第8話 3日目ー3


 4人で集めた流木は結構な量になった。


 皮魚も昨日とは別のスポットで更に20匹確保出来たから、数日なら補充無しでも問題はない。

 ついでに変質魔法で5㍑ほどの容量の壺を10個造って、中に川の水を詰めて収納しておく。

 これでスープ位なら変質魔法を使っていつでも作れる様になった。


 まあ、真水ならいつでも神力で用意出来るんだが、不純物が有った方がスープにし易いからな。

 


 ふと、思い付いたので、流れに影響のない河原の端に在る岩や砂、土手を超えた場所の土などをトン単位で回収しておく。

 増築する小屋やその他、色んなモノの材料になるからな。


 うん、色々と大漁で満足が行く遠征になったな。



 根拠地に戻ったら、見知らぬ武装した5人組がレベッカと話をしていた。

 5人とも統一された防具を身に纏っているから、魔獣討伐を生業なりわいにしている分隊スクワッドだろう。槍と盾を装備した戦士が2名に剣と盾装備の戦士が2名、それと弓士が1名という微妙な組み合わせだ。


 出来れば魔法尉クラスを1名追加して小隊プラトーンに格上げ出来れば、遠距離攻撃の火力を厚く出来るし、前衛の負担も減らせるし、治療魔法によって継戦能力も上がる。


 まあ現実には命力を利用する治療魔法が使えない魔法士クラスしか見付からないだろうけどな。

 王都には幾つかの中隊カンパニーが有るらしいので、もしかすればいずれかに所属しているのかもしれない。


 だが、老婆心ながらに心配だな。


 確かにこれまでは分隊スクワッドでも何とかなっただろうが、王都付近の森林も魔獣の獣影が濃くなっている。

 火力と継戦能力が劣る分隊スクワッドでは対処が出来なくなるのも遠い未来では無いからな。



 近付きつつ見定めたが、険悪な雰囲気ではない。

 だが、油断は出来ない。なんせ神力を使った分析をしていないからな。

 神力は、さすがに神の名が入ったけんのうだけあって、チート過ぎるから余り頼り過ぎるのも考えもんだ。その割には多用しているが対人は別だ。慎重に使った方が良いだろう。


 35年も人として生きて来た経験が有れば普通は大丈夫だし、何よりも俺自身が人類に対して傲慢になり過ぎない為にもだ。



 5人組の視線がこちらを向いたので、リーダーらしき人物に軽く挨拶をしておく。

 


「こんにちは。で、何の用かな?」

「いや、気になったんで聞いていただけだ。いつもは無い建物が建っていたら、とりあえず確かめるだろ?」 

「まあ、言いたい事は分かった。で、納得出来たかな?」

「なんとかな。さあて、そろそろ魔獣駆除に行かなきゃ。またな」


 5人組が立ち去って行くのをじっとリックとマイケルが睨んでいる。

 


「ジョージさんが居なかったら、危なかったですよね?」

 

 マイケルがボソっという感じで呟いた。

 確かに子供たちだけしか居ないと分かった途端に悪だくみを考える人間は一定数居るのは事実だ。

 おっさんの俺が居る事で仕掛けようとする敷居は一気に上がっただろうな。 


「本人たちは悪い人間では無さそうだったが、周りもそうとは限らんからな。レベッカ、悪いヤツらではなさそうだったろ?」


 いきなり振られたレベッカも5人の後姿を見ながら同意した。


「ええ、怖い感じはしなかったです」

「いっその事、子供たちの準備が出来たらもう引っ越すか? ここに居ては問題が起きる可能性が一気に上がったからな」


 俺の言葉にベスを除く3人が頷いた。


「昨日決めた王都の外壁沿いに出来ているスラム街に全員で行こう。そして、実際に現地を見て決めようか?」

「それなら、みんなを連れて来ます」

「ベッキーねえ、ベスも手伝うの」

「うん、お願い」


 レベッカとベスが石造りの小屋に入って行った。

 それほど時間が掛からずに幼少組の全員が出て来た。


 うん、全員の生命反応が昨日会った時よりもかなり安定している。

 多分、食事もそうだが、安心してぐっすり寝れる場所が手に入ったという精神的な余裕が効いているのだろう。

 せめてあと数日、ここで過ごせれば良かったが、仕方ないな。

 石造りの小屋を収納して出発だ。



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