第3話 推理とは

唸りながら頭を回転させていると、ある可能性を思いついた。

それは、”電話番号が書かれている回数分だけ電話がかかってきているのではないか”

というものである。

この推測を直樹さんに話した。

「辻褄は合いますね。もしもこの推測が正しかったと仮定した上で話し合いましょう。推理とは仮定と合理的かどうかの判断、予想の繰り返しですから。」と言うと、続けざまにこう話した。

「後もう一つ仮定しなければならないことがあります。それは、ノートにある電話番号の書かれ方についてです。規則的に丁寧に書かれているのか、殴り書きのように乱雑なのかで彼の曽祖父の心情は読み取れます。」

私は思わず携帯電話を取り出したが、真人の連絡先アカウントはもぬけの殻であったため全て推理で考えることにした。そして私は一方の書かれ方に絞って推理することにした。

「私(三瀬 和)は前者の規則的に書かれている方だと思います。

殴り書きで書くものとして数字を用いる呪いは納得しがたいです。」

「そうですね。では、罫線の書かれたノートに書かれているとしましょう。行でおおよその電話番号の数が推測できますね。そして”ノートいっぱいの”についてです。あなたはどのくらいの量の数字が埋まっていると思いますか?」

うーん・・・8割とか?でも数字にしては多すぎるなぁ。

「あの、私は半分ほど埋まっていれば十分多いと思います」

「少なくとも半分以上、つまり・・・一行に3回書けるから、30行のノートとして、90個。それが15枚で・・・うん、

1350回以上電話番号を書いていることになりますね。」

嘘だ。そんな膨大な量の数字を書けるわけがない。6桁の数字だから、書いた数字の個数なら、さらに×6。これは流石にありえないと考えた方がいい。

「仮定を変更しましょう。後者だった不規則に書かれた方で。」

私は決心したような顔つきで直樹さんに話した。

「そうですかね。私はあり得ると思います。さて、あなたは終わらない課題があった場合、そして期限が目の前にせまっていた時、どのように切り抜けますか?」

「友達に手伝ってもらう・・・とか?」

「一緒に書いてもらうだとか、書く文を読み上げることで効率を上げたりしますよね。」

私はハッと気づき、妙に鳥肌が立った。

「これって一人で書いたわけではない。そうですよね、」

「はい。戦士という言葉から、恐らく戦時中の曽祖父にすべての電話番号を書く時間はないでしょう。したがって、戦友と一緒に書いていた可能性が高いです。」

”キーンコーンカーンコーン”

喫茶店の付近にある小学校のチャイムが鳴った。

「そろそろ切り上げましょうか。すみませんが、漫画の締め切りが迫ってて時間が取れないんですよ。後は頑張ってください。」

寂しくはあるが、漫画家に多忙な時期があることは知っている。

仕方なく帰路を歩いていると、トン、と肩に何かがぶつかった。

寝巻を着た、自分と背丈が似ている青年がこっちを振り向いた。

久しぶりで身長が伸びていたため直ぐには気づかなかったが、確かにあいつだった。


「三瀬、和なのか?」

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