第5話 うなぎの仕掛け
夕方になった。
「ちょっと川の様子を見てくる」と、ひなたとリーフがのたまうので、
「そんな小さな体で大きなのが釣れてたら引っ張るのも大変でしょうし、私も同行する」
ザシャア! と、かっこつけて登場する私。
今日は川行きなんでフリフリ服はやめてジーンズ履いてお出かけよ。
「先生優しい! 服装も空気読んでる!」
当然よ!
『お気遣いありがとうございます』
これにはリーフもにっこり微笑んだ。
最近は陽が長くなって、夕方も冬と違ってまだ明るい。
ひなたはチャリのかごに小さいバケツ、後ろにクーラーボックスをくくりつけた。
リーフはひなたの胸ポケットの中にいる。
私も今日は自分のというか、おじいちゃんが使っていた古いチャリで行くし、網とかも昔おじいちゃんが使ってたやつを持っていく。
私達はしばらくチャリを漕いで走り、そして川に到着した。
川は夕陽の照り返しでキラキラと輝いてた。
綺麗。でもまだふつーに暑い。
「あ、なるほど、ペットボトルが浮いてるね」
仕掛けが視認できた。
バケツや伸び縮みする網をチャリから降ろしていざ、確認。
「私が糸を引っ張りますね」
指ぬきグローブを装備したひなたが張り切っている。
「やっぱりこれ小さなコロポックルが糸引くと大きなカブを引っ張るレベルで大変じゃないの?」
思わず絵本で見た様子を思い浮かべた。
『いざとなれば念力補助を使う予定でした』
「念力とかあったの!?」
サイコキネシス!?
『でもかなりパワーを消耗するので正直代理は助かります』
へーとか言いつつ、ひなたが仕掛けの糸を引っ張ると、最初はスカだった。
「無念! だが俺達の戦いはこれからだ!」
などと叫んでる。
でも確かに仕掛けはまだ六つある。
「あそこ怪しい! 糸が変に引っ張ってる感じ!」
『むむ、あれは! なにかがかかってます!』
マジで!?
ひなたが、糸をせっせとたぐり寄せたら……
「残念! ナマズでした! 先生これ食べます?」
「まあ、食えるっちゃ食えるかもだけど、いらないよねえ」
「はい、ではこいつとはこれでお別れ」
ナマズはリリースしてもらった。
「さて、次!」
『むむ! あれはかかってます!』
「またナマズじゃないでしょうね」
などと危惧していたら、
『私の勘だと当たりです!』
マジで!?
ひなたがワクワクしながらたぐり寄せたら!
「きゃ~っ! やった! リーフちゃんやったよ! マジでうなぎですよ先生!!」
「でかした! しかも結構大きい!」
さて、お次は……スカ! 餌だけ取られてた!
さらに次の仕掛けの場所に移動すると……!
『むむ、これはいますね!』
「リーフちゃん、マジで!?」
『これはうなぎ!』
「エクセレント!」
うなぎ二匹ゲット!
スカが2回、ナマズ1(リリース)、うなぎ2匹、さて次は……
『かかってはいますね』
ひなたが確認してみると、
「多分でかめのフナ!」
「ひなた、フナは食べないからリリースして」
「はい! おさらばえ……」
ひなたは針を外して某ドラマの遊女の真似をしてた。
「そしてラスト!」
『あれは、かかってます! 高級食材が!』
おおっと、思わず期待したけど、ひなたがたぐり寄せたそれは……
「マジで高級食材! スッポンでした! 捌けないから人にあげます!」
「分かった、あ、ひなた、あそこセリとクレソンもあるよ」
流石水辺!
「やったー! ただ食材!」
皆で、セリとクレソンも採った。
そんなわけで色々ゲットできたとは言え、自分等で捌ける自信がないスッポンは日本料理屋に持って行く事になった。
だけど店の前で少し躊躇する。
私は田舎でゴスロリやらピン◯ハウスやらを着る変人だと思われてる気がするので。
「と、とりあえずここに住んでた住人の孫の私も行った方がいいわよね?」
「大丈夫です! 私が行きます! 高野さんのお孫さんの友人って言ってきます!」
裏口で待っていたら扉越しに声が聞こえた。
「あらぁ~、高野さん家のお孫さん?」
「その高野さんのお孫さんの友人です! 実は川でスッポンを釣ってしまったので引き取っていただけたらと! せっかく高級食材なんで!」
「あー、なるほどね!」
しばらく後、コミュ力の高いひなたがラップをかけた紙皿を手に戻ってきた。
「先生、リーフちゃん、スッポンあげたら唐揚げ八個とサイダー二本ももらいました!」
「やったわ!」
『それは素晴らしい成果です! スッポンで唐揚げとサイダーが釣れるとは』
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