第4話

明日を楽しみにしているとそれはなかなか来ないものである。

いつもはすぐに終わる授業の時間もいつもより長く感じてしまう。

少し教室の外の廊下などを眺めていた。

「おい、篠原!どこ見てんだ?わかるなら問題解いてもらうぞ」

「あっ、すみません」

「じゃあ、この問題解いて貰おうか」

「えっ?解くんですか?」

そう言って黒板に書いてある問題をトントンと叩き始めた。

僕は仕方なく席を立ち、先生が求めている答えを書き出した、幸い勉強は得意なのだ。

解けたのが少し意外だったのか先生は少し驚いたような腑に落ちない顔をしていた。

「解けるなら、授業には集中しておくように」

そう先生から最後に鍵を刺されてしまった。

それから少し経って授業は終わりを迎えた。

僕が少し椅子に座って体を伸ばしているとなぜか舞さんがやってきた。

「ねえねえ、篠原君、さっきの授業は災難だったね」

「まあ、自分が集中してなかったのがダメだったんだし」

「でも、集中してなかったのは何か理由があるんじゃない?」

そう言って心配そうに顔を見てくるためこっちまで恥ずかしくなってしまう。

「何?そんなに顔を見て?」

「いや、顔色は大丈夫かなって」

「そこまで気にしなくていいよ」

そういうと、舞さんは首を横に振った。

「あなたも大切な友達なんだから体調崩したりしたら心配になるからね、ちゃんときついなら休むんだよ」

そう言って自分の先に戻っていく、

なんか、母親に言われているみたいで不思議な感じがした。

「友人か、多分、あの心配に裏なんてないだろうけどまだ信じられないな」

そんなことを呟きながらまた次の授業の準備をした。

そんなこんなで授業も終わりを迎え、僕はいつものようにカバンを背負ってバイト先へ向かった。

ちなみにだが僕が勤めているバイト先はカメリヤという名前のカフェだ。


バイト先に着くと店長が珍しく奥の部屋で仮眠を取っているのが見えた。

その手元には一枚のポスターが置いてある。

「バイト募集、うちのカフェで働きませんか?」

店長は最近お客さんも増えてきたことから新しくバイトを雇おうとしているのだ。

確かに今の所バイトは僕しかおらず来ない日は店長が1人で店を回している、確かに2人でも大変なのに1人でこなすとなると猫の手も借りたいという気持ちにもなるだろう。

そんなこと考えていると店長が目を覚ました。

「あっ?!海馬くんきてたんだ」

「おはようございます、バイト増やすんですか?」

そう聞くと、少し考えた表情で聞いてきた。

「バイトは増やせたら増やそうかなって思ってるけど、無理にはいいかな」

そう言って作りかけていたポスターの紙をくしゃっと丸めてゴミ箱に捨てた。

「でも、1人だと大変ですよね、僕がいない時どうしているんですか」

そう聞くと店長は少し笑ってこっちを見た。

「海馬君がいない時は先に作りおきをしておいて大体頼まれる商品は見当が着いているから」そう言って冷蔵庫を指差した。

気になって中を見ると、そこには少しだが作り置きしてあるスイーツなどがあった。

「なるほど、考えましたね」

「まあ、少し味が落ちるけど、こうでもしないと回せないからね」

そう言って少し苦笑いをしていた。

でも、味が落ちるのは少し考えものだ。

そんなことを考えながら準備をしていると,お客さんが入ってくる時間になりお店の中に会話が増えてきた。

僕らの店のコーヒーは少し時間をかけて淹れているのでお客さん一人の時間は長くなってるがそれもゆっくりできる時間となり、僕はいいのではと考えている。

それから少したって人も少し減ってきた、少しそわそわしていたのが店長にもばれたのか、少しにやにやしながら聞いてきた。

「海馬君、もしかして、誰か店に呼んでるの?」

「よくわかりましたね」

そう聞くと少しにやっと顔を笑わせて聞いてきた。

「もしかしてだけど、この前の二人の女子?」

「よくわかりますね」

「でも、意外だな、海馬君が彼女連れてくるなんて」

「彼女じゃないですよ、それにそんなまだ仲良くなってないですし」

「嘘だ~少し仲がいいだけじゃバイト先に呼ばないよ」

まあ、言われてみればそうだ。

バイト先に知り合いを呼ぶのは本当に仲のいい人だろうからと店長は考えたのだろう。

そんな、話をしていると話の二人が入ってきた。

二人はカウンターの席に座り、舞さんは少し申し訳なさそうにしていた。

「篠原君、なんかごめんね、姉さんがまた行こうって言ったから」

ちらっと千早さんのほうを見ると目でこの前のことを訴えていた。

「じゃあ、コーヒーの淹れ方教えるよ」

そう言って僕は見やすいようにいつもより見えやすいカウンターの目の前で作り始めた。

「まず、挽いてあるコーヒー豆を少し温めたコーヒーフィルターに入れていき

沸かしておいたお湯を少し冷ましてから少しずつ外側からコーヒーの粉を崩すように入れていく」

舞さんは見て覚える派なのか、じっと見ているが千早さんはメモを細かいところまで取っているようだ。

コーヒーにお湯を入れていくとコーヒーの香りがあふれてくる。

「家にあるケトルとかでは難しいと思うけどゆっくり優しく入れるのも苦みが出ないコツなんだ」

「「へー」」

そう言って二人は全く同じ反応を見せたので双子なんだなと感じてしまう。

「そして三、四回にかけてお湯を注いでいく、うちは三分前後くらい時間をかけて入れるのがこだわりなんだ、このほうが苦みも出ないしね」

「そうなんだ」

僕は、そこに慣れた手つきで猫のラテアートを作る。

「はい、こっちが暁月さんので、こっちが千早さんの」

そう言って僕はこの前出したコーヒーを二人に渡した。

「ありがと、、?」

しかし麻衣さんは何か引っかかっているようだった」

「どうしたの、舞?」

「いや、篠原君とお姉ちゃんって仲良かったっけ?」

「あ~」

あの時気づかなかったが普通に千早さんと呼んでしまっていたようだ。

「まあまあ、仲が良くなったんだよ」

「ええ、ちょっとした縁でね」

そういいながら、千早さんは何もなかったようにコーヒーを飲んでいる。

「でもほっとしたな、お姉ちゃんにもこんないい彼氏ができて」

「「彼氏?!」」

千早さんはいつも凛としているのに今は飲んでいたコーヒーを急いで飲み込みせき込んでしまった。

「舞、急にそんなこと言わないで」

「暁月さん、僕は千早さんとはそんな関係じゃないから」

「ほら、私には暁月さんなのにお姉ちゃんは千早さんってよんでるよね」

また知らないうちにやってしまっていた。

「舞、本当に違うから、それに篠原君も対応に困っているでしょ」

そういうと、質問はなくなったが少しにやにやしている舞さんがいた。

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