第2話 巫病《ふびょう》編 其の弐
兎はどう子に少女を祈祷室へ案内させると母親にいくつか質問をすると2,3日事務所に寝泊まりするよう伝えた。
兎は、母親との話で気になる点をパソコンに箇条書きでまとめていく。
・性格は内向的
・先月離婚し先週から学校の近くに母親と引っ越してきた。
・先週、娘の初めての登校日に旧校舎で友達と遊び、その日から悪夢を見るようになり体に変調をきたした。
・日に日に痣が多くなり、今日児童相談所から引き取った時は口の周りの殴打痕、それに切り傷などの裂傷があった。
・児童相談所が自傷行為を疑うが、第三者による
・特定の宗教は信仰していない。
・感受性が鋭く、家族や周囲の人が抱えている苦しみや悲しみに共感し、無意識のうちに、自分が身代わりになろうとする・・・
兎がネット検索で自宅や学校の近くで過去に事件があったか調べていると、30年も昔に旧校舎での児童殺害事件がヒットした。画像を何枚か印刷をすると母親に問いかける。
兎「お母さん。学校で過去に殺人事件があったのご存じですか?」
母親は越してきたばかりで初めて聞いたと答える。
兎は少し深呼吸をすると立ち上がり少女のいる祈祷室に向かった。事務所の奥にある6畳の畳部屋に神道の祭壇が設けられている。祭壇の前には少女とどう子が座り談笑していた。
兎が少女の前に座ると仕草や話し方を凝視しながら質問を投げかけた。
兎「学校は始めて行ったけどお友達はできた?」
少女「うん。」
少女は笑顔で答えた。
兎「夢の中で見た男の子たちは旧校舎で遊んでた子達ではないの?」
少女「違う。私を知らない名前で呼んでたの。」
兎は先ほど印刷した画像をどう子に取りに行くよう伝える。どう子は印刷された内容を見ながら兎のもとに歩いて行くと事件のあらましを見る。
善財どう子「犯人は徳間まもる・・自分の人生に落胆し学校に侵入・・無関係の児童教員を多数殺傷・・・・死亡児童3人・・・犯人は平成24年に死刑執行済・・・」
どう子は、少女と話している兎に資料を渡すと兎は少女に写真を見せる。
兎「この女の子は知ってる?」
少女「知らない。」
兎「この男の子たちは?」
少女「私を守ってくれたけど死んじゃった子・・・・」
兎「この男の人は?」
少女は突然顔がこわばり動かなくなった。どう子は直感で夢に出てくる犯人と子供たちが関係していることを察する。
次の瞬間
地鳴りと共に事務所のいたるところからパチンパチンとはじける音が鳴り響く。
善財どう子「キャァ!!」
携帯電話が鳴動し、どう子が画面を見ると地震速報の表示。
善財どう子「なんだ地震か・・・びっくりした。」
兎がゆっくりと立ち上がると、どう子に右目でウインクをする
そして、神棚に置いてある不釣り合いな仏教の経典らしきものを左手で持ち
握られた右手の人差し指と中指だけまっすぐ伸ばすと天井を指し示す・・・
何時もの・・・
何時もの・・・
不可思議な依頼のときにだけ見せる
彼の仕草・・・
そして彼の何時もの言葉
世の中に 不思議なことは何もないんだよ・・・
さあ。祈祷の準備が始まる。
善財どう子は元気に「はい!」と答え兎をみつめた。
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