第4話 巫病《ふびょう》編 其の四

夕方、周りは朱色に建物が染まり日が落ちかける間際、どう子は買い出しの荷物を抱えてお店に帰ってきた。


善財どう子「ただいまー・・・?お客さん?」


少女の母親とは別に事務所の応接ソファに見知らぬ若い女性が座っているのが見えた。


善財どう子「いらっしゃいませ。ご用件は伺っておりますか?」


どう子はデスクの椅子に腰かける兎に目配せして、誰?誰?と口をパクパクさせる。


ソファに座る見知らぬ女性がゆっくりと振り向く。どう子は一瞬体が硬直した。

その美しい顔立ちとは相いれない真っ赤な義眼が右目に嵌めてある。

女性はしばらくどう子を見つめた後、少し頬を膨らまし何故か怒っているようだ。

ふうっとため息をついたかと思うと女性は兎の方を見て、アルバイトを雇っているなんて聞いていないと文句を言い始めた。

兎は気にも留めず、どう子に話しかけた。


兎「どう子、この方は櫛名田くしなだひとみさん。テレビの霊現象の解説とかで出てる霊能者さんだ。ご挨拶して。」


善財どう子「善財どう子といいます。兎さんの助手をしてます。」


櫛名田くしなだひとみ「こんにちわ。ひとみでいいわよ。多分年齢も変わらないはずだから・・はぁ・・・なんで・・この子は良くて私はそばに置いてくれないんだか・・・・」


櫛名田は、兎、少女の母親に一度目配せするとどう子を呼び寄せる。


櫛名田くしなだひとみ「2人には話したんだけど、あなたにも説明するわね。私、小学校の校長から少女の除霊の依頼を受けたんだけど行き違いでブッキングしたみたいなの。」


善財どう子「校長から除霊の依頼・・ですか・・・」


櫛名田くしなだひとみ「あの小学校、何年かに一度、今回のようなことが起きてたみたいなの。ただその時は、原因不明の突然死による事故ということで処理されてたみたい。」


善財どう子「それって、今回の少女ちゃんみたいな子は皆死んでいたってことですか?」


櫛名田くしなだひとみ「そういう事・・今の校長は、新米の教師の頃から学校にいたから、今回の事が霊現象だと感じたの・・・それで、私がテレビで良く出てたから連絡来たってわけ。」


兎「彼女が、学校との段取りを組んでくれるそうだ。黙って忍び込まずに済んだな。」


善財どう子「忍び込むって何しようとしてたんですか!!」


櫛名田は、プププと口を抑えると立ち上がり兎に念を押すように話す。


櫛名田くしなだひとみ「兎さん。今回の除霊と依頼料はあなたに渡すわ。その代わり今度の日曜日は一日時間空けといてね!」


櫛名田は、振り返りどう子とすれ違う際、彼女が小さくつぶやいたのが聞こえた




ぜ・ん・ざ・い・ど・う・こ・・・・これも・・運命・・・か・・・・



櫛名田がお店を出た後、しばらくすると祈祷室から少女のうなされる声が聞こえてきた。



どう子、兎、少女の母親が祈祷室に向かうと


少女を囲う祭壇のしめ縄がバサバサと揺れている・・・

そして、どこからともなく男性のうめき声、怒声のような低い・・・何かがこすれるような音がすぐ近くで鳴っている・・


少女の母親が体を震わせ立ちすくんでいると兎が母親にやさしく話しかけた。


兎「お母さん。しめ縄はエアコンの風で揺れてるだけです。男性のうめき声に聞こえるのは配管の風の抜ける音ですから怖がらずに。いつものことですので・・」


兎はそういうと母親を応接間のソファに戻した。





善財どう子(・・・・イヤイヤイヤ・・そもそも祈祷室エアコン付いてないし・・)


どう子は、すぐ近くで聞こえる男のうめき声に鳥肌が立った・・・配管の音なんて嘘っぱちだ・・こんなの初めて聞く音だ・・・


兎はアクビをしながら祈祷室に入るとしめ縄の揺れも男のうめき声も聞こえなくなった。


兎「僕は今日はここで寝るから、お母さんは仮眠室で寝てもらって。除霊は明日夜・・どう子に手伝ってもらうから家の人には、バイトで少し遅くなるって言っておいてね。」


兎はゴロンと少女の横に添い寝する。


時計を見ると夜の7時・・そろそろ家に帰る時間か・・・どう子は母親を仮眠室に案内すると身支度整えお店を後にする。


夜空を眺めながら振り返りお店を眺めた・・・



私に手伝ってもらうって・・・明日はいつもと違うお祓いなのかな?







どう子は、今回の除霊で・・・初めての・・


説明のつかない現象を体験することに・・

























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