第2話 佐野の話

高校二年生になった。

クラスに、見慣れない男の子が居た。



あんな子、居たっけ。

友達の多さには自信があったから、同級生の顔は全員知っていると思っていた。



まだみんなに見つかっていなかった宝を、

自分が見つけたときみたいで、面白かった。



俺はその宝石を手に取った。



勝手に席を移動して、いつも隣りに座って授業を受けた。

ちゃんとワークの問題が解けていたから、案外賢いらしい。

俺の数学のワークの例題1は、空白のままだった。



そういえば名前を聞いてなかった。

聞いたら、

当ててみて。なんて難しすぎる提案をされた。

絶対当ててやる。



1日中、ありそうな名前をあげて、違う。と言われ続けた。

あいつはずっと笑ってた。

いきなりフルネームを当てるなんて、できるはずがない…



夕方になっちゃったから、タイムオーバーだね。

しょげていると、彼は意地悪な顔をして片方の口角を上げた。



タイムオーバーが夜じゃなくて夕方なのがなんだかおかしかったけれど、

楽しいから何でも良かった。



俺は路地裏を通って家まで近道をした。

春村千賀(はるむら ちか)は、左の角を曲がって、川沿いを歩いていった。






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