ep68. ■三年ぶりの、追記。
■二〇××年十月――。雨。
この日記ももう終わりだ。書くことなどない。
最悪だ。やはり面倒な遠回りでも、全て俺一人でやるべきだった。うかつに近道しようとして他人の手なんて借りるんじゃなかった。
結論から書こう。
俺のやってきたことが全て弱井へのいじめとして明るみに出た。
三田の馬鹿が、撮った写真をあろうことかSNSに掲載したらしい。なんでもSNSで仲良くしている彼女候補の“rulia”に見せたかったと。
……どうせネカマか何かだろうに、ネット社会でしか見えない自己顕示欲を満たそうとするこの文化はどうにかならないのだろうか。
さらにタイミングの悪いことに、ヘタレの市松が良心の呵責に耐えかねてとうとう担任にゲロしたらしい。弱井の自殺未遂まで、あらいざらいすべて。
以前の弱井からの訴えや、保険医の記録が裏付けることになり、弱井へのいじめは学校が認めることになってしまった。
俺は停学が決まった。学年主任と担任と教頭から面倒くさい説法を受けた。教育という自分の仕事がうまくいかなかった結果が俺だというのに、それを棚上げして俺だけを責めようとするのは大人としてどうなんだろう。
■追記。
俺が停学している間に弱井の転校が決まっていた。父親の元を離れて母親の元に引っ越すらしい。
弱井が学校へ姿を見せることはもうなかった。
両親は俺がしでかしたことに打ちのめされ、もともと良くなかった仲がさらに悪化していた。
父は婿養子だ。上手くいけば離婚した後の親父について行って、苗字を変えて俺はやり直せるかもしれない。
十五になれば改名だってできる。皇帝と書いてエンペラー。こんなキラキラした名前、どうとでも言って改名できるに違いない。
■三年ぶりの、追記。
あいつの姑息さは高校でさらに成長していやがった。嬉しいことだ。相手が成長するということは、それに適応するために俺にも伸びしろが与えられるということだからな。
上手くやっている、と思っているあいつの鼻をそろそろ明かしてやってもいい頃合いだ。二年まで俺はよく我慢した方だ。
調子に乗っている今が一番の叩き時。いわゆる旬というやつだ。上手くかわしてきたと思い込んでいる弱井――石橋磐眞に、またしても自分に悪意が向けられているということを自覚させ、忘れたと思い込もうとしていた恐怖ってやつを思い出させてやろう。
暴力もいい。恐喝も。何ならまずは、和田でも焚きつけていじめのチュートリアルといこうか。
その後で悪意たっぷりのラブレターでも書いて、小賢しいあいつが十数分ですっぽかしを喰らったと気づき、自分がまた厄介のターゲットにされたと気づかせ、戦慄させてやるのも良い。
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