第10話 3日目ー5
スラム街には大歓迎で迎え入れられた。
どうやらスラム街のこの辺りは、リックとベス
神様モドキに促成で植え付けられた知識では、ドムスラルド家が治めていた領地は大精霊の庇護のおかげで魔獣の被害もかなり少なく、作物の実りも良かったらしい。
経済的に余裕が有る事も有り、王国内では「あそこに行けるのであればぜひ行きたい」と言われるくらい善政で有名だったらしい。
それを妬んだ挙句に我がものにしようとした王族の一部が、両親と祖父母の死という一瞬の空白を突いて領地を奪った事が悲劇の始まりだった。
欲にかられたその王族は、翌年は作物の収穫が前年比で2割も落ちたにも拘わらず、3割負担から5割負担に増税をしてしまった。
その年の収穫量の5割では無く、前年の収穫量比で5割だ。
前年まで7割残っていた作物が3割に減った影響は凄まじかったが、領民に多少の貯えが有ったので何とか凌げたようだ。とは言え、この段階で少数だが難民が発生している。
更に翌年には魔獣の被害が急増し、益々困窮している。
この段階で3割の領民が難民と化した。
そして去年。魔獣の大量発生で領地は放棄された。
領民は、支援も無く領地と同じく放置された。
それまで長年豊かだった生活があっという間に崩壊したのだ。少しでも生活が成り立つ可能性を求めて王都に押し寄せたが、王都内部への立ち入りは禁止された。
王都外スラム街の完成である。
ところで、元筆頭官僚だったエドガルト・マイスナーはかなり有能だった様だ。
希望を無くして
ただし、かなり無理をしたのだろう。その身は病魔に侵されている。老齢故に悪性腫瘍の進行が遅いだけで、余命は半年も無いだろう。
本人も病魔に侵されて、自分の寿命はさほど残されていない事を言葉にしないが自覚している様だ。
それだけに、前領主の忘れ形見が生きていた事に感情的になったのだろう。
歓迎の宴と言うにはささやかなものだが、なけなしの食料を住民が持ち寄って振舞ってくれた。
その際にかなりの確率で『
これで、出来る事がかなり増える。
ただ、初めて知ったが、リックとベスの兄妹を救った(かなり真実から遠いが魔法尉なら出来る程度に話を矮小化してある)俺に対する感謝では神力は増えなかった。
あくまでも神と言う存在に対する感謝や信仰が関わるのだろう。
孤児たちは、今夜は余裕が有る家庭に分散して泊めて貰う事になった。
リックとベスの兄妹と俺はエドガルト・マイスナーのバラック小屋に泊まる事になった。
長年連れ添った奥様を流行り病で亡くしたせいで家のスペースに多少は余裕が有るそうだ。
こちらにとっては都合の良い展開だ。
「ジョージ様が神ですと?」
都合が良い展開でも信じて貰えるかは別だった。
まあ、いきなり、『オイラ、カミサマ。夜露死苦』と言われても信じないか。
「まあ、神と言っても、ついこの間までは人間をしていたので神様感はサッパリ無いですがね」
何だよ、神様感って?
「まあ、魔法将クラスの魔法が使える人間程度に思っておいて下さい。まあ、殺しても死なない点はちょっとだけ普通の人間とは違いますが」
「それはどう考えても普通の人間とは言えますまい。それに魔法将なんて伝説級の魔法使いです。ああ、『
あ、誤差に近いがまた神力が増えた、かも。
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