救出。竜神との交流

……知らない天井だ。


なんてテンプレを挟みつつも、本当に知らない天井で困惑する。服も変わっているが……シャツ1枚なのはどうかと思う。


私が寝ていたのはかなり大きくて、上等なベットだった。とても久しぶりのベットの感覚に泣きそうになる。周りにあるクッションを集めて埋もれる。



……はぁぁぁ、幸せ。



クッションをひとつ抱きしめたままあまりを見渡す。……女の子の部屋っぽいな。もしかして、最後に見えた人たちに助けられたのだろうか。


トテトテと部屋を歩き回る。

……あ、洗面台だ。顔洗いたかったし、借りようかな……


そう思い、洗面台に近づき……驚愕することになる。



……誰?この美少女。



ほっぺを抓ると鏡の中の美少女もほっぺを抓る。右手を上げても、左手を振って見ても、鏡の中の美少女は同じ動きをする。


これ、もしかしなくても、私?

なんで!?いや、少し面影は残ってるけど、めちゃくちゃ美少女になってる!髪の色と目の色が違うし、髪サラサラ肌つるつるモチモチ、私はめっちゃ驚いてるのに表情一つ変わらない表情筋。

これは美少女だ。


深い青色のサラサラロングヘアーに、これまた、深い青色で、ぱっちり二重の瞳。……何故か左目の黒目部分……黒じゃないけど、黒目部分に金色の魔法陣。


厨二っぽいのに様になってる。さすが美少女


……この魔法陣、確か、竜神を召喚した時の……


『その通りです』


ふぇ!?なんか頭の中で竜神の声がする…!


『ふふ。やっと目が覚めたようですね。改めまして、私が竜神のラストと申します。以後よろしくお願いしますね』


……なんか、口調違くない?


『あれは、人前に出る時に威厳を意識した口調なのです。こちらが素ですね』


なるほどね。というか、なんか姿が変わってるんだけど何か知ってる?


『ええ。人の身では、私とリンクすると身体がその力に耐えきれず自壊してしまうのです。なので、貴女の身体は自壊しないように、変化したのでしょうね』


その、リンクって言うのは?


『左目に魔法陣が浮かんでいるでしょう?あとは左手薬指の指輪。これらが私とリンクしてる証です。リンクとは簡単に言えばこうして念話が出来るようになったり……まあ、一緒にいるための契約みたいなものです』


……なるほど?てか、指輪初めて気づいた。この宝石凄い綺麗。


『そうでしょう?私の代わりのようなものですからね。貴女に危険が迫ると私が強制召喚されるようになっています』


なるほど、それは頼もしいね。ちなみに……ラストさんは今どこに居るの?


『貴女の中に存在しています。実体は無いですが出ようと思えば出られますよ。あと、さん付けしないでもらいたいですね。どうぞ、私のことは呼び捨てで』


……わかった。私は月影 七海。よろしくね、ラスト。ちなみに出てきたら竜の姿のまま?それとも人化できたり……?


『よろしくお願いします、七海。人化できますよ。むしろ、今後は竜の形態にはあまりならないかと。身体が大きくて不便ですしね……っと誰か来たみたいですよ』


……誰だろう。もしかして、この部屋の持ち主?きっと助けてくれた人だから、お礼を言わないと。



「ん?あれ、起きてたんだ。おはよう。気分はどう?体調が悪いとかどこか異常があるとか無い?」


……美少女だ。紛うことなき美少女だ。

金髪セミロングで瞳も金色。……かわいい。

と言うより、なにか見覚えがある気がする……そう、確か……



乙女ゲームのヒロイン!金城 光ちゃんだ!



嘘!ちょー可愛い!てか、なんでヒロインが?もしかしてここ乙女ゲームの世界?



……あのゲームにこんな酷い仕打ちをしてくる奴らが居るんだ。……良くも悪くもここはリアルって事ね。


とにかく!お礼を言わなくては!


「えっと、助けてくれたんだよね?ありがとう」


目一杯の笑顔でお礼を言う。見よ、この美少女の笑顔を!私も今は美少女だからね!


『七海。全く表情が変わってないよ』


そんなバカな。私の中では後光が差す位の笑みを浮かべたはずなのに!……表情筋は応えてくれぬのか。


そんなことを思っていると。


「ううん。むしろ、もっと早く助けてあげられなくてごめん。酷いこと沢山されたよね?……本当にごめん」


そう言って抱き締めてくる光ちゃん。かわいい。


「全然平気だよ。だから謝らないで?」


頭を撫でてやるとより強く抱き締めてくる。

すると。


『は?流石にもうダメ』


なんてよく分からないことを呟きを聞いた瞬間。



指輪が光り出した。……え?なんで?



「おい、小娘。七海に引っ付きすぎです。即刻離れなさい」


「はぁ?そんなこと言われる筋合いないんだけど」


「ある。七海は私のものだとさっき言ったでしょう」


「嫉妬?見苦し〜。本当にラスト?エンヴィーの間違いじゃないの?」


「そんな訳無いでしょう。だいたい、感動的なシーンだと思い大目に見てあげていたと言うのになんですかその態度は」


「全然大目に見れてませんけど?もっと器を広げなよ。竜って図体だけデカいのね」



え?え?なにこれ。なんで急に一触即発の空気になったの?しかも二人とも全く意味のわからない話してるし。色々ツッコミどころが多い。二人とも知り合いなの?なんなの?


「二人とも。落ち着いて?話についていけないんだけど……」


ハッとしたような顔を浮かべる二人。


「「なんでもないから、気にしなくて大丈夫」」


「いや、なんにもないって事は……」


「「何にもないから。ね?」」


「……はい」


これ以上は無理だね。

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