第2話 なつかない猫
黄金週も最終日、ラストスパート。
田舎の港町であるここいらに帰省してきた
ご近所の家族らの
「じゃあまたくるねー」
「おばあちゃん、ばいばーい」
なんて声たちの交差が
何羽かのはよ帰りたいカラスのかぁかぁ声、
しかも超ハイレゾサウンドをバックに
ゆるく聴こえてきております。
うちにはふたりの息子がおりまして
ふたりとも、一応自立したようなことには
なっているのだけど
次男のほうは半年ほど同棲していた彼女と辛い別れを経験、
目下、鬼母なわたしのいるこの実家に
ずっぽり居候しておるわけです。
なので、帰省もなんもない。
街で暮らしている長男とは一昨年、
しょうもないことで喧嘩したときに
「あなたのことを後生、母親とは思わないわ俺」とか
マンガみたいに言い放たれ、
母であるわたしも
「wowそぉですかwow、それはどうもありがとおかあさん」
などと中途半端に笑いをとろうとして
逆に煽り応戦してしまったため
以来、帰省もなんもない。
そんな素敵なわたしの息子らのうち、
居候の方、
パンツまがいの水着一丁でそのへんを歩く
自由な変態次男(呼称さりげなくランクアップ)は
小さい頃から動物大好きっ子でして。
いや大好きっ子て、いまでも言うんかい。
そういえば、
幼稚園児の頃はシルバニアンファミリーに激ハマりして
近所の女の子連中と一緒におままごとをして遊ぶ
唯一のやさしげな男の子であったよなぁと
思わず遠い目に。
いやそれも、半端に関係ないから。
とにかくそんな動物好きな次男に、
うちの猫ルルちゃん♀が
どういうわけか、全然なつかないのですよ。
ルルちゃんとはもうかれこれ
二年以上、家族として一緒に居るのだけども
次男の気配を感じると、必ずびゅっとどこかへ
逃げ込んでしまう。
つい先ほども、
ひゃーひゃー言いながら帰ってきた次男の声をききつけて
即、わたしの部屋へダッシュで逃げていくルルちゃんの
けたたましい足音が響いた。
代々うちに居た猫達は、動物好きな次男に
かならず一番になついて、なにかというと
次男臭のする次男部屋に入り浸っていたのに。
次男のお腹の上に乗って眠ったり、
撫でられてゴロゴロいわせて
どうみても超メロメロになっていたのに。
ルルちゃんだけは番外猫で、
徹底的に次男を避けてる雰囲気。
おまえさー、
絶対なにかいらんことしたやろ、ルルちゃんに。
・・・まず疑いから入る鬼母が聞くと、
「は??? するわけねーじゃん!!!
ガンミちゃんに、の話やろ?」
・・・そもそもガンミちゃん、て
だれ。
この猫にはルルちゃんという
かわゆい立派な名前あるんですけど・・・
「おれが見たらさ、百パー、ガンミしてくるんよ。
もう瞳孔ありったけ開いて、
目をまんまるにして固まって、みてくるわけ。
おれのことかっこいいと思ってみてるんやろって思ってさ、
おれも真似してめっちゃ目をでかく開いて
きみもかわいいね♬ガンミちゃん♫って
言っただけー」
・・・・・・。
あらためて、ガンミちゃんと次男に名付けられた猫
本名ルルちゃんは
自由すぎる居候男のおかげで
きょうもそっと気配を消して
わたしの部屋のベッド横に設置してある
ちと高かった猫ちぐらはスルーして、
部屋の片隅に置き去られた
ぼろぼろのAmazonの段ボールの中で
背中を向けて、スンスン言いながら
寝たふりをしている。
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