第5話



「それなんだけど…」


 瑞穂の顔が、恥ずかしそうに赤くなりました。


「実はね、日本との学期の差で、私まだ中学卒業してないの。だから、日本では高校生だけど、まだ中学生のままなんだ…。だから一緒に行くことになるよ。もう転入の手続きしちゃったしね」


「え~~?!」


 三人が驚くのも無理はありません。日本では16歳になって中学校にいるということは、よほどの事情がない限りありません。でも、そんなところでも、彼女が外国に行って来たんということが実感できます。


「そっか~。じゃ初めて一緒に通えるんだね」


「うん。受け入れてもらえるか不安だけどね……。どうしても意識しちゃうだろうし……」


 三人は、瑞穂の不安が手に取るように分かりました。


 つぐみたち三人も、初めてこちらの学校に転校してきたときは、それはもう不安だらけでした。


 でも、それは今となってはどこに行ってしまったのか。さおりもすっかり周囲に溶け込んでいました。


「大丈夫だって。最初のうちはちょっととっつきにくいかもしれないけどね。そうだなぁ……。入り方だよね」


「私の時にはまなみちゃん達がいてくれたから平気でしたけど」


「ねぇ、それじゃ、瑞穂ちゃんにも手伝ってもらおうよ」


 つぐみの一言で、二人ははっと気が付きました。


「そっかぁ、ぴったりだぁ!」


「そうかぁ。それならみんなも瑞穂ちゃんのこと受け入れてくれるだろうしね」


 きょとんとしている瑞穂に、三人は秋の学校祭のことを話しました。


「だから、とにかく人数が足りないの。瑞穂ちゃん料理も上手だし、是非お願いしたいなって…。それに瑞穂ちゃんがそこで頑張っていれば、みんなもからかったりしないだろうから」


 三人の話が終わると、瑞穂はほっとしたように顔がほころびました。


「そんなこと、相談するまでもないのに。いいよ。メニューとかはまだ決めてないんでしょ?」


「うん…。何が簡単に作れるかなぁって…。家庭科室で作るからお家のオーブンとやり方違うからね…」


 つぐみのお菓子づくりの先生は瑞穂でした。昔は、お休み毎に瑞穂はつぐみにお菓子の作り方などを教えて帰り、次に会うまでにつぐみはそれをきちんと作れるようにしていたので、そのレパートリーは多彩でした。それに、瑞穂と会えなくなってからも、彼女はいつも新しいメニューを考え出していたので、クラスの中でも、お菓子だけでなく料理の腕にかけてはつぐみの右に出る者はいませんでした。


 そこに瑞穂が加わるというのですから、つぐみの唯一の不安は吹き飛んでしまったのです。それに3年生の出展の中で一番手間がかかる喫茶店チームにすすんで加わるというのですから、彼女の株が下がることはありません。


「ここにいてもなんだし、三人とも家に来ない? 誰もいないからがらんとしてるけど……。お昼ご飯くらいはご馳走してあげられるから」


 瑞穂が準備をしている間に、まなみは両親に手紙を書き、さおりはお家に戻って遊びに行くことを伝えました。

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