第17話 夏の前奏曲

春のカラオケイベントが大成功に終わり、赤穂市は徐々に夏の暑さを感じ始めていた。ひなたとカラオケサークルのメンバーたちは、新たな季節の変わり目を迎えるにあたり、次の大きなプロジェクトを計画していた。


「夏に向けて、何か新しいことを始めたいね。」ひなたがサークルのミーティングで提案した。


「そうだね、夏祭りがあるし、それに合わせて何かできないかな?」あすかが答えた。


「海辺でのライブ、どうかな?夕暮れ時に、波の音をバックに歌うのもいいかもしれない。」たろうが提案した。


そのアイデアに皆が興奮し、計画はすぐに動き始めた。かずみ先生は地元の自治体と連携して、海辺の公園でライブを行う許可を取り、必要な設備を整える手配をした。


ライブの日は、夏の暑さが和らぐ夕暮れ時に設定された。その日が近づくにつれて、ひなたは特別な曲を作曲し、その歌詞には夏の海の美しさと、夕日が沈む情景を描写した。


「この曲、夕暮れの海にぴったりだよね。」ひなたがリハーサル中にメンバーに聞かせた時、皆はその美しいメロディと歌詞に感動した。


「本当に素敵。この曲でライブを締めくくろう。」さくらが提案した。


ついにライブの日がやって来た。海辺の公園には地元の人々や観光客が集まり、ステージの周りは熱気でいっぱいだった。ひなたたちは一曲ずつ心を込めて歌い上げ、聴衆はそのたびに温かい拍手を送った。


ライブのクライマックスに、ひなたが新曲「夕暮れの海辺」を歌い始めると、会場は静かになり、彼の声とギターの音だけが空に響いた。歌が進むにつれ、夕日が海に沈む美しい光景が歌詞と調和し、その瞬間はまるで時間が止まったかのようだった。


曲が終わると、観客からは大きな拍手が起こり、多くの人が感動の涙を拭っていた。


「今日は本当にありがとうございました。皆さんのおかげで、忘れられない夏の一日になりました。」ひなたが感謝の言葉を述べた。


その夜、ひなたとカラオケサークルのメンバーたちは、夏の終わりにふさわしい、充実感に満ちた一日を過ごした。彼らの歌が夏の思い出に新たなページを加え、それぞれの心に深い印象を残していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る