第10話 心をつなぐ歌
文化祭の日がやってきた。赤穂市の空は高く晴れ渡り、秋の爽やかな風が学校のキャンパスを吹き抜けていた。ひなたとカラオケサークルのメンバーたちは、ホールでのカラオケ大会の準備に忙しくしていた。かずみ先生が手配してくれたプロ級のカラオケ機器が設置され、舞台は完璧なカラオケ環境に変身していた。
「みんな、準備はいい?」かずみ先生が最後のチェックを行いながら尋ねた。
「はい、バッチリです!」たろうが元気よく答えた。
ひなたは、舞台の袖でマイクを握りしめていた。彼の番が近づくにつれて、緊張で心臓が高鳴っていたが、あすかやさくら、たろうからの励ましの言葉を思い出し、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「ひなたくん、大丈夫。みんな、君の歌が待ってるよ。」さくらが優しく言った。
文化祭のゲストたちは次第にホールに集まり始め、席が埋まっていった。開会の挨拶が終わると、カラオケ大会が始まった。最初にたろうがステージに上がり、力強い歌声で会場を盛り上げた。あすかとさくらも次々とステージに立ち、美しい歌声を響かせた。
ついに、ひなたの番が来た。彼は深呼吸をしてから、ステージに足を踏み出した。観客の前でマイクを握るのはこれが初めてだった。彼はまず、静かに話し始めた。
「みなさん、こんにちは。今から歌う曲は、僕にとってとても特別な曲です。赤穂の海を思い出しながら作られた曲で、この歌を通じて、僕たちの素敵な街を感じてもらえたら嬉しいです。」
そして、ひなたは歌い始めた。彼の声は最初こそ少し震えていたが、歌が進むにつれて力強く、情感豊かになっていった。彼の歌声がホールに響き渡り、観客たちも次第に彼の歌に引き込まれていった。
歌い終わると、会場からは大きな拍手が起こった。ひなたは、自分が表現したかった感情が伝わったことを感じ、目頭が熱くなった。
カラオケ大会が終わった後、たくさんの人々がひなたに声をかけてきた。「あの歌、本当に素敵だったよ」「赤穂の海が目に浮かんだよ」という言葉が彼には何よりの宝物だった。
「ひなたくん、よくやったね!」かずみ先生がほほえみながら言った。
その日、ひなたはたくさんの友達との絆を感じ、自分自身の成長を実感した。歌が彼と周りの人々の心をつなぐ強い絆であることを、改めて知ったのだった。潮風の吹く街で、ひなたの新たなページが、今、始まろうとしていた。
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