第12話

ここまで大きな車だと、車に乗るだけでも一苦労だ。

何とか夢綺渚を助手席に乗せた俺は、運転席に乗り込んだ。


[15トンダンプトラックを装備しました]

[15トンダンプトラック レベル4]

[レベル1 時速80キロ以上で攻撃力+4,200]

[レベル2 時速50キロ以上で攻撃力+3,200]

[レベル3 時速30キロ以上で攻撃力+2,200]

[レベル4 時速100キロ以上で攻撃力+6,000]

[レベル5 ???]

[レベル5が最大レベルとなります]


俺はエンジンをかけ、この殺傷兵器を操縦し始める。

ロボット漫画の主人公がロボットに乗った時の感覚は、おそらくこんな感じなのだろう。

5トントラックよりも遥かに強力な攻撃力が出せるに違いない。


そう思うと、気持ちが昂ってくる。

レベルが上がったおかげで、武器レベルも4から始まっている。


攻撃力が6,000も上がるのだ。

実に驚くべき数値である。

この武器は時速100キロ以上の速度で、尋常ではない攻撃力を誇る。


ただ車体が大き過ぎるせいで、あちこちに捨てられた車が散らばっている今の状況には適していない。

これに乗って道路に出たところで、まともに走れないのである。

速度が出せないようでは武器としては使えない。

何はともあれ、今はそんなことを考えなくてもいい。


「夢綺渚、連携を使うんだ」

「連携?」

「ああ、前に説明しただろ?詳しい説明は後でするから急いで」

「分かった」


長い時間をかけてシステムの使い方を教えていたため、夢綺渚は問題なく[連携]を発動することができた。

連携の発動を確認した俺は、ダンプトラックを動かし始める。

昨日、ボス級のモンスターを倒した。

それから万が一に備えてコンビニの中で待機しながら、特典のクールタイムが終わるのを待った。

ここまで完璧に準備ができているのなら、今度は夢綺渚のレベルを上げなければならない。


見過ごせないチャンスである。

地下駐車場があるため、ホテルには別途駐車場を設けていない。


道路になっている場所は庭の周りだけである。


今朝、ホテルの関係者が使っていた車を1台1台、別の場所に移動させておいたので、下級モンスターを片付けるのにピッタリな環境になっている。


昨日あれだけ暴れたので、ホテルの外にいたモンスターたちがこちらに押し寄せていた。

さらに多くのモンスターを集めようと、俺はクラクションを鳴らしまくる。


「パアアアアアン!」


巨大な車体に似合う壮大なクラクションの音が敷地中に響き渡る。


「パアンッ!パアアアン!」


クラクションの音を聞いたモンスターたちが、ぞろぞろと集まり出した。

回帰する前、モンスターにはもう懲り懲りだった。


やつらが現れる度に、毎回背筋がゾッとする思いをしたものだ。


当然と言えば当然かもしれない。

あの時は生き延びるのに必死だったのだ。

しかし今は違う。


次々と集まってくるF級モンスターたちを見て、俺は喜びを覚えた。

こいつらは皆、夢綺渚の成長の土台となるのである。


「夢綺渚、しっかり掴まって!これからモンスターを倒して、ガンガンレベルを上げるぞ!」

「本当に?私も一緒にいていいの?」

「もちろんさ。でも、今回だけだよ。一緒に戦っていい時とダメな時があるからね。昨日説明したこと、覚えてる?」

「うん、覚えてるよ!」


夢綺渚も今では覚醒者だ。

体に多少衝撃が加わることはあっても、怪我をするようなことはない。

ただHPが削られるだけなのだ。

これで安心して突っ走れる。


ドガガガガガッ──!


突っ込んでくるダンプトラックに、モンスターたちが次々と跳ね飛ばされる。


ドカーン──!ドガガガガガッ──!ドーン──!


塀に突っ込んでモンスターを群れごと潰し、バックをして別方向にいるモンスターたちに突っ込んでいく。


そして、その度に夢綺渚のレベルは上がり続けた。

昨日の俺みたいにレベルが爆上がりしている。

どうやらここにはC級モンスターはいないようだ。


俺と同じレベルにまでレベルアップはできないだろうが、少なくとも今の時点で誰よりも早いレベルアップを遂げていることは間違いない。


「きゃああっ!あははは!きゃっきゃっ!」


夢綺渚は悲鳴と歓声が入り交じったような声を上げながら楽しんでいる。

こいつらを片付け終わった後は武器を探すつもりだ。

これからはより計画的に未来に備えることができるのだ。


回帰前には想像すらできなかったことだ。

そのためにはキャンプ用の手斧よりも強く、持ち運びに便利な武器を手に入れる必要がある。


キャンプ用の手斧はもうすぐ最大レベルに達する。

そのため、武器としての潜在能力はほぼないと見ていいだろう。


一方で、ダンプトラックは常に装備できる武器ではなく、こちらも優れた武器とは言えない。


常に持ち歩くことができ、かつ殺傷力が高い武器と言えば、やはり刃物に尽きる。


殺傷力に限れば銃も申し分ない武器だが、この世界では生産が中断されてしまうため、よりいいものを求めるにも限界がある。

刃物の中で一番優れた武器は、おそらく刀や剣だろう。

強力な武器であればあるほど高い潜在能力を持っており、強化にも有利である。

今回の人生では武器を選べるだけの余裕がある。


回帰前だと他の覚醒者に先取りされていたが、今は誰よりも早く手に入れることができるのだ。

そう結論付けた俺は、目の前のモンスターたちを一気に轢き殺す。


ドガガガガガッ──!ドガガガガッ──!


モンスターたちの死体を横目に、俺はダンプトラックを止めた。


[広塚夢綺渚がレベル10になりました]

[広塚夢綺渚がE級になりました]

[広塚夢綺渚がレベル12になりました]


予想通り夢綺渚のレベルは爆上がりし、あっという間にレベル12になっていた。

これが何を意味するのか、当の本人は全く気づいていない様子だ。

しかし、いずれ自分の力を実感することになるだろう。

俺も大量のF級モンスターを倒したため、レベルが1段階上がっていた。

すでにD級になっているので、F級モンスターをいくら殺したところで、レベルが爆上がりすることはないが、1段階でも上がったならありがたいことだ。

その後、簡単に朝食を済ませた俺たちは、準備を整えてからコンビニを後にした。

いつまでもここに居座るわけにはいかず、他にも確認しなければならないことがある。

歴史は以前と同じように流れているのだろうか?


そのことを確認したかった俺は山頂から外部の状況を探るべく、山を登ることにした。




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