第19話 5日目ー4


 どうすれば良かったんだ?


 事態を解決したのに、余計な手間が増えてしまうなんて。

 いっその事、5人纏めて遠くの森にでも転移させるか?

 それくらいは余裕で出来るくらいには神力は溜まっている。


 ただ、これだけの数の目撃者が居ればさすがに王政府に今回の件のあらましが伝わる。

 正直なところ大した秘密では無いとはいえ、能力の一端が分かれば対策の1つや2つ出来るかもしれない。



「ジョージ様、後は彼らが処理をしておきます。任せてしまいましょう」


 おっと、エド爺が昨日も手伝ってくれた男衆を連れて来てくれた。

 何かの構造物だったと思われる板切れを持って来ているが、担架代わりに使うみたいだ。


「助かるよ」

「ですが、さすがと言うべきなのでしょうか? それとも恐れおののいた方が良いのでしょうか?」

「笑えばいいと思うよ」


 残念ながら、エド爺は第三の選択肢、「キョトンとする」を選んだ。

 まあ、元ネタを知っている人間が俺しか居ないから仕方ないんだが。


「子供たちは?」

「泊めてくれている者たちと一緒に居ます」

「採集セットを持っているならそのまま向かってもらおうか」


 全員に精霊+を張り付けているから安全はかなり確保出来ていると言える。

 精霊+の知能も昨日の段階で中学生くらいになっているから、対応力も十分だろう。


「伝えます」


 そう言うとエド爺は近くに居た男衆の1人に頷いた。男衆は機敏に動いた。

 男衆の対応力はかなりレベルが高いかもしれない。



 一度、ここら辺りでどれくらい内偵の手が入っているか確認しておこうか。


 命力を極端に薄くしてから放射して、半径100㍍内に居る人間の生体反応を得る。

 その情報を基に、負の感情を持つ人間を特定して行く。

 次に冷静になる努力をしている人間を特定して行く。

 気配を消そうと息を潜めている人間を特定して行く。

 喜んでいる人間を特定して行く。

 驚いている人間を特定して行く。

 満足している人間を特定して行く。


 要注意の反応が出た数が思ったよりも多いな。


 7人が黒で、27人が濃淡の有るグレーだ。


 本職と思われる人間は黒の7人だな。

 気配も薄く、上手く人波に埋没している。


 濃淡の有る27人は、俺たちを狙い撃ちで探っているヤツ、金で雇われている慣れたヤツ、広く浅く情報を集める様に言われているバイトみたいなヤツと言った所か? 


 探知範囲外にも当然、元締めみたいなヤツが居る筈なので、やはり結構な数がスラム街に入って来ていると思っておいた方が良いな。



 薄いグレーの内、まとまって居る5人は例の分隊スクワッドだろう。


 きっと報告したのに消えてしまった石造りの小屋がスラム街に現れたという情報から関連付けられて巻き込まれたのだろう。

 潜んでいないし、感情の起伏も抑えられない様だから、あまりこういう情報を収集する仕事が得意そうに見えない。お気の毒様だな。

 でも、危険が無いバイトとしてなら有りかもしれんな。

 

 あ、それと城壁のあちこちからこちらを観察している5人は除外している。

 ここに来た時から気付いていたが、ずっとスラム街を監視している部署なんだろう。


 どうでも良いけど、ゲームなら簡単に敵味方を表示する便利なMAP機能なり、魔法なりスキルなりが有るんだけど、現実では手間だな。

 


 いや、よく考えたら日本でこんな事は出来なかった。

 贅沢は敵だな。


 神様モドキに教えられた魔力・命力・神力の活用法は十分以上に便利だ。 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る