第2話
日曜日の朝、まなみが新聞を取りにポストへやってきたときのことです。ふと気配がしたので、横を見ると、昨日窓から見えた女の子が、やはり同じようにポストに取りに来ているところでした。
「やっぱり、まだ慣れていないんだなぁ…」
まなみは、昨日また積もった雪をポストから落としながら見ていました。
やはり、まなみもここに越してきて初めての冬は、同じように歩くのもやっとだったのです。
お隣の女の子も、ようやくポストから新聞を取り出すと、お家の方に戻ろうとしました。
でも、その時、
「危ない! 気を付けて!」
まなみはとっさに叫びました。ちょうど女の子の足下には、コチコチに凍った石の板が雪の下に隠れているのを思い出したのです。
「えぅ?」
その子は突然の声と、足を載せた所がツルツルなのとで、バランスを崩し、ばたっと倒れてしまったのです。
まなみは大急ぎで、倒れた女の子に駆け寄りました。
「大丈夫ですか?」
まなみがそばまで近寄ると、その子は恐々と起きあがりました。
そして、雪の中を走ってきたまなみを脅えた目で見上げます。
「ねぇ、大丈夫?」
まなみは起きあがった女の子の隣にかがんで手を差し出します。
「え? えぇ」
女の子はそこまで言うと、ゆっくりと周りを見回します。
まなみはできるだけ女の子を脅かさないように優しい口調で話しかけました。
「昨日、おじさんから聞いたけど、引っ越してきたんでしょう?」
「はい…。昨日外でお話ししていた方ですよね?」
まなみはその子の手を引いて立ち上がらせました。
「私は江原まなみ。私たちお隣さん同士ね」
「あ、わたし…、春名さおりと言います…」
女の子がそこまで言ったとき、お家の玄関が開いて、その子のお母さんが出てきました。
「さおり、雪の上は気を付けなさいって言ったのにねぇ。こちらの方は?」
「江原まなみです。はじめまして」
まなみは頭を下げます。
「江原さん? あ、お隣さんね? よろしくね。 もしよかったら、今日お時間あるかしら?」
「ありますけど…」
「それじゃ後で来て下さらない? さおりもこっちの知りたい事あるでしょう?」
お母さんは二人の顔を交互に見ながら言いました。
「でも…、まだお荷物が大変じゃないですか?」
「大丈夫。あら? お隣さんは確か二人姉妹って聞いていたけど?」
「つぐみお姉ちゃんですか? まだお家にいますけど…」
「じゃ、一緒に来てくれるかしら?」
さおりは事の成り行きに、少々びっくりしています。
「本当に大丈夫でしたらいらして下さいね」
「大丈夫です。あとでお姉ちゃんと来ます」
「それではお待ちしてますね」
お母さんはさおりを促すと、ゆっくりお家の中に戻っていきました。
まなみは大急ぎでお家に帰ると、自分の部屋で本を読んでいるつぐみの所に飛び込みました。
「ねぇ、さおりちゃんのお家にお呼ばれしてるよ!」
「え? さおりちゃんて誰なの?」
つぐみの予想しなかった返事に、まなみは一瞬固まりましたが、すぐに大笑いしてお隣の女の子のことを話しました。
「ふぅん。それじゃ素直にお呼ばれしようか? さっき作ったクッキー、もう冷めてるでしょ? あれを持っていきましょ」
つぐみは妹に服を出してくれるようにお願いすると、部屋を出てキッチンに向かいました。
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