第21話 5日目ー6
取り敢えず石造りの小屋に入ろうか。
防犯上の理由で小屋は密閉状態の上で封印してあるので、まずはその解除からだ。
ほぅ、昨夜の内に9回、侵入しようとした形跡があるな。
端くれとはいえ神様の封印を解くなんて無理だったんだが、空き巣狙いがもう少し来るかな? と思っていたので一桁というのは意外だな。
その内の3件は王政府が手を回したんだろうな。本格的な道具を使った様だ。
まあ、その気になれば24時間リアルタイムで監視も出来るが、そこまで気にしなくても良いだろう。
ドアとして設定しているエリアの半分、縦2㍍、横1㍍の壁を消す。
後ろでどよめきが起こった。
扉の無い建物だと思っていたら(昨日の段階では扉も使っていたから不思議には思っていそうだな)、継ぎ目も見当たらない壁の一部が消えたんだから驚くか?
玄関で靴を脱いで、下駄箱に収める。
そのまま室内を見たが、このままでは殺風景過ぎる。
ああ、誰か応接セットを造れる人間が居ないかな?
もし居たら、仕事を回せるんだがな。
エド爺にも入室の注意点を説明して上がって貰う。
余りにも手を付けたい事が多過ぎて悩みどころだな。
よし、考えるのをエド爺に丸投げしよう。
その方がこの地の
板張りの床にそのまま
「書類仕事が出来る机と来客をもてなす為のソファセットが欲しいな。誰か居ないだろうか?」
「確か2名居た筈ですが、ザクコムント領に出稼ぎに行っていると聞いています」
「うーん、念の為に確認しておいてくれ。まあ、最悪、王都の商人から購入しても良いけど、スラム街から資金が出て行くのは避けたいんだがな」
「いっその事、白石包丁を売って資金を稼ぐというのは如何でしょうか?」
ああ、そう言えば、
大体、今みたいに鎌にするよりもペーパーナイフや包丁に使う方が普通だろう。
しかも、元手はタダだしな。
「その提案は採用だな。商人に10本くらい試供品としてバラまいて、需要予測と売れそうな価格を出させて、一番条件の良いところに優先的に卸すのも面白そうだな」
「商売にも造詣が深いとは、流石神様ですね」
「いや、神様とは関係無いから」
思わず素で否定してしまった。
「で、エド爺、今スラム街で一番困っている事は何だろう? 例えば井戸みたいな施設関連で足りてないのは無いかな? 俺が見る限り井戸は足りていないと思う」
「そうですね、確かに井戸はもっと欲しいですね。現状、使える数に余裕が無いせいで朝夕などは結構並んでいますね」
「既存の井戸には手動の汲み上げポンプを追加で付けて、その他にも新規に井戸を掘ろうか。場所の選定を任せていいかな? 水脈の深さと位置は把握しているんで、大体の場所は大丈夫だ」
「分かりました、こちらで場所を当たっておきます」
「他には何か有るかな?」
「そうですね、共同で使える
「それも場所の選定は任せていいかな?」
「もちろんです」
「そうだ、自警団みたいな組織って有るのかな? 有れば簡単な武器くらいなら用意出来るが?」
「一応、有志で30人ほどが居ます。元々領地では警吏をしていた人間が中心ですが」
「見た所武装している人間を見なかったけど、武装をすると王府に睨まれるとか有るのかな?」
そう言って、俺は伸縮式の警棒を創造した。伸ばした長さは90㌢で重さは500㌘ほどだ。
本物の剣や槍が野放しになっている中では武装としては心許ないが、何も無いよりは良いだろう。
とは言え、わざわざ神力で造ったから強度は保証するよ? 鉄の剣が相手なら十分に受け止められるチート警棒だよ?
何だったら、これも付けようか?
悪乗りでポリカーボネート製の、片手で扱える透明な小型の盾も創造した。
「やはり恐ろしい
「ああ。王府が目を付けるかもしれないくらいにね」
「対策はどうされるお積りですか?」
エド爺の顔は憂慮というよりも心配という感情が占めていた。
「特に何も。神の邪魔をしたいなら相応の覚悟を見せて貰うだけさ」
エド爺の顔が、やはり、という心の声が聞こえそうな表情に変わった。
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