第6話



 夏休みの最後の日曜日、学校の宿題もその日で全て終わらせ、つぐみが瑞穂にお菓子の作り方を教えてもらってからお茶にしていると、日が傾く頃に空がだんだん怪しくなってきました。


 天気予報でも確かに夕立があるだろうと言っていましたが、ずいぶん規模が大きそうでした。


 心配になって三人が外に出ると、つぐみはすぐに感じ取りました。


「今夜はきっとひどい嵐になるよ…。もうすぐ雨が降ってくる!」


 すぐに帰り支度を始めて、荷物を持って外に出ると、雲はますます厚くなり、今にも降り出しそうな雰囲気が辺り一面に漂っています。


 こういうときは、小鳥たちも安全な木などに非難してしまい、聞こえるのは蝉の鳴き声だけでした。


 川縁まで見送りに来てくれた瑞穂への挨拶もそこそこに、例の置き石で小川を突っ切り、森を大急ぎで走り抜け、お家の玄関にたどり着いたちょうどその時、大粒の雨が降り出してきました。


「滑り込みセーフ!」


 まなみが叫んだのもつかの間、雨の勢いはどんどん増して、雷まで鳴り出しました。


「あと5分遅かったらアウトだったね」


 テレビをつけると、ちょうど夕方のニュースで天気予報をやっていて、その版は嵐になると伝えていました。おまけに雷と大雨の注意報のおまけまでついています。


「瑞穂ちゃん濡れなかったよね?」


 つぐみがとりあえず瑞穂に報告の電話をかけていました。


 彼女もあのあと、すぐに家中の窓を閉め終わった時に降り出したと言うことでした。


「夏の終わりの嵐だね。時々あるからね」


 まなみたちはいつもお父さんもお母さんも夜になってからでないと帰ってこないので平気でしたが、瑞穂の両親はたまたま町に出かけていて、一人でしたから、これだけ雨が降り出して、雷まで鳴り出したのでは不安で仕方ないでしょう。


 夜になっても、その嵐の勢いは収まるどころか、激しさを増していきました。


「こりゃ凄い嵐だ!」


 つぐみたちがいつも通り夕ご飯の準備を終えると、いつもより早めに引き上げたお父さんとお母さんが帰ってきました。


 毎年、この嵐が何度もやってくると、少なからず森の中では被害が出てしまいます。一般の道路で被害が出なければいいのですが、落石や倒木などが発生すると、その復旧には時間がかかってしまいます。


「何もなければいいんだがなぁ…」


 早めに晩ご飯を済ませると、お父さんは万一に備えて用意をしはじめ、つぐみたちはお部屋に入って休むことにしていました。


 雨はますます強くなり、雷も多くなってきました。


「明日お天気になるといいね」


「うん……、ちょっと怖い」


 苦手な雷がこれだけたくさん鳴ってしまっては、さすがのまなみも怯えてしまっています。


 寄り添うようにベットで休もうとしたときに、突然ドーンという凄まじい音がして、窓がビリビリ震えました。それどころか、電気も消えてしまいまったのです。


「キャーッ!」


 幸いに彼女たちの部屋には停電になると点く明かりがあったので、真っ暗にはなりませんでしたが、ただでさえ怖がっていたまなみにとっては、最後の追い打ちをかけられてしまって、つぐみにしがみついたままガタガタ震えています。


「ねぇ、まなみ。燃えてる!」


「えっ?」


 つぐみが窓の外を見ていて緊張した声を出しました。


 お部屋が暗かったので、すぐに気がついたのです。少し離れた山の上の方で火の手が上がっているのが見えました。この雨の中で燃えているのですから、今の雷が落ちて火事になってしまったようなのです。


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