第4話
「いつ来てくれたの? ごめんなさい。ずっと忙しくて挨拶にも行けなかったね……」
「この間ね、帰ってきたんだよ。ずっと外国にいたから」
「えぇ?」
瑞穂の意外な言葉に、二人は驚きました。何度か手紙をつぐみが出しても、返事が返ってこないわけです。
「でね、まだ両親は二人とも外国にいるの……」
彼女は少し寂しそうな顔をしました。
そこにようやくバスがやってきたので、三人はとりあえず、さおりの待つ二人の家に行くことにしたのです。
さおりは突然やってきたお客様に驚いた様子でしたが、瑞穂の性格も手伝ってすぐにうち解けられるようになりました。
「あの最後の冬休みのあとにね、私すぐに出発になっちゃったんだ……」
本当なら、三人でいろいろ相談をするはずだったのですが、それどころではなくなってしまったので、つぐみは急いでお茶の用意をしました。
つぐみとまなみは、最後に会ってからの2年半の間のことを聞きたがりました。もちろん、瑞穂以外の三人は外国に行ったことなどありません。
「いろいろあったよ。旅行にもたくさん行ったよ。この辺りと変わらない森もたくさんあったしね」
「どうして、瑞穂さんだけ先に帰ってきたんですか?」
さおりの言葉に、瑞穂の顔は寂しそうに変わりました。
「ホームシックなのかしら……。なにも手に着かなくなっちゃったの。友達ともなかなか遊ぶって訳にもいかなくて。そんなときに、お医者さんから一度帰国させてみたらどうだろうって話があって、それで私だけ帰ってきたの。でも、他に行くところがなかったから、あそこの家に戻ってくることになったの」
三人は、寂しそうに語っている瑞穂を気の毒そうに見ていました。
「外国行くって、みんなうらやましそうに見えるけどね……。本当は辛いんだね」
「でも、たくさんの経験はしたよ? 学校も現地の学校に行ったし。未だにあまりしゃべったり出来ないけどね…。でも、最初は夢中だったけど、突然帰りたくなっちゃったんだ」
まなみたちが知っている瑞穂は、もっと余裕があって、何が来ても落ち着いてこなすという印象でした。それなのに、今目の前にいるのは、寂しさのあまり、自信をなくしてしまって、悲しそうにしょんぼりしている女の子だったのです。
「瑞穂ちゃん、元気出して。もう寂しくないよ。私たちだって、もういるし?」
「うん、そうだね……。帰るって言ったときに、昔のお家には帰れないって分かって、でも、この町ならみんなもいるしって、説得しちゃった」
さおりの前で、初めて瑞穂は笑顔を見せました。
「学校はどうなるの?」
まなみは心配そうに言いました。この町にも高校はあるのですが、バスだけでは行けないので、電車を使うことになります。そうなると、二人がいつも乗っていくバスでは間に合いません。せっかく戻ってきたのに、一緒に通えないのでは寂しいと思ったのです。
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