検査、及び実験

目が覚めると、目の前に昨日の男が立っていた。女の子が寝ている部屋に無断で入るとは無礼な奴だ。……なんて考えつつも、一応挨拶しておく。


「……おはよう」

「えぇ、おはようございます。今日はとてもいい検査、及び実験日和ですね」


どんな日がそれに当てはまるのだろう。皆目見当もつかないが、頷いておく。


「では、本日はまず、貴女の身体に異常がないか……いわゆる健康診断ですね。簡易的なものではなく、血液検査からレントゲン、内臓系に病気が無いか……など、隅々まで検査をさせていただいた後、適性検査及び神力実験を行います」


健康診断なんだ、意外と拍子抜け。でも、神力実験ってなんだろう。まだまだ不安が残るが、どうしようもないため、渋々男の言うことに素直に従う。


「では検査を始めさせて頂きます」


そう男が言うと複数の人が様々な機器を持って部屋に入ってきた。瞬く間にベットに寝かせられて検査を受けた。結構かかるものだと思っていたが、ものの2時間ほどで終わった。


「ふむ、至って健康体。異常などは見られませんね。良い事です……それでは続けて、適性検査も行いましょう」


そう男が言うと、またもや、謎の機器を持ち込んでくる人たち。さっさと準備をし始め、私も何故か手足をベットに拘束される。


「……何する気?」

「ただの適性検査ですよ……まあ、一般的なものではありませんがね」


そんな不穏な発言をしつつ私の首に謎の機器を嵌めてくる。

だいたい適性検査とはなんなのだろう。なんの適性を調べるのだろうか。


「それでは、まずは魔力そのものから流してみましょうか。今から貴女の体に無理やり魔力を流し込んで飽和させます。では行きますね」


魔力……?この世界には魔力が存在するのか……つまり魔法なんかもありそう。なんて思考していると……



……首の当たりから、違和感が……ッ



「なに、これ……いやっ痛い!待って、や、痛い痛い痛い!…ッ!!あぁぁぁぁっ!!」

「なるほど……やはり異界から来たものは魔力適性が無いのか……」



死ぬ死ぬ死ぬ!全身の血が沸騰してるみたいに身体中が熱くて、今にも爆散してしまうかのような、痛みが全身を駆け回ってる……!

手足の拘束具をガチャガチャと鳴らして抵抗するもビクともしない。



「いやぁぁぁ!もう、やめっ、あぁぁぁぁ!!」




すると、フッと突然身体が軽くなり、痛みが引いた。……終わった?


「魔力そのものを受け付けないみたいですね。念の為、火、水、風、土、雷、光、闇、全ての各属性魔力も試しておきましょうか……まあ結果は同じでしょうがね」



「うそ、いや、いやだ!やめてよ!こんなことしないで……やだ!」



必死に泣いて懇願する。今の激痛があと、7回?絶対に無理。今度こそ死んでしまう。みっともなく泣き喚いて許しを乞う。

しかし無情にも次の魔力が私の身体の中に無理やり入って来て、全身を駆け巡る。


痛い、苦しい、熱い!どうしてこんな仕打ちを受けなきゃいけないの!誰か……誰でもいいから助けてよ!!



そんな叫びは誰にも届くことはなく、淡々と私の身体に魔力が流されていく。全ての魔力は等しく私に激痛を与えた。


「やはり、全適性無しですか。予想通りですね。ほら、拘束具を外しましたよ。立ちなさい。次は神力実験です」


男が何かを言って居るがよく聞こえない。さっきまでの拷問のような検査のせいで、身体の痙攣が収まらない。筋肉が正常に働かず体を動かすことができない。身体から何かが抜けていく感覚がする。生命力だろうか?もしそうであれば笑えない。


「はぁ、全く。手間取らせないでください」


男が私の髪を掴んで無理やり立たせる。でも足に力が入らずその場にへたり込んでしまう。


「面倒くさいです、ねっ!!」


鋭く硬い靴のつま先部分が私のお腹にめり込む。一瞬息が出来なくなり、その直後軽く吹っ飛ばされる。


「ぐっ……!ゴホッゴホッ……あぁ……」

「全く軟弱ですね。そんな事では竜神とリンクした時に耐えられませんよ」


無理やり検査をさせられ、暴力まで振るわれる始末。初めて、心の底から元の世界に帰りたくなった。少なくともこんな拷問のような事をされることは無かった。


「さあ、次に行きますよ」


そう言って、私を引き摺って違う部屋に連れていく。私は恐怖で抵抗できなかった。次は何をされるのか…そう怯えることしか出来ない。


次に連れてこられた部屋の床には魔法陣が描かれていた。真ん中に大きな魔法陣。それと連結されている様な魔法陣が七つ。その七つの魔法陣の上にはそれぞれ、違う色のクリスタルのようなものが浮かんでいた。


「あれは各属性の魔力が宿った魔力宝石です。あれからは常に強力な属性魔力が流れており、真ん中の魔法陣とリンクさせると真ん中に魔力が流れるようになっています。……貴女にはあそこにいて頂きます」


魔力……?つまり、さっきのやつと……一緒……い、嫌だ……また痛いやつ……


「ほら、さっさと行きなさい!」


蹴り飛ばされ、私は真ん中の魔法陣の中へと入ってしまった。すると魔法陣の端から薄い光が伸びて、結界のようなものをつくりあげた。手を当ててみるとよく分かる。非常に硬い壁ができてしまったのだ。



「いや!いやぁ!出して!出してよ!お願いっ!ここから出して!酷いことしないでっ!」

「七つ全てリンクさせると竜神を呼び出してしまうから……今日は2種類にしておきましょうか」


赤と青の魔力宝石の魔法陣が光ったかと思うとその光は徐々に魔法陣を伝ってこちらに流れてくる。


そして、真ん中の魔法陣に触れた瞬間。


「あああああああああああぁぁぁ!!痛い痛い痛いぃ!!」


先程よりも激しい痛み、おそらく2倍程の痛みが私を襲う。永遠とも取れる時間、魔力を流され、実験され続けた。


「ふむ、いいデータが取れたよ。やはり、フィルターの様なものだね。魔力を流すと、貴女の身体にあるフィルターのような何かによって神力に変換され、外に排出されている……なんとも面白い」


男が何やらブツブツ言っているがそれどころではなかった。私はまたズルズルと引きずられて元の部屋に投げ込まれた。


何も考えたくない。なんの気力もない。

私は泥のように眠った。

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