3.GRADATION
3-1
態度の大きい入道雲が東の空に居座っていた。蝉の声はあまり聞かなくなったが、陽射しは猶もぎらぎらと降り注いでいる。緩やかな坂を登る私の額には汗が滲んだ。スカートの中を空気が抜けるのが気休めだった。
隣を歩く冬木は堅苦しい表情をしていた。良い機会だから楽しい会話でも交わしたかったが、電車の中で話しかけても張り合いがなかった。とはいえ沈黙が続くのは冬木も気まずいのか、時折腕時計を見ては窓外を眺めて「暑そうだな」と呟いたりした。私はと言えば、髪をいじりながらいじけただけだ。
深夕さんは文化祭やら部活動やらで忙しかったようで、都合が付いたのは九月中旬になってしまった。ただ、それでも構わないため今日、私たちは天理に赴いたわけである。道中、青空を背景にして赤信号がノスタルジックに見えた。
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