after ep.風の配達人

――月日は経ち、十数年後……スラム街 孤児院



「――……ってのが、ボクの初めての配達の旅だったんだよ」


 すっかり新顔だらけになったチビたちに昔話をする。

 あれから何年も空を飛び、配達を続けた。

 国内はもちろん、時には海を渡って外国にだって配達に行った。



「あーしの大活躍をもっと語ってよ~」


「リリスはお尻の唄がピークだったね」


 当然、ボクの横には賑やかな妖精がいつもいた。

 彼女との旅は危ない場面も多かったけれど、振り返れば楽しいものばかりだ。



「セイル兄ちゃーん、院長先生が呼んでるよ~!」


 すっかり大きくなった元チビがボクを呼びにきた。

 きっとまた、配達の仕事だ、今度の配達先はどこだろう?

 またリリスとの冒険の始まりだ。



「分かった、今行くよ」


 …

 ……

 ………

 …………


 いつも通り、エリーゼ先生から依頼を二つ返事で受け、チビたちが待つ部屋へ戻る。

 扉を開けようとしたが、漏れ聞こえるリリスの声に僕の手は止まった。



『セイルはすごいんだから、魔獣だらけの湿原だろうと、人同士が争う戦場だろうと、どんな場所でも最短最速でひとっ飛びっ!

風を味方につけて、大切な思い出も、想いのこもった品物も、何でも届けちゃうんだからっ!!


そんでいつしか、誰からともなくこう呼ばれるようになったんだぁよ……――』



――『風の配達人』って。

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