第5話

なんとか舞さんの誤解を千早さんと解き、店に来た日から数日がたった。

あれからなぜかよく舞さんに絡まれるようになってしまった。

いつも、本を読むか寝ている時間は最近、ずっと話している気がする。

コーヒーのことだったりバイトのことそして勉強のことなど話が底をつかなかった。

そしていつも舞さんはその話を楽しんでいるようで笑顔も絶えなかった。

移動教室から帰っている時も話しかけられそこで気になっていたことを聞いてみることにした。

「舞さん、なんでそんなに僕に絡むの?」

そう聞くと驚いた表情をしたのち申し訳なさそうな表情になってしまった。

「もしかして、邪魔してたかな?それなら謝るから」

「いやいや、そうじゃなくて、なんで僕なんかと話してるのかなって、他にもいつも話している人はたくさんいるのになって」

そう聞くと、ホッとしたような感じで言ってきた。

「私はね、もっと篠原くんと仲良くなりたいなって思ってる、それに僕なんかって自分を卑下しないで欲しいな」

そういうと僕の目の前に立つとニコって微笑んだ。

「だって、私は大切な友達だって思っているから」

その目を見ても嘘偽りがなく心からそう言っているのだと感じた。

「ごめん舞さん変なこと聞いて、もともと人づきあいが苦手だったからさ」

そういうと、何か考えているような感じではなしかけてきた。

「だったら、もしよければだけど今度みんなと遊びに行かない?」

「遊びに?」

「そう!クラスの人と行くからみんなと仲良くなれるんじゃないかなって」

そう言って胸ポケットからメモを取り出して、その紙に何か書き込み僕に渡した。

「はい、これ私の連絡先、これから使うかもしれないから持っておいて、帰ってら連絡してね」

「ああ、わかったよ」

そういってなぜか舞さんは先に教室に戻ってしまった。


それから学校も終わり僕はバイト先で舞さんの連絡先の追加をした。

僕の連絡先は親と親せきくらいしかないので舞さんが初めての友人となった。

スマホを触っていることが珍しいので店長がちょっと覗いてきた。

「なになに、めずらしいね友人との約束かい?」

「まあ、そういうことですね。行くかはわかりませんけど」

「そういうのって行っていたほうがいいよ」

「店長はなんかそういうの結構行ってそうですよね」

「まあ、高校の頃はめっちゃ遊んでたし楽しんでたとは思うよ」

「店長らしいですね、そういえば姉とは何で別れたんですか」

そう聞くと、少し店長の笑顔が固まった気がするというかホントに止まってしまった。

「それ、聞いちゃうの?弟だからいいそうじゃん」

「いや言いませんよ、そこまで口は軽くないと思いますたぶん」

そういうと店長ははあ~と大きなため息をはき話し始めてくれた。

「まあ、僕らは時間が足りなかったんだよ」

「というと?」

「僕は今カフェの店長をして生活を成り立たせているけど、彼女はまだ夢があってそれに向かってほしかったんだ。こんな、安定してない職業のせいで被害をこおむってほしくなかったからね」

「なるほど」

「それに、このカフェも親からもらったいわば形見のようなものそれを手放すことはしたくなかったからね、だから告白したのは僕だけど振ったのも僕ってわけ」

そう言ってまたため息を吐いた。

「でも姉はまだ多分ですけど店長のこと思っているんじゃないですか?」

「それはどうして?」

「だって、僕を彼氏が運営しているカフェで働かせるってありますかね?

嫌いだったら信頼もしていない人に身内を任せることなんてできないと思いますけど」

「たしかに」

それだけ言うと店長は立ち上がり背伸びをした

「まだ、遅くはないのかもな、

さっ時間も時間だから来た時のために準備するよ!」

「わかりましたよ」

店長は何だか少しうれしそうだったのはみまちがいなのだろうか?





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