第7話 不可能or奇跡
エーデル&ヒューベルトチーム(以下Aチーム)
まず二人はスーの言ってた畑に行った。そこには麦わら帽子を被った大人のネズミ獣人がいる。みると周りの畑にも何人か男の人がおり、農業に勤しんでいる。
「すみません。貴方はスー君のお父さんですかな?」
「はいそうですけど?」
「私は勇者騎士団ゴードン隊所属のヒューベルト・ロックンハートと申します!そしてこちらの可憐なお嬢さんが!」
「えっと訳あって勇者騎士団に協力させていただております。エーデル・ホワイトと申します。一応勇者です。」
するとスーの父は被ってた麦わら帽子を取った。
「これはこれは勇者様。態々御足労頂きありがとうございます。私は"マウエラ"と申します。所でうちの息子がどうかなさったのですか?」
「いえいえ…実は最近此処らで魔獣が出るという噂があるでしょ?子供のいるご家庭に注意喚起してるんです。
一応詳しいお話も伺いたいのですがお時間よろしいですか?」
「ええ?構いませんよ?」
ヒューベルトは言葉に気をつけながらマウエラを誘導して人気のない場所に連れて行った。
「では何を教えれば良いのでしょう。私は残念ながら魔獣を見た事がないのです。」
「…落ち着いて聞いて下さい。マウエラさん。貴方が魔獣を見た事が無いのは当たり前なのです。」
「え?」
ヒューベルトの言葉にマウエラは不思議そうな顔をしている。
「貴方は最近夜の記憶がありますか?最近疲労感を感じる事は?」
「え!?な…何故?確かに最近夜の記憶もなければ変に疲れやすい時がありますけど…」
「それはですね?貴方が狂魔獣症に発症してる可能性があるからです。」
ヒューベルトの考察を聞いたマウエラは目を見開き顔を青くしている。
どっと汗が吹き出しておりガタガタと震え出した。狂魔獣症に関する情報は医者や各地の騎士団や国の要人。そして獣人族にしか詳しいことは共有されていない。
獣人族にとっては人に迷惑をかける上に最悪自分が自分で無くなり死に至るこの病気は最も恐れられている。
「そ…そんな!嘘ですよね!そんなの!」
「確かにですが…これを見てください。」
ヒューベルトは自身の右前腕の鎧パーツを外して下の服の袖を捲る。手の甲には赤い色のグラジオラスの花が浮かんでいる。そして腕には大きく噛み跡が残っていた。
エーデルとマウエラが目を見開いている。
「「!!」」
「実は私は昨日の夜に遭遇しているんですよ。その時に装備していた鎧も歯に貫かれ、穴が開いてしまい今付けてるのはスペアです。
確かにあれは大きなネズミのようにも見えた。部下にも証拠の為にカメラを持たせました。その現像したものがこちらです。」
するとマウエラは一枚の写真を取り出した。
そこには月をバックして暴れ回る。筋肉隆々の赤い目の怪物が写っていた。
その歯は齧歯類特有の歯を持ちよく見るとネズミに似た特徴を持つ顔をしている。そして何より
「…これは…息子から貰ったバッチ…」
少しパツパツになってる服には手作り感が溢れる可愛らしいバッチがついてる。それはスーが作った世界に一つだけのバッチである。
間違いなくマウエラだ。マウエラは絶望して膝から崩れた。
「ですが…貴方が発症したのは聞いた所で4日ぐらい前。まだ間に合います。とはいえこの村の人にこの話が流れれば色々と問題が発生するでしょう。
なので我々で他にこの病気を抑える薬を持つ人又は医者を探しております。」
正直賭けである。秘密裏で解決したい所だが、そもそもそんな都合よく医者がいる事はまず無いだろう。
そしてこの病気の特効薬自体は効果は抜群でで数日しか経ってないなら治す事が可能ではある。しかしその薬の値段は破格なのだ。
奇跡を信じるしかない。
「こちらのお嬢さんは回復魔法の使い手です。この子に暫く貴方に回復魔法をかけてもらい症状を抑えて頂きます。
そしてその間に私の部下と友人が貴方を助けられる人を探してくれています。」
「け…けどもしまた暴れたら!」
「そうなれば私が貴方をこの命を賭けて止めて見せます!私を信じてください!」
ヒューベルトは真剣な顔でマウエラを見つめる。その顔は最初にあった胡散臭い印象がかけらもない。エーデルはそんなヒューベルトを優しい眼差しで見つめる。
そんな彼の真髄な態度にマウエラはコクンと力強くうなづいた。
「分かりました!それにこれ以上村の人に迷惑をかけたくありません!何より…私が死んだらあの子はひとりぼっちです。家内にも先立たれている私にとってあの子はたった一つの宝物。
あの子の為に私はこの病気を治して見せます!ヒューベルトさん!エーデルさん!よろしくお願いします!」
マウエラの願いに二人は力強くうなづいた。
ヴラム&シュリ&ゴローチーム(以下Bチーム)
「取り敢えず別れて探しましょうか。」
「そうですね。」
「ちっ…なぜこんな事に…」
3人は村の広場に集まって相談した。まずは3人で宿屋に行き今泊まってる獣人がいないか確かめたが、そもそも魔獣が出るという噂があるのだ。誰もいない。
「宿屋にいないとなると村の外とか他の町や村を探した方がいいですね。」
「ちっ…さっさと探すぞ。シュリはあっち。そっちの小僧はあっちだ。俺はこっちを探す。」
「はいヴラム様!もし何かあったら大声でお呼び下さい!すぐに助けに参りますよ!」
「うわぁ…声でかいぃ…距離感〜」
シュリの大声に顔をシワシワにするヴラム。
ヴラムが指示した方向にそれぞれ散る。時間との勝負だ。早く見つけねばならない。
ヴラムはなんだかんだで真面目に探していた。翼を出して空から探索する。
「そりゃあ都合よくは見つからんか…」
しかしスーの泣き顔を思い出すとヴラムは諦められなくてより早いスピードでより目を凝らして探していた。そして数時間。空が赤やオレンジのグラデーションがかかり始めた頃。
ヴラムは他の近くの街にも降りて獣人を探していた。焦り始めもはや悪態などつかずに
「すまんが!狂魔獣症の薬はないだろうか!持ってたら譲って欲しいのだが!」
「いや持ってないよ。あんな高い薬。」
大概の人はやはり持っていない。例え持っていても高額の薬なので譲るのを断られる。
買おうか考えたが医者の許可も必要。魔族のヴラムではまず買えない。獣人族の者に代わりに行ってもらおうと考えるが、怪しまれ断れる始末だ。
「くそ!もう夜になるのに!」
ヴラムは他の街にも降り立つが結果はなかなか良くない。悔しさから歯軋りして壁をドンと叩く。すると
「何してるにゃん?」
急に話しかけらた。ヴラムが振り返ると糸目に黒斑の模様がある白い猫の獣人が立っている。その服装は緑色のローブに頭巾を被っており背中には何やら荷物を抱えている。
体つきはふくふくと肥満体型で背はゴローと同じくらいだ。
ヴラムは藁にも縋る思いでその獣人に事情を説明した。
不可能なんかではなくて奇跡が起こるとただそれだけを信じて。
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