第4話



 翌朝、二人が目を覚ますと、夜の間にまた新しい雪がうっすらと積もっていました。


 昨日の夜が遅かったせいか、二人とも眠そうに朝ご飯を食べ終えると、急いで身支度を済ませました。


「まなみ、置いてくよぉ」


「あーん、待ってよぉ」


 二人が急いでいるのは、もちろん、今日から一緒に通うことになるさおりを迎えに行くためです。


 二人がお隣の家から見える場所までくると、さおりが待っていたように出てきました。


「おはよ、少し急がないとバス来ちゃうかも」


 二人だけなら、この走り慣れた雪道も大急ぎで走り抜けられるのですけれど、今日はそうも行きません。


「しばらくはもう少し早く出なきゃダメだね」


「お姉ちゃんと二人だけだったからね」


「さおりちゃん、こんなに急いで体は大丈夫?」


「はい、大丈夫です。毎朝こうなんですか?」


 さおりは今日は調子がいいのか、これだけ急いでもまだ余裕があるみたいでした。


「いつもはこんなに急ぐ訳じゃないんだけどね……。昨日遅かったから……」


「お姉ちゃんが起きなかったんでしょ?」


「まなみだって、目覚まし鳴っても起きなかったじゃない」


 二人で言い合いをしている内に、いつものバス停に着きました。幸いにもまだバスは来ていないようです。


「これに乗り遅れると遅刻決定だからねぇ」


「あ、音が聞こえてきたよ」


 程なくして、山の中に点在している集落をつないで走っているバスがやってきました。


 この辺りでは、自宅に自家用車を持っていることが普通なので、バスもあることはあるのですが、その本数も多くありません。


 少し離れた町にはスキー場があり、二人が通う学校がある町も夏場は観光のお客さんがやってくるものの、両方に鉄道の駅ができたので、バスに乗るお客さんが減ってしまったのです。冬の間、雪が積もってしまうと自転車というわけにも行きません。この町へ出るバスは本数が少なくても二人には貴重な足になっているのです。



 三人が乗り込むと、バスはすぐに動き始めました。お客さんは学校に向かう学生で、半分くらいです。


 最近はこの山間の町も過疎が進んでしまい、とりわけ子供たちの数も減ってしまっています。それでも、ここはまだ町役場があるだけ、学校が残されているのです。


 本当に人数が少なくなって廃校・統合になってしまうと、今度は列車で通うことになるので、この辺りではバスよりも列車通学の方が多いくらいです。


「今年はねぇ、春が遅いかも知れないよ。春休みになってもしばらくは雪が降る日あるかも知れないね」


「ずっと聞こうと思っていたんですけど、お二人って、いつからここに住んでるんですか?」


 さおりは小さな声で隣に立っているまなみに聞きました。


「んーと、小学校の4年生からだから、もう4年くらいになるのかな? なんで?」


「雰囲気が、昔は都会にいたんじゃないかって思ったんです」


「そうだよ。もともと都会育ちだもん。でも、今はもう体が戻れないかなぁ……」


 まなみは、二人が体を悪くして、この土地に移り住んだことを話しました。


「だから、さおりちゃんの不安な気持ちが分かるんだよ。でもきっと大丈夫だよ」


「うん……」


 そうこう話しているうちに、バスは学校の前に到着しました。


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