竜神と実験少女〜美少女ムーブでチヤホヤされたい〜(連載休止)
暴走天使アリス
美少女
美少女とは素晴らしいものだ。尊いものだ。何をしても許される、何をしてても可愛い、かっこいい、美しい、儚い。そして、そんな美少女同士の百合も素晴らしいものだ。世界で最も尊ばれるべきものなのだ。
だからこそ、私も美少女になりたいと、そう願った。
だけど、現実とは残酷なもので、私の容姿は中の上くらいのパッとしない容姿。もちろんブスではないし、産んでくれた両親を恨んだことも無い。だけど、やっぱり夢を諦めきれなくて、色々。本当に色々な努力をした。
毎日のお手入れは欠かさず、丁寧にやった。髪のケアも、肌のケアも、色んなものを試して、最善を選んだ。スタイルを良くするためのストレッチや運動を欠かさず行い、お淑やかな仕草を勉強し、一挙手一投足を美しく見えるように意識して生活した。まるで、王女の淑女教育のような生活を日々行った。
ファッションセンスを磨き、化粧の技術を磨き、コミュニケーション能力も磨いた。
両親に頼み込み、様々な習い事を修めた。習字にピアノ、英会話に空手とスイミングもやった。美少女ならやっていそうなことは全てやった。
結果、私は完璧なまでの優等生になった。……でも、どれだけ磨き上げても、せいぜい上の中くらいだ。上には上がいる。どうやったって努力じゃ勝てないほどの容姿に恵まれ、美少女してる人達が居る。
私は、羨んだ、嫉妬した。でもだからって諦める私ではない。努力、努力、努力、努力。
……でも報われない。努力は報われる?笑わせるな、どうやっても天然ものには勝てなかった。
そして理解してしまった。産まれた瞬間に既に決まっていたのだ。美少女か否か。
全てを投げ出したくなった。何もかも無意味だった。でも、私の築き上げてきたものを簡単に壊してしまうのは流石に躊躇ってしまう。私にもメンツがあるのだ。ここまで結構可愛い優等生として生きてきたのだ。途中で投げ出すなんて許されることではなかった。
みんな期待している。容姿もまあまあで、成績も学校一。両親も、先生も、友達も。私の将来に期待している。大物になるぞ、将来安泰だな、どんな事でもかなえられるだろう。そう言われてきた。でも叶ってない。どれだけ賢くても意味が無い。私の夢はただ一つ。美少女になる事だ。
成功してお金を稼いで整形でもしろって?そんなの美少女じゃない。どれだけ成功したって意味が無い。私から言わせてもらえば、それは成功でもなんでもない。
何もかもやってきた。あとは容姿だけなんだ。でもその壁は何をどうやったって越えられない壁。生まれた瞬間に決まってしまった運命。
……なら、そんな運命が決まってるこの世界なんて、意味が無い。何もかも、価値のない、無意味な世界。
価値のない世界……そう判断した瞬間私の足元が白く光り始めた。
何、これ。魔法陣?
よく分からない魔法陣のようなものに囚われ、今までとは比べ物にならない光に包まれ、意識を手放した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
……ここは……どこ?
よく分からない無機質な部屋に私は居た。
窓も無いし、色も無い。真っ白で、必要最低限のものだけが置いてある部屋。
……まるで実験施設のよう。
そんな感想を抱いた。実際にその施設を見た事があるわけじゃ無いけど、創作物なんかでよく見る。要するに、偏見のようなものである。
そう思考を巡らせていると、仰々しい音を立てて視線の先にある扉が重々しく開いた。
「やぁ、初めまして、神と繋がるものよ」
やってきたのは全身真っ白の服を来て、変な仮面を被って顔を隠し、ご丁寧に声まで機械音声に変換した、多分男。
「……ここは?貴方は誰?神に繋がる?」
「まあまあ、そんなに焦らないで下さいな。混乱しているのも無理はない。急にこちらが召喚したのだからね」
何……?召喚?
最後に見たあの光は召喚される時の光だったって事?とにかく、私が口を挟むと話が一向に進まないので、黙っておく。
「ふむ、中々に空気の読めるお嬢さんだ。では、ある程度の説明を。
まず、私はこの研究施設の代表を務めている者です。名は名乗れないのですが……まあ、代表とでも呼んでください。そして、召喚した理由についてですが……主に検査、実験、実行と言った風になっています。我々が召喚するために絞った条件が竜神と繋がれる者。そして、召喚するための絶対的条件として、その世界に欠片も未練が無いこと。貴女はこの2つを満たしたため、ここへ召喚されたのです。まあ、お教えできる情報はこれで全てになります。明日から本格的に検査を始めますので、それまではお好きにお過ごしください……ではまた明日」
待て待て待て待て。情報が多すぎる。とりあえず整理しよう。
まずまず、竜神ってなんだろうか。その竜神と繋がれるって私の事、で合ってるのだろうか。ここは神が実在する世界なのだろうか。まずまず、別世界が存在することに驚いている。そしてそれを召喚する技術もあると。
……最後に、召喚条件について。世界に欠片の未練も無いこと……か。
確かにあの世界での私の存在意義は無かった。だから、未練なしっていう風に処理されたのだろう。実際、別世界に来てしまって居るけど、帰りたい、とは未だに思っていない。思えていないのだ。
どの世界であろうと美少女で無い限りは私に生きている意味など無いのだ。
……この世界にも未練は無いけど、他の世界に召喚されたりするのか?
色々な疑問が浮かんでくるが、考えても分からないため、やめる。
それよりも明日のことだ。何やら本格的な検査をするらしいが、どんな検査をするのかまるで見当がつかない。ただの健康診断的なものなのか、はたまた、私には想像もできないような未知の検査なのか。後者でないことを祈りたい。
そして、実験、実行とは一体何をするのだろうか。まあ、実行って言葉があるなら実験段階で死んだり……なんて事は無いだろう。
良くも悪くも前の世界とは違う世界だ。何が常識なのかさっぱり分からない。殺しなんて日常茶飯事の世界かもしれないし、その辺も知りたい所だ。
だいたい召喚ってなんだろう。魔法の様なもの?ならこの世界には魔法なんかがあるのだろうか。私に使えたり?
考えれば考える程、思考の沼にハマっていく。もがいて、もがいて、どんどん沈んでゆく。気づけば私は眠っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます