第3話  巫病《ふびょう》編 其の参

日もまだ高く人通りの多い中、兎さんに頼まれた買い出しに近所の仏具店に向かうとメモを見ながら不思議に思う。


・・・兎さんて大抵詐欺まがいの祈祷ばかりだけど、時々不思議な祈祷もするんだよねぇ・・・


いつも不思議なことは何もないんだよって言うけど、絶対科学で説明できないこと・・やってる時もあると思う。


しばらく歩き、行きつけのお仏壇の長谷山に着くとどう子は「こんにちわー」と中に入る。


奥から店長が彼女に気づき声をかける。


店長「善財どう子様、いつもご贔屓にありがとうございます。本日はどのようなものを?」


善財どう子「えっと、予算は6万円くらいでコンゴウウス?の両刃が3つ、ドウラ?1尺ので!」


どう子はそう言うとメモを渡した。

店長は、フムフムと頷くとスタッフルームに戻り手の平くらいの大きさの金色の棒とノートくらいの大きさの皿のようなものを持ってきた。


店長「こちらが三鈷杵さんこしょと銅鑼1尺です。普及品ですので予算内に収まります。」


善財どう子「ありがとうございます。」


店長は、普段から不思議に思っていたのか善財どう子に話しかけた。


店長「善財様。いつも法具をお買い求めにご来店いただいておりますが、どのようなご用途でお使いに?」


善財どう子「あ。私、お使いを頼まれてるだけで良くわからないんです。いつもお祓いに使うみたいですけど。」


店長「御祈祷ですか・・・お寺の方で?」


どう子は、左手で髪を撫でながら困り顔で答えた。


善財どう子「あは・・はぁ・・あの・・この先の占いのお店でお祓いもするので・・・」


どう子は何とも言えない笑顔で答えると、近くにいた若いスタッフの女性が嬉しそうに声をかけてきた。


女性スタッフ「私、唐沢しし子といいます。あの、動画サイトでお祓いの怪談話とかされてるところですよね!!私、兎さんのファンなんです。まさか常連のお客様が兎さんのスタッフの方だなんて・・・すごく感激です!!」


どう子は、戸惑いながらも頷く。


善財どう子 ( お客さんが来ないのにバイト代払ってもらってたのって動画配信やってたんだ・・・初耳だよ・・)


唐沢しし子「いつも、近くを通るんですけど、気になってたんです。あの、今度遊びに行ってもいいですか?」


善財どう子 (うわー。近い近い・・・)


善財どう子「あ、あの・・時々なら・・大丈夫だと・・おもい・・ます。」


唐沢しし子は、嬉しそうに頷くと手を振りお店を出た後も見送ってくれた。


どう子(押しの強い子だったなー。猛獣って感じだよ。それより兎さんが動画配信してたなんて知らなかった。あとで検索してみよ。)

次の買い物先はホームセンターで粉末アルミニウムの購入。久しぶりのあれが始まるのかと思うとドキドキする。

兎さんの祈祷は基本詐欺で、基本それらしい儀式ごとでお客さんを返すだけだけど・・・

下準備をする祈祷はいつも説明のつかないことが起こることが多い。

怖いもの見たさで手伝っているけど今回どんなことが起きるんだろう・・・


どう子は、空を仰ぐと夕方までにはお店にもどれるかなと微笑んだ。




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