第7話 望む予想に過ぎない完結

初めにかかってきた日付、覚えていますか?」

「はい、しっかりと記憶に残っています。10ヶ月前程ですかね。固定電話では連絡先のブロックが不便だったので携帯電話に移行してからブロックしていました。」

そして今かかってきている最後の履歴とノートを照らし合わせ、何人目の電話なのかを確認すると、意外にも最後の電話は目前だった。

「曽祖父からかかってくる日は1週間後、ですね。」

直樹さんは漫画の仕事を蹴ってここまで来ていたらしく、また1週間後に訪ねると言い早々と帰って行った。

それからの1週間は真人と毎日連絡を取っていた。

他の人に打ち明け安心したのか、以前よりも明るい様子だった。

私は真人よりもソワソワしていたと思う。

約束の時間は、いつも掛かって来ていた午後9時。

当日、直樹さんは約束よりも1時間早く到着しており、じっと携帯電話の前に座っていた。

携帯が鳴った。

真人は震える手で応答ボタンを押す。

ノイズと共に声が聞こえてきた。



「ありがとう。感謝しているよ、賢三よ」


予想外過ぎる言葉だった。

3人は顔を見合せ、しばらく動けなかった。

八方塞がりの推理は断念することになった。

そうして1ヶ月後、真人から電話がかかってきた。

「今ひいおじいちゃんの遺書を見つけたんだ。書いてあった文を要約すると、今まで関わってきた戦友に対して感謝の言葉が書かれていたんだ。」

1枚の写真が入っていたらしく、そこには笑顔で肩を組んでいる戦友と曽祖父の姿が映っていた。


私は最後の推理を行った。

こう考える。


戦友たちの電話番号は丁寧に、規則的に書き連ねられていた。

愛する息子と離れるのが辛いため冷たかった。今まで関わってきた戦友は曽祖父の優しい性格に救われ感謝の気持ちを伝えるためにみんなの電話番号をノートにまとめた。

毎夜かかってくるのは賢三の子孫に感謝を伝えるべく、真人が出る日を待ちわびているから。

伝言「ありがとう」


これを読んだあなたはどう考えますか?

タイトルをもう一度読み直して見てください。


最後にあなたの頭にくっついたハッピーエンドを引き剥がす1つの推理をここに置いておく。


"よくやったな、賢三よ。上手くいったぞ。

この計画に協力してくれてありがとう。

そんな会話が録音データに混ざっており、それは設計者のミスで最後の電話に入り込んでいた。"

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デン話番ゴうのかン視 -あなたの推理には横槍が刺さる- 梶津(カジツ) @kajitsuS

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