第22話 5日目ー7


 その後も王府の出方について色々と意見を出していると、外から声を掛けられた。

 まあ、気配察知で男衆の1人が近付いて来るのは分かっていたけどな。



「マイスナー様は居られますか? 王城よりつかいが来ております」


 

 予想ではあと数日は後になると思っていたが、早くも動いたのか?


 もうね、色んな点でレベルが低いとしか思えんな。

 今の段階で動くには情報が少な過ぎるんだ。ほぼ条件反射で動いているのと変わらない。

 どんな相手かが分からずに動いて、成果を出せると思っているんだろうな。

 多分、脳内にお花畑が満開に咲いているんだろう。

 貴族や王族が望めば、何でも手に入るという夢のお花畑が咲き誇っているんだろう。



「早いですな。少々失望を禁じ得ませんな」

「兵は拙速せっそくたっとぶ、という言葉が有るんだが、この場合は遅巧の方が正解だな」

「そうですね。それでは失礼します」

「気を付けてな」



 さあて、精霊+の1羽をエド爺に張り付けておこう。

 パーセンテージとして一桁の確率で強硬手段に出て来る可能性が有るからな。


 ついでに、視覚と聴覚を共有しておこうか。

 これで何かが起こるにしても前兆を掴むのも可能になる。

 

 あ、エド爺に頼んでいた炊き出しの準備と手配が未だだ。

 話はしたが、具体的に動く前に召喚されたからな。

 うーん、エド爺が居なくても何とかなるか?

 よし、今からやってみよう!


 麻袋5袋分のスペルト小麦モドキやいつもの野菜もどき、それとは別に動物性蛋白質の具材を用意して、外に出れば、結構な数の住民が残っていた。女性が多い様に思う。 

 暇なの?

 暇だったら、手伝ってもらおうか?

 


「今からスープを作って、みんなに配ろうかと思うけど、誰か手伝ってくれませんか?」


 うん、俺が呼び掛けたら、みんな顔を見合わせて、やはり目で会話を始めた。

 10秒くらいしたら、3人が立候補してくれた。

 ああ、孤児たちを泊めてくれている家族だ。


 なるほど、昨日、小麦や小麦粉を確保出来たから、今日は他の家族に譲ったんだな。


 18畳ほどある前庭の右半分を使って、かまどを4つ造る。

 大き目の土鍋も造って、軽く水洗いをする。

 え、洗った後の水はどうしたって?

 地面に落ちる寸前に収納していますよ? 立派な資源ですからね。


 で、ドバドバといつもの出汁を注いで、竈に流木から作った薪を放り込んで着火っと。


 火が大きくなるまでの時間を使って、作業台を造ってから石造りの小屋の中に戻る。

 野菜モドキ類を入れた麻袋とカゴに盛った肉団子を持って出て、作業台に載せる頃には6人の女性(何故か倍に増えていた)の手にはオタマが握られていた。

 いや、凄いわ、この適応能力。

 妙にツボにはまった俺は、思わず下を向いて笑ってしまった。


 30分ほどでスープは出来上がったんだが、配る段になって皿やスプーンを用意していない事に気付いた。

 量産性と廃棄のし易さ重視で土師器はじき相当の皿とスプーンを土砂魔法で作って行く。

 日本の食器に慣れた目から見ると、釉薬も無いから素朴に過ぎるが、使い終わったら割って捨てても良いから後が楽だ。


 まあ、欲しいと言われたら上げても良いしな。


 

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