第14話 絶望の焔
その頃エーデルとラキナ。
「はぁはぁ…化け物じゃないの…どんだけ魔法使えんのよ…」
「それはこっちの台詞よ!アンタ防御ばっかりして全く進まないじゃない!」
エーデルとラキナは現在バトル中である。
しかしエーデルのよくやってる戦法。防御しまくって相手をバテさせてから攻撃する戦法はラキナに通じないのである。
彼これ彼女達は1〜2時間程対峙してる。しかし大概の者ならば連続で使用すれば魔力切れを起こしてもおかしくのに対してラキナは現在も魔法を放っているのだ。
「"
「"光の
またもや放たれる攻撃魔法をエーデルはバリアを張って耐えた。
「な…何よ…なんでこんなに魔法が使えんのよ!もう魔力切れを起こしてもおかしくない筈なのに!」
エーデルは焦っている。ラキナの底知らずの魔力量に
第一ヴラムに解除されるまでずっと黒い炎の壁を作り上げていたのだ。魔力が無くなっても全然不思議ではないのである。
「あは!アンタと私じゃ格が違うのよ!格がね!てか何?防御ばっかりでつまらんないわねぇ?なーに?怖いの?」
挑発するラキナ。流石に魔力が多めのエーデルでも魔力がかなり減ってきている。勝負をかけないとまずい。
「く…"
エーデルは唯一の攻撃魔法を唱えた。しかし魔力ギリギリに放った魔法はヘロヘロと移動が遅く命中率も低い。軽々と避けられてしまった。エーデルはとうとう魔力も体力も切れて膝をついた。
「あはははは!なーにこのヘナチョコ魔法!こんなので私に戦いを挑むとかさぁ?ばっかじゃないの!」
「く…」
高笑いするラキナ。エーデルは唇を血が出るくらい噛み悔しそうにラキナを睨みつける。
「はあ…こんな弱々女が同じ勇者なんて恥ずかしいわね…」
ラキナはそう馬鹿にしたように吐き捨てる。するとエーデルがクスクスと笑い出した。ラキナはエーデルがいきなり笑い出した事に驚いている。
「あはは…本当それ…私だって嫌よ…こんな!性悪クソ女と同じ勇者って事実がね!」
エーデルはニヤァと意地の悪い顔でラキナを見つめる。するとラキナのこめかみに青筋が浮かんだ。
ラキナはイラつきながら自身の指の爪を噛み始めた。
「私を馬鹿にしてんじゃねーよ!弱い雑魚勇者の癖に!私は強いんだ!弱いアンタが私を馬鹿にしてんじゃねーよ!死ね!
"
ラキナはイライラしながら両手を上に上げる。すると今まで放った魔法の比ではない火力の黒い巨大な炎の球を出現させた。
魔法陣の色も更に黒みが増して禍々しい。黒い炎の球はまるで黒い太陽だ。
その魔法を見た時にエーデルは悟った。
自分は此処で死ぬのだと…
エーデルは最早それを見つめる事しかできなかった。絶望も何もかも飛び越えて唯死の予感を感じ取っていた。
「は!随分と悪趣味な魔法だな。」
意地悪い少年な声。その時エーデルとラキナがいた部屋の中が冷気に満たされた。吐く息も真っ白の空間。そしてラキナの出現させた黒い太陽はパキパキとゆっくり凍っていく。
そして全て凍ると砕けてそのまま消滅した。
「嘘…わ…私の魔法が…」
ラキナは顔を青くさせた。エーデルはポカーンとそれを見つめている。すると寒さに震えるエーデルの肩に黒いマントとスーツがかけられた。
「で?どんなインチキを使ったのだ?このインチキ勇者が」
ヴラムである。エーデルはそんな意地の悪い少年の登場に安心感から涙が出てきた。
「(助けに…きてくれた…)」
「しかし魔力切れを起こすとはな…軟弱者めが。…此処からは俺の出番だ。貴様はそこで見物でもしていろ。」
「うん…ありがとう…ヴラム。」
「ふん…」
ヴラムはそっぽを向きながらエーデルの周りに氷のドーム状のバリアを張る。
「誰よアンタ!まさかアンタなの!?私の魔法を消しやがったクソ野郎は!」
「おーおーよく吠える小娘だな。で?どうだ、本来なら有利な筈の氷の魔法に負ける気分は。さぞ悔しいであろうな?」
ヴラムはニヤニヤと邪悪な笑みをラキナに向ける。ラキナはそんなヴラムの笑みに更にイラつき更に爪を噛んでいる。
「私は…私は強いのよ!アンタなんかに負けない!氷なら氷らしく炎に焼かれて溶けなさいよ!」
するとラキナは更にさっきの黒い太陽を3つ程出現させる。そして黒太陽をヴラムに放つが
「"
先程の黒太陽一つを凍らせた時と段違いの冷気を三つの黒太陽に浴びせる。すると黒太陽は瞬間冷凍されて凍りついた。
そしてまた砕けて消滅。ラキナは恐怖で顔を強張らせている。
「あ…ああ…」
「はん…馬鹿め。炎が氷に負けるとはな?惨めだなぁ?」
ヴラムがラキナを煽りまくる。すると急にラキナが黙り出し下を向いた。しかしすぐに顔を上に向けて
「アアアアアアアアアアアア!!!」
奇声を上げた。
すると今度は彼方此方滅茶苦茶に魔法が発動して黒い炎が燃え上がる。それに対してヴラムも予想していない事態だった為目を見開いて驚愕している。
すると炎の一つがエーデルの方に向かっている。しかしその炎はヴラムのバリアで防げた。
だが尚も襲いかかる炎。とうとう耐え切れずバリアが破れた。そしてそこにまた黒い炎がエーデルに襲いかかる。
「動いて…動いてよ!私の足!」
既に体力も魔力も限界のエーデルの足は動かない。迫り来る熱にエーデルは目を閉じた。
しかしエーデルにダメージはない。代わりに何かに抱きしめられてる感覚に襲われた。
エーデルはやな予感がしてゆっくり目を開けると
「…ヴラム…」
ヴラムが目の前にいた。エーデルを胸に抱きしめていた。しかしその体はガクンと崩れ落ちてエーデルにもたれかかる。着ていたワイシャツの背中部分は大きく穴が空き、所々焦げている。そして背中には大きな火傷ができていた。
「ヴラム?ヴラム!ヴラム!」
エーデルは混乱して涙が止まらなくなった。ヴラムの頭を抱きしめて懸命に名前を呼ぶ。
しかしヴラムはうめき声を上げるだけで、苦しそうな表情で目をつぶっている。
エーデルは必死にありったけの魔力をかき集めて回復魔法をかけるが、傷はあまり良くならない。魔力も完全に枯渇した。
エーデルはヴラムに集中していたので気づかなかった。ラキナが何処かに逃亡していた事に…
逃亡したラキナは先程男達が脱出した小屋に入る。そして小屋の床部分のある場所の板を外す。するとそこには金属製の扉があった。
ラキナはその扉を開ける。開けた先には梯子があった。
「ふ…ふふふふふコケにしやがって…何もかも皆殺しよ…私はもう弱い頃になんて戻りたくない…もう負けたくない!」
ラキナはブツブツ呟きながら不気味に笑い梯子を使って下に降りていく。
降りた先は沢山の棚がある。棚には何やら血の様に真っ赤な液体が入った小瓶が並んでいて、その奥には巨大な不気味な花が咲いていた。
ラキナはニヤァと笑いながら小瓶の一つを取り出して中身を一気に飲み込んだ。
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