをザルの中に収穫し、台所に向かった。
用意するのは豆乳、納豆、砂糖、カルキ抜きした水か井戸水、そしてジップロックとペットボトル。
「ジップロックに入れた納豆を潰す……滑る! 豆乳の中の納豆の粒が!」
『せめてひき割りにすればよかったのに』
「ほんとにね! うわ、納豆こぼれた!」
ジップロックからペットボトルに納豆混じりの豆乳を移す作業でややミスった。
『ああー、もったいない』
「そうだけどシンクに落ちたのは諦める! えーと、納豆農薬は1日一回軽く振る、温かい場所で2、3日放置する。室内でもいい。完成したら100倍に薄めて散布」
私は今、いつぞや動画で見た手作り無農薬の農薬をメモを見ながら作っているのだ。
土もふかふかになり、納豆菌が他の悪い菌を寄せ付けないらしい。
「鈴先生、何してるんですか?」
「庭のブチトマト畑と花壇に納豆菌の手作り農薬を使おうかと」
そう言いながらペットボトルを振る私。
納豆菌のために酸素を回すのだ。
「それ、納豆以外は何が入ってるんですか?」
「納豆1パック、砂糖一匙、無調整豆乳200ml、それと井戸水で終わりよ」
「へえ。ところで原稿は終わったんです?」
「うっ、昨日はお出かけして疲れて寝てしまったから、ご飯の後にやります!」
「私は昨夜2話分書いたのでトーン作業とかなら手伝いますよー」
「えらいなー。ありがとう! 今月の家賃は無しにしとくね!」
「あざす! ところで朝食は私が作りましょうか?」
「ありがとう!」
「そんでこのプチトマトはサラダに使っても?」
「もちろんいいよー」
朝食はひなたが作ってくれたトーストにベーコン入りの目玉焼きが乗っかったやつとトマトとツナとレタスと粒コーン入りのサラダとヨーグルト。
「美味しそー! いただきます」
『いただきます!』
「簡単なやつですが。まあ、朝食ですし」
「本気出すとすごいの?」
「私が本気出すと肉を焼きまくりの焼き肉パーリィになります」
焼き肉! つまりそれはほぼ焼くだけ!
「それはほぼタレの力で食えるやつ〜!」
「ワハハ!」
思わず笑った。
いや、多分冗談だよね。
うなぎが捌ける人だし。
『いいお肉を使えばなおいいですね!』
コロポックルの鋭いツッコミ!
「が、がんばりますぅ。もっと売れるように……」
しまった!
ひなたがしゅんとしてしまった!
「ま、まあでも書籍化してるだけでも凄いんじゃない? ブックマーク10もつかない人も世の中にはいるらしいし」
「よほどニッチなものでも書いているんでしょうかね」
「最近の売れ筋とはかけ離れているのかもだし、書く人が多すぎて埋もれるんでしょうね」
『かわいい妖精の話を書くといいです! 時代は癒やしを求めているのですから!』
「そうかもねー。おじさん主役の話の次は妖精ものにしようかな」
そんな話をしながら食事を終えてから仕事に戻った。
私の作業はまだ背景のペン入れが残ってるけど、とりあえずペン入れが終わったコマから消しゴムかけとトーン作業をしてもらった。
ちなみにリーフも消しゴムかけや削ったトーンカスを集めて捨てる作業をしてくれてる。
「俺、この原稿が終わったらメダカの仲間を増やしに行くんだ」
死亡フラグか!
「終わる前に行っていいのよ、ひなたは」
「ありがとうございます。どのみち夕方に会うことになってるので」
「誰と?」
「この辺でメダカを趣味で育ててる人です。安価で売ってるやつをネットで見つけたので、メールでやり取りしました」
「お迎えするのは改良メダカ?」
「はい、写真で見たらキレイなのいました! そのうち原種メダカも欲しいですけど」
「なるほどねー」
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