第6話 見えてくる大きなストーリー
「直樹:今から会いたいんですが、何処に居ますか?」
真人家のマップを送ろうと思ったが、ここは地図に載っていなかった。
ここに家がある事情を話し、何とかここに来ることができた。
息を切らしながら玄関に立つ直樹さんを見て自分までもどかしくなった。
真人の部屋に誘導し、正座した直樹さんは話した。
「つい見落としていたことがあります。それは"大量に書かれていた電話番号は全て同じ番号ではない可能性がある"ということ。ずっと思っていたんです。なんだか辻褄の合わない推測。ここに、この可能性を含ませてみるとあるストーリーが出来上がるんです」
-曽祖父は戦争が大嫌いだった。簡単に人々は死んでいく世界は憎く許せなかった。戦争のない世界を望み、羨ましく思う。その気持ちが裏返ると、戦争を経験しない平和な世界を生きる曾孫の代までをも妬むこととなった。酷い空腹、理不尽な説教や罵倒の日々。もちろん曽祖父だけが耐えられない訳でもなく、戦う仲間の殆どはそう感じていた。
戦争の終わる頃の曾孫の代に攻撃をする方法。電話という1本の線は2人を繋ぐものであり、逃げられない監視の鎖でもある。
そうして仲間を集め、ノートを順番に回しながら自分の電話番号を署名のように書き連ねた。
電話会社に務めている息子を持つ戦友がいたため、ノートを渡し誰かの曾孫がある程度成長した中学生頃のタイミングでノートの左端から順番に毎夜掛かってくるよう設計させた。
全ての曾孫に攻撃をするより、1人に集中して攻撃する方が、精神的な苦痛も大きい。
伊藤賢三(いとう けんぞう)が選ばれた。
アグレッシブな彼の心は完全に黒く染っている訳ではなかった。ノートの最後のページに「最後の電話番号から掛かってくる電話にはこう伝言を残して欲しい。ごめんね、と。
話し終えた直樹さんは、真人に目を合わせ、こう言った。
「真人くん、この電話番号が書かれている分だけ掛かってくると思います。最後の電話を聞いてみて欲しい。初めにかかってきた日付、覚えていますか?」
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