第2話 推理スタート

帰宅した私はずっと心残りな点について考えていた。なんだか何かを見落としたような。そんな気がする

 ポテトチップスを取りにリビングへ行く途中、父がドキュメンタリー番組を真顔で眺めているのが見えた。

やるせない気持ちを抑えるつもりで、父に話した。

「父さん、今日健と話したことなんだけどさ・・・」

「ふん、確かにこれは裏がありそうだ、あいつに聞いてみろよ。連絡してやる。」

そうして携帯電話のボタンを手際よく押した後、「直樹、和が久しぶりに推理したがってるんだよ、前みたいに一緒に考えてやってくれないか。」と懐かしむような声で話した。

直樹さんは父の友人で、私のことを「和(かず)くん」と呼んでいる。

すぐに答えは返ってきて、予想通りYESだった。

翌日の11時から会う約束をし、布団へ身を投げるようにダイブした。

「懐かしいな、よく電話したもんだ。確か直樹さんの電話番号は090-3521-1526だったような。」

 野口英世が4人も私の手にやってきた。先月は2人だったのに。

「今年から高校生だろ。遊ぶ規模も大きくなるから。そうだ、明日直樹と会うんだから寝過ごすなよ。」と寄り添ってくれる優しい父を横目に母の仏壇を眺めていた。

―そうだもんなぁ、もう高校生。しっかりしないと。

 約束の当日、直樹さんはもう喫茶店の席に座っており、アイスコーヒーとオレンジジュースが卓上に置かれていた。

「今までの作り意味怖話とは違うんですよ。内容は~・・・」と説明すると、

「なるほど。和くん、さっそくいいでしょうか。」

久しぶりに馴染みのあるこんな調子の言葉遣いを聞いた。

「少なくとも、この真人君は祖父に何か心当たりがあると思いますね。あと何か違和感を感じませんか?”ノートいっぱい”

果たして本当に沢山書く必要はあったのでしょうか。もしかすると、書かざるを得なかったのではないでしょうかね。」

同じ言葉にひっかかる直樹さんを見てなんだか嬉しくなった。引き続き直樹さんは話す。

「なぜ夜なのでしょうか。皆が家にいる時間帯を狙い必ず出て欲しかったから?」

不気味な推理をするなあ、と思いながら真人からのメッセージを読み直す。

確かに、”呪ってやる”とか”殺してやる”とか、その類の単語を書き連ねる場合は納得がいくが、ただ6桁の数字を書き続ける思考は理解できない。


唸りながら頭を回転させていると、ある可能性を思いついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る